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あおいケシの花が石の原野でそよぐときわたしは
思いっきり泣いているし
わたしだけの神さまにあやされてもいる
けれど
それは夢でただの夢で
ただの夢でただの夢でいつかはこの
幕間は終わり ....
宿ったのは冬
泣くばかりの少女
なぜと問う大人もなく
並木道 交差点 路地裏 あてもなく
公園で妖精の赤子を睨む ちいさな背中
融けた かつての白い結晶 雪うさぎ 南天の実
その くれない ....
わたしはね 西脇さん
珈琲で軽く出来上がって いつしか眠りに落ちていた
目覚めて 窓を開ける と
風が 西脇の一日遅れのこたえを持って
冬の すみれいろになって間もない空には白い雲
まぎれも ....
そこにこどもの姿はなく
おとなたちだけが殉ずるかのように
黄葉のかがやきが干からびた胎児の如く打ち捨てられる頃
までの林檎飴の祭りはいつも 日没をしる港にて
時雨れるまでは兆しのない福音 ....
走り書く一通には
「望まなければ」
視得なかったから 闇は/その日
「眠っている間だけ目覚めてさえいれば」
想っていただけの 日日を もう 思い出せない
「西に惹かれて 決めたあなたはついに ....
夕陽はきっと溶けるように
水平線に抱擁されて 海の底
人魚の里で明日を孕むのだと思う
そこでは どんな哲学をさかのぼっても
たどり着けないとわをしる風が
淡水の泉を可愛がっている
つぎつぎ ....
たぶんそこには 無 すらなかった
透明 すらなかった
そのまなざしは父親には赦された
だけど母親は女の子だったから赦せなかった
のだろう(たぶん)自らを
#
無、を得て ほし ....
キルトケットを被って丸くなっているといつも聴こえてくる
おやすみ小鳥
ほっとして意識が遠のいてゆく
ひかりを感じて目を開けるといつも聴こえてくる
おはよう小鳥
生きている私を肯定 ....
部屋のなかの風速はマイナス
まるでフラスコの底で
蹲るだけの異邦人
となって私は偶像を失い
祈り方を忘れる
(遠ざかってゆく)思い出という名の
私を掌ってきた漣は
枯渇したみずうみで途方 ....
約束の未明に私は夢のなかだったかもしれない 目覚めると
テーブルの上のマグの位置がすこし違う気もする
さびしさを雪ぐために顔を洗い
鏡をみて 謝るように確かめてから
さびしさと一緒に部屋に戻り ....
さよなら
と云いたい夜には
詩だけに
居てほしい
さよなら
と告げたい時には
詩には
居てほしくない
君には
告げたくはない
君にも 告げたくはない
さよなら
と云 ....
陽光の鼓動が
雲の隙間から聴こえる
生きているんですね
春の一日にたずねる
ゆるく描かれるこころ模様が
あちらこちらで会釈しあっている
善き日ですね
ええ、ま ....
本当には無い音が聞こえてくるのがとてもつらい
独白と称してこんなふうに書き出してみる
工夫はきついんだけど不可欠で
そうでもしないといろいろとあれで
ほんとはつらいつらいつらいよしかみえない世界に
....
遠くてどうしようもないところにある
でも大切な里にゆきたいとお金を貯めていた
わたしは消えてしまうのだけど
#
女の子がそれを知る前
暖かな手のひらが彼女にスプーンを手渡して
....
わたしのさみしい骨のゆくえは
乾いた風吹く荒涼とした地
どの生き物にすら踏みつけられることもなく
ただひたすらに転がってるだけ
あしたなら抱えきれないほどあって
きのうのひとっつも無い寂寞
....
すみれの咲く秋がある
すみれが好きな少女のために
春の庭に生まれた夢が孵る時がいまなんだ
と秋の実りにそよぐすみれ
常冬に住む老婆の許の菫色の裁縫箱には
針と糸と針刺しと並んでセピア色の ....
まだ続く冬の路
の途上にて
たずねれば
あなたはそのままに
墓標が伝える
笑顔
この冷たさに
凍えもせずに
思い悩んでいる
わたしあて
何かを
言いたそうに
視得るのは
ただ ....
夢の入った封筒を
そらの手にまかせたんです
翼をいただいた封筒は
薫風にみちびかれて
ゆくでしょう
かなうかなって
膝をかかえてうずくまる
あの少女のころの
いまのわたしに伝え ....