きっと
川口 掌




おととい日はあちらから昇りました
きのう日はあちらから昇りました
きょう日はあちらから昇りました
きっと
あしたもあちらから朝は訪れるでしょう

この銀杏の葉は枯れ落ちました
その銀杏の葉は枯れ落ちました
あの銀杏の葉は枯れ落ちました
きっと
ここは冬に包まれているのでしょう

この人は寂しかった
その人は寂しかった
あの人は寂しかった
きっと


お腹の空いた子猫はニャンと鳴きました
けれども何も起こりません
もう一度
お腹の空いた子猫はニャンと鳴きました
やはり何も起こりません
それでも
お腹の空いた子猫はニャンと鳴きました
きっと


気泡の立ち昇る空を鳩が舞います
触れる瞬間弾ける泡
それは
見える者が見えない者へと変わる
そんな瞬間
立ち並ぶ
コンクリートブロック
頑丈な 巨大な 威圧的な
真実
灰色の雲から降る雨は
泡も
ブロックも
等しく包み溶かし何もかも洗い流します
残される
其処には
逃げる場所も
隠れる場所も在りません


この人はお腹が空いています
その人はお腹が空いています
あの人はお腹が空いています
きっと


許される事の訳を見つけるため
明日歩いた街を
昨日歩いた街を
今日の何処かに探します
きっと
見つからない

だけど
言い訳は
見つけました





自由詩 きっと Copyright 川口 掌 2008-01-25 11:41:19
notebook Home 戻る  過去 未来