デイサービスの帰りの時間に、マイクを持ち
「あと数日で辞めます」と告白する
あるお爺ちゃんは天井仰いで…目を瞑り
あるお婆ちゃんは「寂しいよ」と立ちあがり  
退職の日が近づいたので
休日の職場でロッカー整理をする
がらん、とした空洞をひと時みつめ
新たなる日々の摂理に、身をゆだねる  
暗闇に小さな火は点り
{ルビ蝋燭=ろうそく}は徐々に溶けてゆく

白いからだの多くは
残されている

あなたのわざの多くは
残されている

小さな火

身を揺らし
夜を仄かに照 ....
私の背後には、いつも
不思議な秒針の{ルビ音=ね}が響く  
――いつしか鼓動は高鳴り
――だんだん歩調も早まり
時間は背後に燃えてゆく

この旅路に
{ルビ数珠=じゅず}の足跡は…刻印 ....
鏡に映る人は誰?
姿の無いそくらてすは、遥かな過去から
耳に囁く
――汝自身を知れ

机に置かれた器は何?
音の無い声でぷらとんは、透けた国から
耳に囁く
――ものの背後にいであ在り
 ....
駅の切符売場で
僕が地面に置いた、紙袋を
風を切って
倒していった幼い少年は
くるり、振り向き
「ママ切符買ってみる!」
「あら、横からすみません…」

一歩後ろに下がった、僕は
少 ....
昼からわいんを飲み
赤ら顔でぐらすを手に
体を揺らし、厨房へ  

細長い空間の
小窓から
――正午の日は射して

何処からか、聴こえる
白髭のかみさまの
高らかな

笑い声  ....
昨日は青みがかっていたバナナが
今日は黄色くなっていた

一日でバナナが変わるなら
今日のわたしの色あいも
一味変わっているかもしれない  
仕事を辞めてから
5才の周ちゃんと過ごす時間が増えた
染色体が一本多いゆえ
絵本を読んでも

 あーうー

歌を歌っても

 あーうー

だが時折、大きな黒目をぴくりとさせて
 ....
目を{ルビ瞑=つむ}り、祈る

自らの内面に加速する{ルビ独楽=こま}を、視る
回転を増すほど加熱する、私の核

この掌は伸びるだろう
天に{ルビ縋=すが}って――まっすぐに  


 ....
窓から新年の陽は射し
部屋は{ルビ暁=あかつき}に染まり
自ずと、両手を合わせる

机上に置かれた
題名の無い本の表紙を
そっと、開く

序章の{ルビ頁=ページ}の余白に現れる
あな ....
海の向こうの{ルビ山間=やまあい}に
新しい太陽は揺らめき昇り
闇のベールで覆われた部屋は
{ルビ暁=あかつき}に染まりゆく

自らが
主演キャストであるという
夜明けの予感に
私とい ....
聖夜、互いに灯す
{ルビ蝋燭=ろうそく}の火をみつめ、私は想う
日々出逢う人々と織り成す
唯一の時を生きようと

あなたの何げない指先に
あなたの語る素朴な言葉に
あなたが注ぐまな ....
聖夜――教会に集う私たちは
{ルビ蝋燭=ろうそく}の火を一人、二人……と増やしてゆく

私たちは探している
暗闇に射す、一条のひかりを
私たちは待っている
{ルビ永遠=とわ}に消え ....
クリスマスツリーは、何処か寂しい
聖夜の言葉にならない歓びを
言葉ではなく
自らのからだに灯る
無数の色の明滅で語り
少し温まった人々の靴音が過ぎ往くのを
夜道でそっと、見守るから

 ....
御高齢のS師宅で、心のケアの学校の
ヴィジョンを皆で語らい、同世代のO師は
――僕等の間にフィロソフィアを視ることです
と呟いた時、新たな頁の捲れる音がした  




  


 ....
尾崎豊の墓前にて、線香の先から煙は昇る
――あれから二十四年の時は流れ
物思いに耽り、ふと見下ろした線香の
1|2はすでに燃え…今を生きる、と合掌する  




 




 ....
遠藤周作が友に贈ったスペインの母子像は
展示ガラスの内側で互いに微笑み、通じ合う
晩年の見舞いで友の妻は母子像を{ルビ担=かつ}いでいった
今頃極楽にて二人盃を交わす音が、聴こえる  


