かなしくても色を持っていた
あなたのあの頃はもう
終わってしまったのか

この世界の色という色を
自由自在にあやつっていた
あなたは何処へ消えたのか

空の青さを見ても闇を探し
 ....
絵のない文字
文字のない絵が
視界のなかを流れていく
その流れは
どんどん速くなり
この手のひらさえも
見えなくなるくらい
包んでしまう

絵のない文字
文字のない絵が
紙を飛び ....
熱を帯びた大地の上に
呼吸を繰り返す大地の上に
赤いひとつの影がある

影は、
一度爪を立てると
じわりとひろがり大きくなる
大きくなった影は足を持ち
大地を駆けていく

影から生 ....
机の上に残されたものは
一枚の白い紙とペンだけになった。

その一瞬前には、
たくさんの唄や、
しなやかな左腕や、
どこまでも翼のように
軽い足があったはずなのに。

私から、
で ....
向かい合った二つの顔は、違う方向を見ていても
同じものを見ていた。向かい合った二つの顔は、
互いに違う方向を見ていても同じものを見ている
事実を酷く嫌っていた。どうしてこんなにも、似
ているも ....
私の皮膚から色とりどりの体毛が生えていく
色とりどりの体毛は、私の体内で流れる熱い
赤い海を揺らして、大地を割って生まれてく
る。色とりどりの体毛がやがて一本一本の指
に変わり、その指たちの背 ....
繭のなかで、
せめぎあいを繰り返した罪たちは
やがて大きくなり鏡の膜を
剥いで外へ出る。
そうして姿を見たものたちを、
石へと変えて時間を縫い潰していく。



ごみ捨て場の生ゴミ ....
目のなかを
突っ切っていくものは
刃に似た針の先
それは誰も何も寄せつけない
冷たさを持つ三日月

それは私の角膜を突き破り
網膜を切り裂いた
何も見えなくなった私は
かつて見えてい ....
さしだせば
手を取ってくれるほうへ
手を握れば
握り返してくれるほうへ
ゆっくりゆっくり
歩いていく。
闇のなかには星はない
星は光がつくりだすもの
本当は闇でさえ
光から生まれるも ....
どこにもいない自分を探した
どこにもいない自分は
本当はシンクのなかのボウルに
貯めこまれた水を掬う手のひらのなかにいて
さかなのように鰭をかえして
私の指先をすり抜ける
沸かしたお湯 ....
薄皮を剥いでいくように
少しずつあなたに真実を
話していこう。私が私を
貫くために犯してきた罪
を。目まぐるしく動いて
いく世界から外されて、
誰にためにも、自分のた
めにもなれないと確 ....
痛みをふさげ
とあなたはいつも目を閉じる
声など切り裂いてしまえとも
私はあなたのことばに
いつもしたがわない
私は誰かの痛みを食べて
誰かの悲しみの血を
この身に受けているから
お母 ....
欲望を満たすために
食い荒された残骸が
台所に残る。あなた
はまたひとつの私の
身体を食べたのだ。
血でべとついた肉の
塊が嗤っている。あ
なたの背中には、産
まれるはずだった妹
の ....
皮膚の毛穴から
声にならない呟きが聴こえてくる
ひとつ、ふたつ、
呟きはふえていき
大きくなりやがて叫びに変わる
叫びが全身を駆けめぐるとき
私は目覚めて
意識のなかの
ひとつの物語の ....
明な生き物が
浮かんでは消え浮かんでは消え、
繰り返してぐにゃりとうねりながら
私の指先を掴んでいく
生き物には目があった
私以外の他の誰にも見えない
声を持つ目が
生き物の目が何かを掴 ....
もっともっと、
きみを抉じ開けてしまいたい
きみというきみのなかの
どろどろとした異臭を放つ林檎を
とりだして噛み砕いて食べてしまいたい

ぼくをへだてる外の世界は
あまりにも予定調和で ....
森は深く続いていた。森にはすべての闇がある。闇が森のすべてなのか。植物で覆われているせいで、緑は闇と化すのだろうか。森のなかで声を出す。私の声は喉から腕になって森を掻き出していき、森を食べていく。森に .... 私にはこどもがいた
誰にも知られることのない
私だけのこどもがいた
男の子だった
その子は口がきけなかった
けれど、目と耳だけは確かだった
彼は目でことばを話し、
耳で私の心を食べていた ....
おかあさん、と呼んでも消え入りそうな
真っ暗な林のなかにいる。お母さん、あ
なたが撫でた頬のぬくもりが、白い月の
輪郭をなぞっていく。あなたのもとへ帰
りたいと願っても、月の光を頼っても、
 ....
針先で突き刺した
指先から
私というひとつの海を
絞り出すように
私は激しくもとめている
あなたのその、
果てない闇の底に
うつりこんだ私を

