ゆらぐ
川口 掌




幼子の手引く母の
足取りは重く
歩道の上
アスファルトに滲んでいく

いつの日も繰り返される
出掛けてしまった後悔を
抱いたまま家路を急ぐ

手に取る物がそこに在る
確立を想いながら
拳を握り込む
と そこには何も無い

力を込めて突き刺さる爪の感覚に
初めて自分に気付き
淀みながら立ちあがる

水面を赤く染める山は
今尚残す未来への入口を探す
閉ざされ消えていく景色の
残像を掌に書き写し道を見つめる


呼吸を強いられる
海の向こう
より巨大な燃焼が讃えられ
燃え盛るモニュメントが築かれる

水平線を眺めながら扉を開けると
深呼吸すら止められ
ただ走る事だけが求められる
微かに聞こえる鼓動が
うつむいた時間を呼び寄せる

正義とか道徳とか
止まらない基準が傍らで
こちらを見つめ明日の
手掛かりを訪ねてくる

目の前に有る
誰かの落し物
それを見つめる視線の先に
次の一歩を踏み出す



自由詩 ゆらぐ Copyright 川口 掌 2008-01-09 18:01:54
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