My boy
大事な薬をスプーンで入れようとするのに
真一文字に口を結ぶ君は、頑固者だ

My boy
頑固に生きるってことは
自ずと苦労を背負うってことだ

頑固であるってことは
 ....
弱いのに
強いふりして、生きるから
しんみり…歩く
夜の散歩道

誰もいない公園で
のっぽの電灯に照らされて
ブランコに揺られる
独りの影

大人になった心の中にいる
小さな子供 ....
よく晴れた初夏の午後
家の庭で、ダウン症児の息子に
青い帽子を被せる

まだ{ルビ喋=しゃべ}れない5才の息子は
うわあっ!と
帽子を脱ぎ捨てる

部屋の中にはBGMの
ロックが流れ ....
生きるとは
自らに内蔵された
ギアを、入れること  




  
長い一本道で、アクセルを踏み込む
遠くから
フロントガラスに小さな太陽を映す車が
近づいて…すれ違う、瞬間
僕はぎらつく光を魂に摂取して
目的地を見据え 走る  
退職の翌日は、僕が司会の朗読会
――三十年前の今日、事故にあいました
高次脳機能い障がいの詩友は新妻の弾く
ピアノを背に吠える ぱんくすぴりっつ!  
古巣の職場は花壇となり、これから
日々の仲間とお年寄りの間に
花々は開いてゆくだろう
明日から僕は、新たな日々に入ってゆく  




  
職場で最後のあいさつをした後
ひとり入った蕎麦屋にて、熱燗を啜りつつ
様々な天気であった…十七年を味わう
送別の花束を、傍らに置いて  
帰りの時間、お年寄りの皆さんの前に立ち
マイクを持った瞬間、言葉は詰まり
震える声で、新たな日々を誓う
一人一人の手を握る…熱い涙のあふれるまま 
送別会で酔っ払い所長の隣りに、腰を下ろす
――俺は昔上司に嫌われ、必ず見返す!って
  決意して、ここまで歩いて来たんだよ
そんな所長の男気を初めて知った、退職前夜  
退職前、最後の休日は
五十四年ぶりに十一月の雪の日で
雪化粧した紅葉の下を潜りつつ
「真生会館」への道を往く  
デイサービスの帰りの時間に、マイクを持ち
「あと数日で辞めます」と告白する
あるお爺ちゃんは天井仰いで…目を瞑り
あるお婆ちゃんは「寂しいよ」と立ちあがり  
退職の日が近づいたので
休日の職場でロッカー整理をする
がらん、とした空洞をひと時みつめ
新たなる日々の摂理に、身をゆだねる  
暗闇に小さな火は点り
{ルビ蝋燭=ろうそく}は徐々に溶けてゆく

白いからだの多くは
残されている

あなたのわざの多くは
残されている

小さな火

身を揺らし
夜を仄かに照 ....
私の背後には、いつも
不思議な秒針の{ルビ音=ね}が響く  
――いつしか鼓動は高鳴り
――だんだん歩調も早まり
時間は背後に燃えてゆく

この旅路に
{ルビ数珠=じゅず}の足跡は…刻印 ....
鏡に映る人は誰?
姿の無いそくらてすは、遥かな過去から
耳に囁く
――汝自身を知れ

机に置かれた器は何?
音の無い声でぷらとんは、透けた国から
耳に囁く
――ものの背後にいであ在り
 ....
駅の切符売場で
僕が地面に置いた、紙袋を
風を切って
倒していった幼い少年は
くるり、振り向き
「ママ切符買ってみる!」
「あら、横からすみません…」

一歩後ろに下がった、僕は
少 ....
昼からわいんを飲み
赤ら顔でぐらすを手に
体を揺らし、厨房へ  

細長い空間の
小窓から
――正午の日は射して

何処からか、聴こえる
白髭のかみさまの
高らかな

笑い声  ....
昨日は青みがかっていたバナナが
今日は黄色くなっていた

一日でバナナが変わるなら
今日のわたしの色あいも
一味変わっているかもしれない  
仕事を辞めてから
5才の周ちゃんと過ごす時間が増えた
染色体が一本多いゆえ
絵本を読んでも

