耳朶
あおい満月

熱を帯びた大地の上に
呼吸を繰り返す大地の上に
赤いひとつの影がある

影は、
一度爪を立てると
じわりとひろがり大きくなる
大きくなった影は足を持ち
大地を駆けていく

影から生まれた風が
大地を真っ赤に染め上げていく
止まらない哀しみに似た痛み


誰かがドアを叩く
私はドアを開けることが出来ない
ドアを叩く音が激しくなる
外は雨が降っている
雨音とのふたつの音が脳髄を食んでいく

苦し紛れにドアをあけると
雨にぐっしょりと髪をぬらした
あなたが立っていた

タオルで包み込む
私の腕の確かな血の流れる音を感じる
包み込みながら、
私はあなたを抱きしめる
愛おしいものがすぐそばにいても遠い

耳朶に舌を絡ませて
いつもの約束を
永遠はいらない


自由詩 耳朶 Copyright あおい満月 2018-01-26 21:37:50
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