わたしは幼女になって
あなたに誘拐されたい
ひらひらと
垢ずんでいく赤いスカート
ひとこともはなさない
あなたは
それに気付くことも
ない
わたしたちは
いつか家 ....
雪が来ないから だろうか
遠い対岸の君を思い出してしまう
風船のひもをつかむ かのように
手を繋ぎあった昼下がりのことも
雪虹を見た冷たい夕暮れも
私の影は黒いよね
青い光 ....
遠い視線につらぬかれた夢のゆらぎに
ことりのさえずるこもれ日がそよぐ
おおきなまなこの
星夜のような瞳が
瞬きはせずに
宙をみつめている
しろい肌には
翼がしずかに舞いおりていた
....
いまだ冬の
凍える朝にも
こぼれる陽光の一筋に
穏やかなる日和を思い
目を細める
匂い召しませ
息つく春を
ピンとはりつめた
透明クリアなつめたさが
ほころびはじめると
乳白色の
おぼろなまくがかかる
天たかく、
空のあおさを
つきさしていた
はだかんぼう ....
簡単な申請をして
小さなお役所のソファーで
僕らは順番を待ってる
制度はいつも公平で
人に優しい
前に座っている子供が
しきりに咳きこみ
母親と思しき人が
その背中をさすっている
僕 ....
あめのなかに
ゆきのまじる
ぶーげんびりあの
かねのねの
音のあまつぶ
しらゆきまじる
むすめはやらない
むすめはやらない
{引用=三つで病に
五つで迷子 ....
ほら、あんなにさがしていた空が
ここにはたくさんあるじゃないか
気まぐれな
ときにはどしゃぶりで泣きついて
ときにはからっとした笑顔をくれる
ほら、あんなにさがしていた空が
....
瑠璃、瑠璃、瑠璃、瑠璃、
瑠璃色の
海、海、海、海
海の下
珊瑚はお手手をいっぱいに広げていたい
広げてお日様を集めていた
お日様を集めて花嫁の衣装に
花嫁さま
しずしずと ....
夜、
左の肩甲骨に
小さな傷が生まれた
羽根でも生えてくるのなら
わたしはきっと毟り取ろう
朝、
柔らかい霧雨が降ってきて
わたしは傘を捨てた
強く責めるなら抵抗もしたけれど
....
みなさんどうしてそんな顔してるんですかと
もう猫も言わない
電車はいくつもの死体を引きずって走る
国民みんなにワライダケを月一回配給すればいい
ついでにあんこにくるんで北朝 ....
浅はかな哀しみを
どこまでも赦してしまうので
慕っています、
ひとの背を
重ねるような
重ねられるような
だれのものとも知れぬまま
だれにもどこにも
辿り着けずに
ひ ....
目はこころの窓っていうけど
窓からみる眺めはいつもと一緒
あたしの気分次第で色を変える
太陽が燦々と降り注いでいても
なんか白々しい感じがして
底抜けの青空のせいで
自分までからっぽに ....
まるで拭う事を忘れた涙が
頬を撫でる指と錯覚するように
幾度も呟いた愚痴や寂しさが
いまいち消化できない感情と共に
過去を奪って 未来を閉ざしている
奇妙なほど暖かい冬が黙々と過ぎて ....
夏の僕らに
色をつけるなら、たぶん
それは透けてゆく、ライトブルー
てのひらに載せた水を打ち上げると
はじける あなたの 歓喜、にも似た
飛沫が 止められない光を集めて
虹を降 ....
皹入る空に吐息
(ステンドグラスに手をかざす)
冷血の雲になって
夜空を漂った
(粉々の破片)
雲の白鳥は、闇の境界線の上
(黒色のガラス/夜空)
湖とは、沈められた記憶のことだった
....
今夜は 君の部屋にあがれないんだ
意気地がないワケじゃないんだ
今夜は 君の部屋にあがれないんだ
君が嫌いなワケじゃないんだ
靴下に穴が開いていて 靴を脱げない
ただ 今日は靴下に穴 ....
はじめて声を上げる。はじま、りの、はずか
しい過去を背負ってまで、橋を渡って喉をふ
る、ふる、ふるわせる。てえぶるの、表計算
の、[枠]の中に囚われ、ていた酸素の、また
《二》酸化炭素の、見え ....
目の見えない人が歩く
前にいる友の背中に手をあてて
目の見える僕も歩く
いつも前にいる 風の背中 に手をあてて
そうでもしないと
ささいなことで気ばかり{ルビ焦=あせ} ....
呆然としているだけで流れていくものを時と呼ぶな。わたしたちの
いちばん大きな乗り物は、生まれてきたときの速度を保とうとして
いるだけで、あなたの生き方とは関係がない。冒険せよ勇気を持っ
て自らの ....
蜂蜜のような青さで、と誰かが言ったので何となく納得した。最近は何となく納得することが多い。空は蜂蜜のような青さでとろりとろりと甘いもの好きな子供たちを誘うのだそうだ。それから耳。耳たぶが際限なく広がっ ....
散文的であるかも知れない
晴れ間を見つける
こころはいつも
古くはならない
あたらしくもならない
それが空なら
繰り返すものごとに
少しだけ優しくなれそうな
そんな気が ....
窓の外は、夜
それゆえ汽車は吐息のように
曇り曇って
揺れに
揺れ
そこからなにが見えますか
わかりやすいものは
なぜだか頼りなくおもえて
背伸びをしてみた ....
北の大地では薄荷味の風に
モンスター化した凍りついた樹々
海の向こうではこの時期
湯気を上げているはずの換気口が黙りこくり
狂った季節がピンクの花を咲かしている
バラバラの季節を ....
東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉で{ルビ犇=ひしめ}いていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
{ルビ歪=ゆが}んだ顔を映す
冷たい光の反射に
じっと身 ....
手すりのない屋上で
そらをとりもどす、わたしがいる
{ルビ限界線=ちへい}に浮かぶ遠い筋雲の
気流の音に耳をすます
わたしがいる
まぶたの裏に
真昼の月を新月と焼き付け
まぼろしではない ....
上司の心ない一言に火が点いて
職場のちゃぶ台をひっくり返した日
しょんぼり夜道を歩いていると
通り道のボクシングジムから
ばす ばす と
瞳をぎらつかせたぼくさーの
ひたむきな ....
にぎってみな
ほら
もうだめだろ
そのタマネギ
切ったら泣くぜ
ぜったい泣くぜ
半分ぐらい
腐ってたって
ぜったい泣くから
まあ座って
二人で剥こう
そうして
....
ブリキのロボットはひとり
旅先の浜辺に{ルビ佇=たたず}んでいた
羽織った黒いマントを
浜辺の風になびかせて
( 振り返れば
( 浜辺には長い足跡
拾った ....
愛のような色の
薔薇の花束
無造作に置かれ(無造作なキス)
散る(唇)
花びら(の味)
月光の針
が刺す
がそれは
暖かい
いや
寒い
ダウンする
....
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