死の匂い
あおい満月

欲望を満たすために
食い荒された残骸が
台所に残る。あなた
はまたひとつの私の
身体を食べたのだ。
血でべとついた肉の
塊が嗤っている。あ
なたの背中には、産
まれるはずだった妹
の頭がせり出ている
。妹の頭は日に日に
大きくなってあなた
を圧迫する。死の匂
いをあなたは嗅ぐ。
そして死と同化しよ
うとしては、私を食
べて現実へと引き戻
る。私の太股は、あ
なたの唇で吸われた
ように凹んでいる。
私の内臓はあなたの
顔をしている。あな
たが元気だと私の内
臓は腫れあがり、私
が元気だとあなたの
内臓が腐りだす。そ
れでもあなたは私を
食べる。尖った牙が
咀嚼する声が夜の台
所に響いている。背
中の妹は、赤々と突
き出て、あなたを死
の匂いのする方へと
手を引いて連れてい
く。夜の花が、散る


自由詩 死の匂い Copyright あおい満月 2018-01-06 06:23:34
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