刃の指
あおい満月



耳のそとがわから
ことばのない唄が
聴こえてくる。私
はそのわずかな毛
先のような音の足
跡を追いかけなが
ら風に逆らう。風
は足跡の先を掴み
ながらふりはらう
。この目に映る絡
まりあった偽りの
真実を。ふりはら
われたこの肌は生
まれたてすぎて寒
くて怖い。生まれ
たての子どもは初
めて触れられた手
を信じてしまう。
その手はもしかす
るとこの目を潰し
にくる、やわらか
熱い鋭い刃の指の
さきであるのかも
知れないのに。


自由詩 刃の指 Copyright あおい満月 2017-12-14 06:51:37
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