すべてのおすすめ
右手にホクロを
刻まれて生まれて
ホクロが消えかかった
アリバイのように
一切の追憶が
証拠にならなくても
誰も知りえない罪の
秘密は何よりも甘く薫りながら
孤 ....
下駄箱の中
君はいったいどれくらいの間
神と呼ぶものに祈っていたというの
十七歳だったころの
愛されていた少年よ
牛皮の匂いがする両手で
夕日のたまごを包み込んで
道は渋滞で
バスの中は混み合っていて
みんな一日の疲労でうつらうつらしていて
外はもう真っ暗で
バスはなかなか進まなかった
ドアの側に坐って
ぼんやりと前を見ていた
ふと目に留まった ....
白い 白い 白い
向い合ってない 十分に機能できない場所に放置された
バスケットボールリングの
校庭の小学校
垂れ下がるネットはなくて 空洞のわ ....
「奥さん」
と呼ばれて振り向いた
そこにはオウムがいた
オウムはオウムスタンドに
鎖で繋がれて
にこにこ笑っている
「なあに」
とわたしは答える
オウムは首をかしげ
「こんにちは」
....
キャンディグリーンのミニカー
メイド・イン・ベルギーのミント菓子
ずいぶん磨り減った消しゴム
片方だけの水色の手袋
そういう
何の価値もないものを
何の価値もないものだけをかき ....
雪が溶けたら
やわらかい地球の黒土花壇に
「火星たんぽぽ」の小さな名札をたてよう
ひとが植えたわけでもないタンポポが
好き勝手に咲いてるような
そんな花壇がいいだろう
そこから芽吹 ....
おッ母さん
久しぶりに夜更けに実家に帰って
ダイニングテーブルでうたた寝してる
アンタの背中を見ていたら
おッ母さん
なんだかもうアンタは
死んじまってるんじゃないかって
そんな気がして ....
すべての葉を散らした体内で
葉たちはもう
おしゃべりをしているころだ
プリンが食べたいの
入院している妻がそう言うので
会社の帰りにコンビニに寄って
プッチンプリンを買って面会に行った
病室の硬いベッドに二人並んで腰掛けて
プッチンプリンを食べながら
や ....
チョコチップクッキー
ひたすら食べ続けて
気分悪くなって
悲しくなってテレビつける
そしたら
チョコチップクッキーのコマーシャル
チャンネル変えても
チョコチップクッキーのコマーシャ ....
机の上の図鑑はいつも
同じページで広がっている
そのひとことが
また
言えなかった
日が落ちてから
こんにちは を思い出して
これで正しいのだろうかと
図鑑を開いて調べてみる
さっき思い出した
こんにちは は
ありがとう だった模様
明日は忘 ....
コンビニで買ってきたポテトチップスをテーブルに撒き散らして
両足で踏み散らすのが僕の恋人。
それを食べるのが彼女の恋人の僕。
僕は犬だから、彼女はショーペンハウエル。
....
神が不在の夜
その間隙をぬって
あくまでも地上的な硬い何かが
天上の淡い光を覆い隠す
その時
人びとの喉はゆっくりと絞められ
背徳の快楽に意味のない言葉が虚空にばらまかれる
昔日の絵の中 ....
気がつくと
見知らぬ部屋に、彼は立っていた
窓から吹き込む夜風に
カーテンはふくらんでいた
鏡に顔を映すと彼は
ふと 自分を
のっぺらぼうにしたい衝動に駆られた
ポケット ....
やぶれた風が僕に聞く
ここから呼ぶ?帰る?
木の葉がすごい速さで
転がり巻き込まれてく
浮遊の憧憬の走りみち
風の声を小脇に抱えて
笑う木の葉を追いかけ
走るんだよ走るんだよ
三つ ....
あいもかわらず
あたりはブルーベリーガムのにおいばかりしていて
もちろんそれもあなたのせいだった
ねえ
、と珍しく呼びかけてみると
暗闇の方にブーメランを飛ばしたみたいに
見え ....
たとえば、庭に米粒を撒くこと
集まる鳥たちの名前をよく知らない
色、とりどりに、鳥
天空から降ってくる音
羽ばたく、空
それさえ分かれば、自分のどこかで
満足している誰かが在る
遠い ....
ひがのぼり
ひがしずみ
またひがのぼり
そんなまいにちを
まいにちみているのに
どうしてぼくはそのとき
におびえてしまうんだろ
....
カカシの頭の上で
いつも泣いていたカラスが
首をあげる
揺れる視線の先
輝く円盤の中に仲間を見つけ
嬉々として向かっていった
が
違ったのかもしれない
....
夜が終わる音を
聴いてみたくて
ふとんから顔だけ出して
ひっぱった毛布の端で
口元の辺りが隠れている
暗い水槽の中で
向きを変える熱帯魚の尾ひれは
水を斜めに ....
解りません
普通は白衣でしょ、先生
昼休み
今日も先生は芝生の上で寝ている
あいかわらずの黒いコート
先生、白衣は着ないんですか
理由を訊いたことがある
先生はにこり ....
夜中、目がさめて階下に降りると
君が僕を積み上げていた
たどたどしい手つきで慎重に積み上げ
途中で崩れると
ふうとため息をついてまたやり直す
時々どこか気に入らないようで
何か ....
燃えカスの灰にぬれ濡れて告げるおわりよ恋は燃え尽きて身を焼き尽くし燃えカスの灰にぬれ濡れて告げるおわりよ恋に破れた身を粉砕し燃えカスの灰に塗り込めて告げるおわりよ恋は燃え尽き灰に埋もれて左腕を ....
職場の同僚と{ルビ口喧嘩=くちげんか}して
{ルビ凹=へこ}んでいたハートに{ルビ靄=もや}がかかっていた夜
やり場のない気持を抱えたまま、散歩に出かけた
家を出て、ひとつ目の角を曲がると ....
もっとも純粋な時間が
気温としての灼熱を超えはじめる
すでに熱した魂の最速
澄みきった事実の連続と
広がりつづける夢の持続の中で
胎動する情熱のはじまりは
あるまじき事件として
....
まだだ。
あの辺りがぼんやりと白けるころに、
だ。あと少し。どのくらいかは、知
らされない。その隙間に、乳白の詰
め寄るかろやかさで、午前5時。2
日前の雪は ....
嗚呼なんていう美しさ
刻の暮
大気はすべてを飲みこんでいた
湖は氷りついたように
にび色にゆらめき
鉛の底を這いずる山椒魚のなめらかな体表のように
深く鈍い光の皺が ....
白につづく銀と鈍
黄につづく金と土
線は繭にくるまれていて
まるくなり まるくなり
連なりのなか震えている
海と川の鳥たちが
街の橋を
曇の朝を越えてゆく
ふたつの ....
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