屋台にて
川口 掌




とくとくとく

ガラスコップ
なみなみ注いだ酒
口を最初に持っていく
そんな奴等が集まる暖簾下

肴は
からっからに渇ききった
それでも棄てきる事のできない夢の断片(かけら)
燃え遺る心ぶつけあって酌交わす

ここはガード下
鄙びたやす屋台
酔いどれて
ただただ頷く者達の集う場所

森林組合の森脇さんが
植林と雑林
里山と生態系の関係
等を話し出す

教育者の河村さんが
昔と今の
教育の在り方に
ついて熱弁する

たまに通る
電車の音が
優しく言葉をさらって走る

がたたん とん
がたたん とん

つきまとう寂しさ
訳無しの物欲しさ
聞こえる
聞こえない
誰もが黙って
優しく頷いてくれる

あんたも
旨い肴持ってんだろ
ここで一緒に飲み明かそうぜ


自由詩 屋台にて Copyright 川口 掌 2009-02-18 12:42:17
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