月の背中
あおい満月

色とりどりの絵具を使ってあなたは絵を描く
花の絵や、蝶の絵や、動物の絵や、人の絵や
街並みの絵を。けれど、あなたが見ているも
のは、あなたが描いているものは、色とりど
りなんかじゃない。真っ黒く、どす黒く、底
の見えない真っ暗な世界。いつからかあなた
は自身を黒く覆い尽くすことをはじめて、自
分自身も黒の世界の住人になっていた。黒い
世界から、色とりどりの世界を見ることはと
ても楽しいし、飽きないし、楽だ。色のある
生き物にほんの少し黒をあたえて、怯えて逃
げていく様はとても笑える。お前のせいだと
言われれば、すぐさま夜の闇に逃げればいい
。だからあなたの瞳は黒よりほかには輝かな
い。それでも私はあなたに憧れて、満ち欠け
ることのない月の棲みかを確かめるために、
夜通し眠らずに空の星を避けながら彷徨って
いたよ。けれど、確かなものなど、何一つ見
つけることはできなかった。あなたのことを
。けれど、私が本当に探していたものとは、
誰にも創ることのできないまっすぐな一本の
道だったということ。あなたはこれから、闇
裏の道を曲がりながら走っていくのだろうか
。ならば私は、まっすぐな、真の道を歩んで
いこう。誰に汚されそうになったとしても、
折れることのない、まっすぐな、まっすぐな
道を。ほら、また誰か、私の身体を喰らいに
きた。少し齧ってみて、その味はどうだい?
とても苦いだろう。それはあなたから滴る血
が黒いからだよ。本当の黒は、きっと誰にも
見えないのだから。私は、あなただからね。


自由詩 月の背中 Copyright あおい満月 2017-11-29 22:12:17
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