冷たい雨に
震えるきみの
肩を抱いたのは
それもまた
雨でした
時に言葉は行き過ぎて
途方に暮れる長い夜
抗うこと諦めることを重ね
いくつの哀しみを覚えたの
その身を預け
降り ....
甘噛みする
うさぎ
声をあげない
やさしさは
痛み
容易に予言する
はねを広げる
うさぎ
いつしか
鳥を真似て
さみしくてさみしくて
手のひらを閉じた
ささやき ....
どうしよう、スタートまであと何分も無いよ
周りを見渡せば皆速そうな人ばかりだし
私がここにいるのって何だか場違いに思えてきた
友だちに誘われはじめてはみたけれど
誘った張本人はとっくの昔に ....
七日前
自ら世を去った
友を思う深夜の部屋
( ふいに見上げた古時計
( いつのまに止まった秒針は震えながら
( 永遠の音を刻む
明日もぼくは
職場の老 ....
実を言えば、詩の現場で実際に書きつづけている人々にとっては、外部の者がどう言おうと関係ないのである。それぞれがそれぞれに優れた詩を書きつづけていれば良い。詩に向かう動機や信念は人によって様々であろう ....
エリック・クラプトンの『レプタイル』http://wmg.jp/artist/ec/WPCR000011100.html。これは愛する伯父にささげられているようだ。レプタイルは「ろくでなし ....
潮風が防風林の松を
まだか、まだか、とたたいて
浜辺で手招きする海が
防波堤でばらまいています
ひとりでくる浜辺が
こんなに広いとは知りませんでした
小さい岩のあるところ目指して
真 ....
ビートルズに「Baby's In Black」という曲がある。世界的大成功を収め、現在に至るまで影響力を失っていない彼等にしてはあまり有名ではない地味な曲で、その後、ただのラヴソングではない歌をいく ....
ある時から、あるいはある場所から、生きるということの価値が揺らぎ始める。それは上昇に向かう揺らぎであるかもしれないし、下降へ向かう揺らぎであるかもしれない。そのどちらであるにせよ、それまで漠然と過ご ....
子どもの頃「怖かったもの」がたくさんある、チャルメラのラッパ、ギャル、雷に、「かちかち山」の絵本・・・。そんな中で、私が何よもり恐れていたものが天狗のお面であった。
そのお面は私が六歳のときに暮 ....
おととい日はあちらから昇りました
きのう日はあちらから昇りました
きょう日はあちらから昇りました
きっと
あしたもあちらから朝は訪れるでしょう
この銀杏の葉は枯れ落ちました
....
稲川方人の「気風の持続を負う」(一九七七年)はちょっといい文章だ。荒川洋治の「技術の威嚇」(同年)への反論という体裁をとっているが、稲川の詩の書き手としての侠気というか使命感というか、論理を越えた真 ....
探していた
おだやかな光を
逢いたかった
カンヴァスを破って
手を、そっと
輪郭のない夜だから
影もなくて
震えを数えていないと
ここがサヨナラになる気がした
風の硝子越しに ....
たくさんの淋しさは
胸の奥でそっと
優しさになる
それは
くわしく語らなくても
しみ渡ってゆくように思い
いつしかやわらかく
言葉のあやから
遠ざかる
おびえてし ....
遅く迎えた朝に
雲間から覗く空は
アイスブルーの明るさで
粉雪を落としていた
そのひとひらが
頬をすべり
手のひらにとける
捕らわれた夢から
抜け出せないままの体を
目覚めさす冷たさ ....
えらばれた場所でだけ
かなう願いを
託して
しまいたい
分けられてなお
うつくしいものも
きっと、ある
降る雨の
そのずっと奥のほうで
飾りをえら ....
わたしの心の暗闇に
張り巡らされた蜘蛛の巣は
寂しい一つの宇宙を広げ
いつも小鳥を待っている
幾羽ものはばたきは
見向きもせずに
薫りだけを残して
網の目を通り過ぎた
....
波打ち際に立つと
のどが渇く
でもそれは欲望ではなく
思い出した事、だと思う
帰る波がめんどくさそうだ
指の間に挟まった砂もそう
いらないと思った途端に忘れられなくなる
生まれ変 ....
薄紅そまる風の道
夕闇せまる草の道
落日の片隅に
佇む人の
瞳に映る翼の模様
羽ばたく視線は
彼方を知らない
澄まして聞こえぬ
その名のみ
凝らして見えぬ
その姿のみ
....
きみのバスが遠ざかり
ぼくはちぎれて
半分になる
照れくさいぼくを
きみが思い出すとき
薄闇はきっと匂うから
けなげに告げよう
離れた場所で
あすの名を
....
{引用=
一 ゆらゆら、尾ひれ
いい匂いがしたもので
いい気になって
追いかけて
できないことは
どこにもない、と
一目散に
忘れも ....
満月が
飽和してゆく
そっと
するどい涼しさは
船乗りだけの
うろこです
ただ一言でかばわれて
消え入ろうにも
悔やまれて
丸みを帯びた
涙の甘さに
....
あの日を
あの日、と呼ぶことは
思いも寄らないことだろう
あの日の
僕には
時は
流れてゆくものだと思う
追い越せないことは
確かだけれど、
離れ過ぎずに
ちょ ....
海が眠る
その貝殻を
ためらいもなく
拾い上げて
ひとは口々に
語り始めるだろう
春を
春のための春、に
何をも待たず
つとめて実直に
見失うだろう ....
何をどこに忘れたのですか?
駅の係員は開いた記録簿に目を落とし尋ねた
普段から乗りなれた通勤電車
それなのに今夜は何かが確かに違っていた
勧められるまま飲んでしまった新年会
赤ら顔の同僚 ....
遠い風の透けた
銀のしずくが
{ルビ月影=つきかげ}おぼろにひびいて
さびしく薫る
ぬれた黒髪
結いあげる白い手
静かすぎる吐息の重さは
うつろな視線の光
映る予感の静寂が ....
きみの言葉の行く先を
わたしはひとつに
収めてしまう
無限に広がりそうな
孤独の定義の
予感に
おびえて
きみの言葉に
息づくものと息づかないもの
....
お父さんはね
お母さんを口説いたとき
自分の故郷には
おはなばたけという駅が
あるよと言ったって
夏に嫁いできた母は
駅前に花畑があると
おもってたと
文句を言ったらしい
お父さ ....
悲しまないでください
たとえ私がひととき
希望を見失ったとしても
それは今年初めて触れた雪が
てのひらで消えるまで
きっとそれほどのときですから
私の瞳に映せる空は
決し ....
言葉を投げ合うほどに
違うものだと気がつく
砂丘の砂、そのひとつひとつが
自由な砂の本性で
名前が足りないから
同じものだと思いこむ
それはかなしいことだ
....
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