冷たい風がとまる
匂いも闇もとまる
 とまる

泣けない光が
そこの隅にそっと身をひそめる
開けて下さい
開けて下さい
精一杯の囁きが
裏側を超えた耳元で木霊する

 ....
うず高く積まれた砂山の
水を吸いなおも輝く眩しい白に
どこからか這い登る蟻の列
崩れていく足元を超え
弛まぬ流れは頂点を過ぎて続いていく
砂の中から現れるその顔は
太陽の光を浴 ....
そろそろ年かなぁ
そんな思いを抱えながら前足を丁寧にペロペロと掃除する
生まれた時にいただいた名前は清四郎
炬燵の中や庭先の陽だまりの中で寝ていても
この名前を呼ばれると
一先ず ....
夕暮れの町外れの道を散歩する一組の老夫婦
妻は杖突く夫の手を取り転ばぬように支える
寒風の吹く中風邪引かぬよう二人丸々着込み
一歩また一歩と歩を進める

道すがら隣家の庭を眺め南天の ....
とくとくとく

ガラスコップ
なみなみ注いだ酒
口を最初に持っていく
そんな奴等が集まる暖簾下

肴は
からっからに渇ききった
それでも棄てきる事のできない夢の断片(かけ ....
流れ続ける川は
いつしか海へと流れ込む
山の中腹にある
大きな岩は
長い 長い 年月の間に
少しずつ 少しずつ
その身を削られ
円く滑らかになっていく


隣の町では
 ....
眠りから覚めた繰り返される生き物のなだらかな営みの音を聞く

流される眼差しの辿り着くその先にぽつりぽつりと滴る雨だれが
森の入口から順番に整列する椎や楢 栗 椚に少しずつ吸収される
 ....
例えば其処に男が居たとする
男の瞳にはいったい何が見えて居るのか
穏やかに寄せては帰す静かな凪の海が映っている
澄み切った空の青さが際立つ緑濃い山が映っている
男の顔を見つめる男の目線 ....
おととい日はあちらから昇りました
きのう日はあちらから昇りました
きょう日はあちらから昇りました
きっと
あしたもあちらから朝は訪れるでしょう

この銀杏の葉は枯れ落ちました
 ....
黄昏時
電信柱の影に蹲る夜を見つけた
勇気や希望 妬みや嫉み 不安や絶望
そんな物達
を飲み過ぎて気分が悪いらしい
大丈夫?
そう言いながら
背中を擦ってやると
出るわ出るわ 夜が ....
かっちぃが積み木を積んでいます
黄色のしかくいのを二つ並べ
赤い円柱を二個
青い円柱を二個
と 上に上に積み重ねていきます
最後に三角の緑を二個乗せて
かっちぃのお城が完成しま ....
幼子の手引く母の
足取りは重く
歩道の上
アスファルトに滲んでいく

いつの日も繰り返される
出掛けてしまった後悔を
抱いたまま家路を急ぐ

手に取る物がそこに在る
確 ....
    


たなびく雲の隙間から
海と空が混ざり合い 互いの青を否定する
鳥 が見上げる空は
ここより高く
墜ちる事を考えないからきっと飛んで居られる
私 の見上げる空は
どこまで ....
    


好きだよ 君の言葉が空っぽの心を満たしていく
でも間に合わない
この乾ききった星は潤うはずの心を何処までも吸収し還元する
サイクルが足りない
駆け足で通り過ぎる日常を横目に ....
     


朝焼けの 光の中に 立つ影は 鏡を無くし 空を見上げる




あなたの言葉が 今も 耳に残る
点滅する街燈の 下は 黄昏時
じっと見ていた あなたの顔を 遠ざかっ ....
    

落ち葉炊きこの子の頬も紅くなる重なる衣一つ我が手に

紅葉を川面に移す澄んだ水雨音聞いて山は隠れて

聞こえてる耳元囁くあの晩は重なる気持ちずれる今なお

寂しさを感じるそ ....
 
