川口 掌

  


なんも取り柄のないあたしと
ぜんぜん特別のないあんたが出会って
余りある 寂しさと
どこまでも続いていた 手持ち無沙汰に
いつしか
一つ屋根の下 暮らし始めた

特別 でないあたしたちは
二つ足しても
やっぱり 特別では無くて
二人で居れば
変わると思っていた 夢や理想
なんて物は 二人で居る時間が
長ければ 長いほど 色褪せてしまって
モノクロームの
ポートレートの中
なんにも
変わらない時間だけが
流れていくだけだった

二人にとっての特別は
静かに訪れた
いつのまに
ふくらんでいく
あたしの お腹
それから 小さな
とても 小さな命
が生まれた

あたしたちには
もう とっくに
お互いを 振り向かせる
力が残っていないのに

小さな命は
なりふり構わず
あたしたちに訴える
小さな命 の精一杯の
叫びに 答えるために
あたし達は 命の
側で鉢合わせする
そんな事が増えてた

あたしたちは
二人足しても特別には
なれなかった けれど
小さな命は
二人の絆を 思い出させてくれる
特別な存在だった

夢や理想では
ないかもしれない
けれど
大切にしたい
守りたい
という気持ち

単純だけど大事な事
抱きしめたい
と思うこと

あたしとあんたと
小さな命の 絆



自由詩Copyright 川口 掌 2007-04-18 13:12:40
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