薔薇と心臓
ベンジャミン


春の気配を漂わせても
外はまだモノトーンの景色

窓辺
揺れる裸の枝先の
まだ開かぬつぼみ

食卓を飾る赤は
花瓶に押し込められた薔薇
生気のない色はイミテーション
ならばまだ見たこともない
わたしの心臓は
まぎれもない赤をしているでしょうか

薔薇
わたしの中に咲く一輪の命
それもまたまだ開かぬつぼみ

テーブルの赤は
泣くことも笑うことも知らない薔薇
イミテーションであるからこそ
こうして咲いていられる
ならばまだこうして動けずにいる
わたしの心臓は
まぎれもない赤をしているでしょうか

心臓
まるで独り言でも言っているような
とくんとくんと淋しい音色を響かせて

どうして人は
手にすることが難しいものを
幸せと呼ぶのでしょうか

こんなわたしでも
ただ生きているだけで
やっと嬉しいと思えるようになったのに



         


自由詩 薔薇と心臓 Copyright ベンジャミン 2007-03-07 14:21:18
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