あなたは一匹の魚だ

つかまえよう ....
耳のそとがわから
ことばのない唄が
聴こえてくる。私
はそのわずかな毛
先のような音の足
跡を追いかけなが
ら風に逆らう。風
は足跡の先を掴み
ながらふりはらう
。この目に映 ....
左手首に微かに残る
傷跡の意味をあなた
は知らない。あの夏
のよく晴れた朝に私
が台所用洗剤と乾燥
剤を飲み込もうとし
て苦しんだことをあ
なたは知らない。ふ
うちゃん、ふうちゃ
ん ....
                  
ふたつの卵のような目をした彼女と向かい合っている。
卵は茶色く黒い。ゴキブリの羽根だ。ゴキブリの羽根が
ドリアを食べる、私の口元をじっと見つめている。羽根
 ....
               

落ちていくものを拾おうとすると
指からすり抜けていく苔のような
ぬるりとしたものを掴むような感
覚が視界の奥底にある誰もが知っ
ていてまだ見たことのない小 ....
色とりどりの絵具を使ってあなたは絵を描く
花の絵や、蝶の絵や、動物の絵や、人の絵や
街並みの絵を。けれど、あなたが見ているも
のは、あなたが描いているものは、色とりど
りなんかじゃない。真っ黒 ....
(見えないんだよ、見えないんだよ、)と
あなたは近く、遠くを手探りする。手から
こぼれおちた睡眠薬を探して。あなたの手
はどんどん薬から遠のいていく。まるで、
眠りに誘われてだんだんと意識が現 ....
あなたに手紙を書こうとして
鉛筆削りで邪魔な時間を削り
落とす。無駄なものをそぎ落
とした飾らない本当の気持ち
があなたへと走っていく。口
に出しては云えないものたち
のあふれるあたたかな ....
薄いヴェールを剥ぐように
私にしかみえないものを探
している。私はどこにいる
のか。既知の街が未知に見
えるほどこの手に握りしめ
た切り札は擦りきれてボロ
ボロだ。この街はいつも雨
に濡 ....
                   
刃を突き刺した手のひらから風が生まれていく
生まれたての風はまだ向かうべき場所を持たな
い風を生み落とした私の指先さえもすり抜けて
風たちは蒲公英の綿毛 ....
あなたは目が見えないのね
と誰かが言う
私の目は見えているのに
意味がわからない
本当に大切なことは
見えないものを感じる心の目を
持つことだとあなたは言う
日に日に年老いて
目に ....
あおい満月(409)
タイトル カテゴリ Point 日付
求めずに                   自由詩4+18/2/20 21:56
ふたつのないもの自由詩118/2/1 22:17
耳朶自由詩318/1/26 21:37
机上自由詩10*18/1/23 11:49
ふたつの魂(こころ)自由詩218/1/22 3:03
体毛の指自由詩018/1/22 2:14
しずくのこえ自由詩318/1/20 21:15
三日月自由詩618/1/14 13:14
きみへ自由詩318/1/13 20:03
自由詩218/1/13 8:07
終わらない十字架自由詩218/1/8 3:30
その扉へ自由詩118/1/7 21:15
死の匂い自由詩318/1/6 6:23
みなもと自由詩518/1/2 5:14
いきざま自由詩217/12/23 9:08
林檎自由詩117/12/22 5:48
少女と森自由詩117/12/21 21:18
カーネーション自由詩217/12/20 5:10
うさぎと折鶴自由詩317/12/20 4:41
指先の魚自由詩13*17/12/15 21:20
刃の指自由詩017/12/14 6:51
とりかご自由詩417/12/10 4:09
羽根の目自由詩317/12/9 11:49
玩具自由詩2*17/12/6 6:27
月の背中自由詩017/11/29 22:12
謝肉祭自由詩317/11/25 22:28
てがかり自由詩017/11/22 4:23
この街自由詩217/11/18 5:41
心の天涯孤独散文(批評 ...217/11/8 3:46
「愛のある人生」について散文(批評 ...117/10/30 2:24

Home 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 
0.1sec.