 ....
酔い覚めの秋の夜道で、編集者のおじさんに
「義父のケアとダウン症児の息子を育み
 嫁さんの負担を減らす為仕事を辞めます」
と言うや否や「偉い!」と握る手の…暖かみ  
幼稚園の頃の先生の御主人の告別式で
献花の百合をそっと置き、一礼した後
頭を上げる――(剛君、ありがとう)
眼鏡越しに充血した瞳は、無音で叫ぶ  
昔の職場のボランティアのおじさんと初めて
焼き鳥屋で飲み、定年退職の日の花道を語り
僕も「来月退職します」と、打ち明けた
手渡された絵手紙の{ルビ松明=たいまつ}は…滲んで燃える  


 ....
久々に姉さん女房が噴火した…避難のため
思わず外でジョギングする僕を――こんちわ
職場の先輩の太ったおじさんが
原チャリで風を切り、小さくなってゆく  
編集者Kさんに退職を伝えると、厳しい一言
――原稿を依頼するには、肩書を
――その発想は面白くないっすよ!
僕の嫁さん子供まで心配する瞳が、少し潤む  




  




 ....
先日、職業というものを
脱いだ僕は
これから日々遍在する
小さな太陽になろう

――〈今・ここ〉に日溜り、在り。

本当は誰もが
小さな太陽を宿すという
昔々のヒトの記憶を
互いの ....
紅葉の葉群は節々に
{ルビ詩=うた}を織り成し、風にさやぐ
皇居の午後

天守閣跡地の{ルビ畔=ほとり}で
古い木目のベンチに腰を下ろす

巨きな四角い石垣の隅に立つ、優しい松の
頭上 ....
ひとつ屋根の下で暮らした、お婆ちゃん
僕が生まれるより前に病で逝った、お爺ちゃん
幼い僕の頭をかわいいかわいいと撫でた、ひい婆ちゃん
娘の幸いを願って逝った、嫁さんのお母さん
年老いたある日突 ....
初めてある女子大で、講演した
椅子から立ち上がるや否や、スイッチON!
学生さん達の内面に星は煌めき、笑いも湧き
ラスト3分で僕は言葉の直球を――投げた  





  
世を照らすには? 君がここに来ないことです
僕の質問に答えた講演者の、眼鏡の奥で
黒目の力は凄みがあり、会場は一瞬静まった
帰って妻に話すと同じ凄みで、握手をされた  
偶然のメールをもらい
夜の大船に繰り出せば
レゲエライブのSOULTRIN
何処までも走れそうな青春の夜  




  
講演会で初めてみる、彼の顔は
元受刑者というレッテルの仮面を外せば
(もうひとつの素顔)が視え、休憩時間に
窓辺で佇む僕の瞳に、窓外の夕陽が滲みた  
服部 剛(1994)
タイトル カテゴリ Point 日付
十一月二十三日(水) 夕自由詩117/2/22 0:02
十一月二十二日(火) 午後自由詩117/2/21 23:56
火ノ心自由詩317/1/24 21:40
空の呼び声自由詩1217/1/24 21:37
ユメノセカイ自由詩417/1/19 21:00
風人間自由詩317/1/19 20:39
酒の効用自由詩217/1/19 19:57
バナナの色自由詩117/1/13 22:25
もみじの手自由詩1017/1/13 22:18
掌ノ像自由詩117/1/1 23:49
物語の日々自由詩017/1/1 23:43
日の出自由詩117/1/1 23:36
聖夜ノ火自由詩316/12/21 0:17
降誕の夜自由詩216/12/20 23:57
聖夜の木自由詩216/12/20 23:35
十一月七日(日) 午後自由詩116/12/12 12:23
十一月四日(金) 午後自由詩116/12/12 12:12
十月二十九日(土) 午後自由詩116/12/12 12:03
十月二十七日(木) 夜自由詩216/12/8 11:52
十月二十七日(木) 午前自由詩216/12/8 11:43
十月二十三日(日) 夜自由詩216/12/8 11:34
十月十九日(水) 午前 自由詩116/12/6 8:44
十月十三日(木) 夕方 自由詩116/12/6 8:35
小さな太陽自由詩216/12/2 21:49
お天道様ノ声―天守閣跡地にて―   自由詩216/12/1 21:43
生命の樹自由詩316/10/19 21:00
十月十二日(水)朝自由詩016/10/19 20:16
十月十日(月)午後自由詩016/10/19 20:15
十月九日(日)夜自由詩016/10/14 18:41
十月八日(土)夕方自由詩216/10/14 18:36

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