  

あそこで
庭木の手入れをしているのが父です
もう随分彼は
そこから動かないので
毎日
朝夕の水遣りをするのが
私の日課です

週に一度
伸びすぎた腕や増えすぎた首の ....
夜明け前
海を望む寂れた町の小さな駅から
各駅停車の その車両は出発する
ゆっくりと少しずつ 速度を早めながら
私の全てとも言える寂れた町から遠ざかっていく
流れる景色が一定の早さで ....
土砂降りの雨の中
目前の車窓にしがみつく無数の水滴

一人にしないで
そんな声がして雫と雫が一つになる
あちらでくっつき
こちらでくっつき
少しづつ重なる
おもみを増してゆく
 ....
まるで無機質な
蝉の声が聞こえる
吹き抜けて行く風が樹々を揺らしざわめかせる
時折風は窓を叩きガタガタと揺さぶる
キーボードを打ち付ける
タイピングの音が重なり木霊する
飽きる事もなく ....
たまに早めに仕事を終え八時過ぎに帰宅する事がある
頑張って起きていたのだろう娘が諸手を拡げ駆け寄って来る
考える暇もなく引き寄せ抱き上げ抱き締める
もう既にお風呂も済んで寝仕度を済ませた娘が
 ....
君は息継ぎが苦手だからプールの真ん中で立ち止まってはいつも大きく深呼吸してる
わりと息継ぎが上手に出来る僕は昨日まで立ち止まる事も無く此処まで平気で泳いで来た
でも今僕は何故だろう息継ぎが出来ない ....
深夜の商店街
シャッターは降り
仄白く
外燈の明かりがやっと届く
人気の無い道を歩く

ふと目の前を
カゲロウが漂い
無意識のうちに
払い除ける

刹那
脳裏に浮かぶ詩が一 ....
   


歌島さん宅の庭先で
タロが吠えます


夕暮れ時
表を飛び交う蝙蝠を一心に見つめ
かれこれ
吠え始めてから十分は経ったでしょうか
たまりかね
お向かいの河上さんが席 ....
  


なんも取り柄のないあたしと
ぜんぜん特別のないあんたが出会って
余りある 寂しさと
どこまでも続いていた 手持ち無沙汰に
いつしか
一つ屋根の下 暮らし始めた

特別 で ....
遠く地平線と重なる彼方に
ポツンと浮かぶ島影が見える

いつだったかもう覚えていない
遠い昔
スターターが鳴らした合図に
僕らは一斉に飛び込み 泳ぎ始めた

大人達の作る澱みから澱みへ ....
   


誠実で在りたいと思う

突然 割れるわけでもなく
花瓶の水が染み出してくる
その瞬間
隠している筈の物が
表に現れる

もろい心
先へ進む勇気が無い
されど
立 ....
カタカタカタカタ
歩き始めたばかりの幼児が手押し車を鳴らす
母親はその直ぐ後で
我が子を支える為の手を広げたまま
少し腰を屈め歩いていく
坂道に差し掛かりよたよたと
ふらつき出した{ルビ母 ....
ジョイはちょっぴりおませで すこ〜し我儘な子猫ちゃん
大好きな小太郎さんに抱き上げられ
優しく全身を撫ぜてもらうのが日課です

ある朝いつものように抱っこしてもらえると思っていたのに
小 ....
  


春 山を見つめる
西の国から旅して来た
黄色い流れが 静かにたゆたい
ゆっくりと全てを覆い隠す

優しさだけを探して
ほかの事には目を瞑り
握りあった手と手を伝わる温もり ....
川口 掌(42)
タイトル カテゴリ Point 日付
進む道自由詩309/12/29 18:16
…........は自由詩109/7/21 15:47
剥奪されて自由自由詩3*09/2/20 10:41
一本の縄となり自由詩3*09/2/18 12:56
屋台にて自由詩4*09/2/18 12:42
春の気配自由詩3*09/2/17 17:13
あーかいぶ自由詩5*08/4/2 11:10
自由詩3*08/1/30 18:09
きっと自由詩8*08/1/25 11:41
夜の始まり自由詩6*08/1/17 17:53
かっちぃの涙自由詩7*08/1/11 11:08
ゆらぐ自由詩4*08/1/9 18:01
いつか見た空自由詩3*07/12/26 15:52
なだれ自由詩7*07/12/21 12:51
暁の空自由詩5*07/12/14 12:31
ぷりずむ短歌5*07/12/9 20:58
乾いた池の畔自由詩11*07/12/6 18:15
各駅停車で自由詩3*07/12/4 11:36
加速度自由詩4*07/10/31 23:54
眠れる薬を自由詩2*07/8/9 22:15
まだ大丈夫?自由詩2*07/8/8 0:01
別れの詩自由詩4*07/7/26 23:16
月に泣く夜が自由詩6*07/7/24 0:03
タロは吠えます自由詩9*07/4/21 15:52
自由詩16*07/4/18 13:12
遠泳自由詩9*07/4/16 21:22
嘘がつけない自由詩7*07/4/12 12:43
長い坂道自由詩7*07/4/7 21:56
君の名はジョイ自由詩3*07/4/6 23:25
春に自由詩10*07/4/2 19:08

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