 あーうー

歌を歌っても

 あーうー

だが時折、大きな黒目をぴくりとさせて
 ....
目を{ルビ瞑=つむ}り、祈る

自らの内面に加速する{ルビ独楽=こま}を、視る
回転を増すほど加熱する、私の核

この掌は伸びるだろう
天に{ルビ縋=すが}って――まっすぐに  


 ....
窓から新年の陽は射し
部屋は{ルビ暁=あかつき}に染まり
自ずと、両手を合わせる

机上に置かれた
題名の無い本の表紙を
そっと、開く

序章の{ルビ頁=ページ}の余白に現れる
あな ....
海の向こうの{ルビ山間=やまあい}に
新しい太陽は揺らめき昇り
闇のベールで覆われた部屋は
{ルビ暁=あかつき}に染まりゆく

自らが
主演キャストであるという
夜明けの予感に
私とい ....
聖夜、互いに灯す
{ルビ蝋燭=ろうそく}の火をみつめ、私は想う
日々出逢う人々と織り成す
唯一の時を生きようと

あなたの何げない指先に
あなたの語る素朴な言葉に
あなたが注ぐまな ....
聖夜――教会に集う私たちは
{ルビ蝋燭=ろうそく}の火を一人、二人……と増やしてゆく

私たちは探している
暗闇に射す、一条のひかりを
私たちは待っている
{ルビ永遠=とわ}に消え ....
クリスマスツリーは、何処か寂しい
聖夜の言葉にならない歓びを
言葉ではなく
自らのからだに灯る
無数の色の明滅で語り
少し温まった人々の靴音が過ぎ往くのを
夜道でそっと、見守るから

 ....
御高齢のS師宅で、心のケアの学校の
ヴィジョンを皆で語らい、同世代のO師は
――僕等の間にフィロソフィアを視ることです
と呟いた時、新たな頁の捲れる音がした  




  


 ....
尾崎豊の墓前にて、線香の先から煙は昇る
――あれから二十四年の時は流れ
物思いに耽り、ふと見下ろした線香の
1|2はすでに燃え…今を生きる、と合掌する  




 




 ....
遠藤周作が友に贈ったスペインの母子像は
展示ガラスの内側で互いに微笑み、通じ合う
晩年の見舞いで友の妻は母子像を{ルビ担=かつ}いでいった
今頃極楽にて二人盃を交わす音が、聴こえる  


 ....
酔い覚めの秋の夜道で、編集者のおじさんに
「義父のケアとダウン症児の息子を育み
 嫁さんの負担を減らす為仕事を辞めます」
と言うや否や「偉い!」と握る手の…暖かみ  
服部 剛(1975)
タイトル カテゴリ Point 日付
一匙の薬自由詩117/6/1 23:59
夜のブランコ自由詩217/6/1 23:55
息子の叫び自由詩317/5/29 17:17
ギアを握る自由詩117/5/29 17:14
太陽光自由詩217/5/29 17:08
十一月二十七日(日) 午後自由詩117/5/25 0:00
十一月二十六日(土) 深夜自由詩117/5/24 23:56
十一月二十六日(土) 夜自由詩017/5/24 23:49
十一月二十六日(土) 夕自由詩217/2/28 14:47
十一月二十五日(金) 夜自由詩317/2/28 14:42
十一月二十四日(木) 午後自由詩017/2/22 0:07
十一月二十三日(水) 夕自由詩117/2/22 0:02
十一月二十二日(火) 午後自由詩117/2/21 23:56
火ノ心自由詩317/1/24 21:40
空の呼び声自由詩1217/1/24 21:37
ユメノセカイ自由詩417/1/19 21:00
風人間自由詩317/1/19 20:39
酒の効用自由詩217/1/19 19:57
バナナの色自由詩117/1/13 22:25
もみじの手自由詩1017/1/13 22:18
掌ノ像自由詩117/1/1 23:49
物語の日々自由詩017/1/1 23:43
日の出自由詩117/1/1 23:36
聖夜ノ火自由詩316/12/21 0:17
降誕の夜自由詩216/12/20 23:57
聖夜の木自由詩216/12/20 23:35
十一月七日(日) 午後自由詩116/12/12 12:23
十一月四日(金) 午後自由詩116/12/12 12:12
十月二十九日(土) 午後自由詩116/12/12 12:03
十月二十七日(木) 夜自由詩216/12/8 11:52

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