静寂のなかで、
何かが明滅する。
明滅は赤い、
悪魔の囁きだ。

(おまえは何が欲しい?)
(おまえは何が欲しい?) ....
風の車内に、
弾丸が飛び交っている。
女の鋭い視線に、
私の眉間は打ち負かされる。
ここでは、
誰もが皆、
小さなスライド硝子のなかに弾丸を隠している。
ある男は弾丸を飼っ ....
私はさかなをかく。
私はさかなはかかない。
さかなのなかを私はかく。
さかなを支える骨の内部を流れる
熱い海の流れを。



塩焼きにされた秋刀魚にかぶりつく、
がり ....
(さびしいと思うこと)

それももうなくなった。
皆、鏡の向こうにいってしまった。
だから、
 ....
刑務所で子供を生んだ。
その子に「あかり」と名付けた。
闇ばかりだったあたしの人生に
あかりが灯るようにと。

あたしには、
殺人未遂経験がある。
14歳の中2の夏の日、
 ....
(世界は、針の骨を隠して生きている)
その身にさくり、
前歯を立てる。
雪のような淡白な
甘味のある肉の味が
春の風を呼んでくる。

けれどもその下で
支えている鋭い骨は ....
空になった孔の底から、
風が吹き抜ける声が聴こえる。
喉の奥が苦しくて、手を伸ばす。

(届かない、でも感じる)  ....
左手の小指にまわるトパーズがいつかの夏の空をなぞりて。

一抹の不安枕に眠りゆく終電までの線路の軋み。  ....
(声をきかせてくれないか)

誰かがこの肩に息を吹き掛ける。
鳴らないはずの電話が点滅する。
見えないナイフが
手のひらを追 ....
両手で掴みとった羽根が、
灰になって消えていく。
白い大地に佇む夢で目が覚めた。

(もう、約束はしない)  ....
(誰かが見ている)

そんな気配で
窓を振り返ると
一匹のしらすの目があった。
思い出した、
弁当箱いっぱいの
ぎ ....
(鍵はどこだ、鍵はどこだ、)

誰かが後ろをついてくる。

(鍵はどこだ、鍵はどこだ、)

何かが握られている気配 ....
目を開いて感じてください。
同じことばは二度と書けない私の
たったひとつのことばを。
目を閉じて委ねてください。  ....
 何かが書きたいと、パソコンの画面に向う。するとどうだろう、白紙のワード画面が巨大化して此方に近づいてくる。私は呑み込まれる。そんな夢を幾度か見た。画面の内部は、埃臭い舞台裏のような場所だ。壁や床や天 .... 何かを書こうと考えるとき、私は大概「過去」を思う。記憶の片隅に置いてきた大きなものや小さなものの過去という時間。光が闇から生まれるように、私も過去から生まれてきたのだ。未来を見つめるにも過去の目が必要 .... 私から、
なにかが抜け落ちている。
そんな気配がして
足元を見ると、
枯れたことばの欠片たちが
犇め ....
ことばの奥底にある
私の声が聴きたい。
そう扉を開く時にいつもあなたはいない。

なかないで、
なかないで、
あなたはいつ ....
ししゅう、
死臭を漂わせることばを、
書いてみたいと、
手を伸ばしたそこは
暗闇が続いていた。
私たちは一列になって、  ....
服を脱ぎ捨てて、
皮膚を剥いで、
すべて剥ぎとる。

まだだ、
核心に触れるまでは遠すぎる。
いったいどこまで
いったいいつまで
続くのだろうか。

魂は太陽に比例 ....
皮を剥くことばかり求めて、
実の味を忘れた
林檎みたいな私の肌に、
あなたは歯をがりり立てました。
私はその痛みに歓喜し
ちいさな翼を羽ばたかせ
あなたの心のなかの
小さな ....
(だれか、この腕を解放してくれないだろうか)

そんな声が、帰りの車中で本を読んでいると、心の背中から聴こえてきた。
 確かに私たちは「繋がれて」いると ....
 忘れられない、大切な人との出逢いや別れはなにか、と問われると、いつも思い出す人がいる。S姉さん。私より4つ年上のアルバイターだった。S姉さんは、アパレル関係の仕事をしていたせいか服のセンスもよく、ス ....  クリスタルアメジスト、という口紅を買った。夏になる前頃から気になっていた口紅だ。駅ナカのショップの隅に置いてあったその口紅を試しに唇に当ててみた(本当は手の甲に着けるのに)。するとどうだろう。一日に ....  最近になるまで気がつかなかったことであるが、わたしは仕事でよく手を使う。いや、手が仕事だと言っても過言ではないくらいに。べつに美容師やエステティシャンやマッサージ師ではない。某公共料金の申込書の封入 .... ことばを吸い込むと、
身体中の血管が弾けて、
なみだになって流れていく。
そのなみだが、
地に落ちて、
灰色のキャンバスの上に落ちていく。
キャンバスの頬に
薄桃色の赤みが ....
私がいないなら、
あなたがいる。
あなたがいないから、
私がいる。
いつも時計のように
交わっては消えていった、
数秒の肌の記憶。

何度生まれ変わっても
告げられな ....
夕方、
車中で左隣に座った老人に、
肩で殴られた。
私のなかで何かがメラッと揺れて、
痛い!
と両手一杯に 石をぶつけだが ....
剣のような針が
私の背中を追いかけてくる。
私は追いやられている。

70年前に首都や広島、
長崎をめちゃくちゃにした、
機銃掃射もこんな風に逃げ惑う人々を
追いやったに違い ....
私が私にできることは、
私が私を私からぬきとること。
肉をぬきとって血を降らせて、
骨をぬきとって風を吹かせて、  ....
あなたには、
打たれた記憶しかなかった。
言葉の手のひらで、
私の頬や背中や足を、
あなたは何度も打ってきた。  ....
あおい満月(409)
タイトル カテゴリ Point 日付
人魚自由詩615/10/25 15:09
ささくれ自由詩6*15/10/22 21:39
もえるうみ自由詩19*15/10/20 21:25
蜜柑自由詩7*15/10/18 13:38
自由詩6*15/10/10 21:16
さわら自由詩7*15/10/10 15:19
青空自由詩815/10/7 20:49
リング短歌3*15/10/7 20:42
ウイルス自由詩315/10/5 21:18
東の夜自由詩615/10/4 12:12
しらす自由詩14*15/10/3 15:23
レシート自由詩415/10/3 11:46
未来へ自由詩8*15/9/27 12:23
原点を探して散文(批評 ...215/9/16 21:34
過去散文(批評 ...3*15/9/15 20:22
ペン自由詩915/9/14 20:46
ひだまり自由詩615/9/12 10:30
雪原自由詩615/9/9 20:14
太陽自由詩6*15/9/6 10:04
接吻自由詩14*15/9/5 21:12
束縛の必要性散文(批評 ...415/9/3 21:22
S姉さん散文(批評 ...5*15/9/2 21:51
口紅散文(批評 ...4*15/9/2 21:07
紙折る手散文(批評 ...2*15/9/1 20:44
分身自由詩10*15/8/31 20:34
はなびら自由詩14*15/8/30 9:03
片胸自由詩7*15/8/27 20:52
一部に自由詩4*15/8/25 22:31
私に自由詩315/8/24 16:14
場所自由詩11*15/8/22 9:58

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