一頭の牛が
ブランコを押してくれた
こんなに高くは初めてで
空だけがきれいに見えたけれど
必ず元の場所に戻って
どこにも進むことはなかった
明日食べられるのだ、と
牛は言った
....
暖房の効きも悪い部屋の中
膝を抱えてぼんやり過ごす
あと三十分のタイムリミット
月曜日が僕の肩に手をかけてきた
差し迫る現実を目の前に
虚しい空想を慰めに
潜り込んだベッドは
昨日よ ....
酸性雨が降り
森が枯れて
花は身じろぎもせず
こっそりとあぶくを吐く
内なる情念を
笑った眉尻にはりつけて
澄んでゆく
影
道草が過ぎたので
傘をなくしてしまった ....
春に
桜花ほころぶように
夏に
青葉の目映いように
聞こえる
声なき声に
心はおどる
あなたにそっと
触れたくて
秋の
時雨に濡れるように
冬に
....
薄明かりの店内に客は僕ひとり
喫茶店を営む初老の夫婦は
カウンターに並び夕食を食べている
時々{ルビ片言=かたこと}の言葉を交わすふたり
幾十年を共にした歳月を物語る
並んだ背中の沈 ....
僕らの住処は小さな漁具小屋
呼びあう吐息を波の声に隠し
漁網に髪を絡ませながら
夜の深まりを体温で追った
雪夜の渇いた闇をとかした雲が
入り江を真冬のガッシュに染める
朝の刃を隠した列 ....
のりしろを見つけました。
観察しても、
どちらがのりで、
どちらがしろなのか、
わかりませんでしたが。
とりあえず。
貼り合わせてみましょう。
のり( ....
ねえ
あなたは笑うかな
ついこないだまで
「レミオロメン」を「レミオメロン」
と云ってたって
だって美味しそうでしょ
メロンの音って
そういえば二人で
メロンの匂いつきの
レコードよ ....
詩のフレーズを思いついたとき
メモをする
ひとつひとつの言葉を
忘れてしまっても
メモをスッと取り出せば
鉛筆を走らせたときの息遣いまで
いきいきと蘇えるように
私の生 ....
送電線の下をくぐって
アスファルトの海を
ぼくたちは、
泳いで、
はりめぐらされる
緯度や経度に
足をとられながらも
ひたむきに
日帰りの旅をくりかえす
ねむる前、ときどき
....
もしぼくに普通の足があったなら低くてもいい山で死にたい
もしぼくが平和な国に生きてたらなぐられたって笑っていられる
もしぼくが平和な国に生きてたらたのしい本を読んで暮らすよ
....
発車までの十数分
自販機前の喫煙所
微かに増した北風に
肩を竦めて時を待つ
鼻先掠めた白い粉
灰と思って振り払う
甲に感じた冷たさが
春はまだだと告げてくる
肩に抱えて繰り返す ....
ぎゅっと
ケチャップのチューブをしぼって
出来たてのオムライスに
真っ赤なうずまきを描いた
かわりに涙が
ほほを伝わないように
悪いのはお前じゃない
と 言って
....
凍える桜の枝を煮る
花の色に染まる
記憶のひとひら
なくしそうな
砂のらくがき
ため息で
消して
あなたの指した
電柱の奏でる擦弦楽の季節
手をさしのべても
触れるもの何も ....
ねえ 君の窓の景色は
何を映しているの
どんなに想像しても
それだけが分からないんだ
ねえ 僕の街の景色は
君の瞳にどう映っているの
僕の窓の景色はガタガタと
風が吹き出した ....
一番弱いとか
使えないとか
言ってるけど
コイキングなんだ
コイキング
コイの王様だよ
鯉か恋かって?
鯉に決まってんだろぉぉぉ
全てのコイよ!
彼の前にひれ伏せ!
鰭(ヒレ) ....
泡を吹くまで殴られたって
譲れないものってのはある
自分の殻に閉じこもっても
プライドは残ってる
でも、もちろん
生きてることを
大事にしてる
何万年だって。
死はすべての死ではない。
恐るべき人。
炎の十字を掲げ、
杭を打ち、
殺す。
幾たびも、幾たびも、
訪れ去って、逝く。
わたしの死は死ではない。
....
野に咲く白い花の可憐さを
優しさに満ちた眼差しで
静かに見つめる心を
わたしは肯定する
踏み躙られた拙い夢の儚さを
悲しみに満ちた眼差しで
静かに見つめる心を
わたしは肯定する
....
美しい赤ん坊のこぶしには滅びの言葉握られていた
怖い雨、怖い光を浴びまくり僕らは汚い名前をもらう
眩しくて見えない僕らの遺伝子に刻み込まれる悲しい記憶
誓い合う幼い僕たち ....
セルロイドの筆箱が
カタカタと
そんなふうに
胸の{ルビ襖=ふすま}を揺らす
何気ない言葉
風、もしくは紫陽花
色を移しながら
みんな好きというあなたは
きっ ....
その ピカチュウに
俺の 名前 つけてよって
言葉を聞いて
ピカチュウ に ゲンキ って
名前
つけてる人
ああ、なんだろう
この空気 好きかもしれない。
....
鎌倉駅の通路の壁に
寺へと続く石段の写真が展示されていた
門の向こう側の境内には
不思議な光が満ちあふれ
そっと上げた足先を写真に入れると
体ごと吸い込まれた僕は
気が付くと
石段の ....
この とろけ 加減は
世界を 平和に する
かも しれない
雨、あめ。
雨、あめ。。
飴、あめ。。。
天、あめ。。。。
あめが降る
名残の雪を消し去るように
マシュマロの時間が溶けていく
冬 ....
君と出会いしこの坂に
金襴緞子の晴姿
内掛け姿の君の名を
誰が鳴かずにいらりょうか
袖振り合うも多生の縁と
交わす会釈もいとほしく
生まれし定めは違えども
つのる恋と咲き乱るる
....
私が生まれるより前に
戦地に赴き病んで帰って来て間もなく
若い妻と二人の子供を残して世を去った
祖父の無念の想いがあった
私が生まれるより前に
借家の外に浮かぶ月を見上げて
寝息を立 ....
カネオクレタノム
電信
電話
パケット通信
送れたのは誤解
巫山戯た如月
別れ話の睦月
私が世話する
緑亀と草亀が
取り違えた赤ん坊
長谷の大仏良い男
機嫌 ....
カレンダーを一枚めくり
二月の出かける日に ○ をつける
数秒瞳を閉じる間に過ぎてしまう
早足な{ルビ一月=ひとつき}の流れ
数日前話した八十過ぎの老婆の言葉
「 あんた三十歳? ....
青く広がる海を見下ろして
「ああ、青いんだな」って思えたなら
指を静かに動かして
「ああ、生きてるんだな」って思えたなら
それは紛れも無い
ジュゲムの証拠。
釣り糸を垂らしなが ....
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