僕らの『凹凸』。
カンチェルスキス





 コンビニで買ってきたポテトチップスをテーブルに撒き散らして
 両足で踏み散らすのが僕の恋人。
 それを食べるのが彼女の恋人の僕。
 僕は犬だから、彼女はショーペンハウエル。
 誰だそれって、僕はわからないけど、
 餃子の包み方教室に通ってるのさ、彼女。
 僕はサルトルの『嘔吐』を読んだことはない。
 餃子の包み方教室で教えてくれる人は、餃子の包み方教師なのさ、
 長いから、彼女は、ラーメントリオって呼んでる。
 彼女のおかしな話し方、彼女のおかしなヒップライン、彼女のおかしな初詣、
 彼女のおかしな病院の診察待ち、彼女のおかしな指相撲、
 彼女のおかしなココアの作り方、彼女のおかしな長いものには巻かれろ体質、
 僕は大好きだ。
 この世からオランダがなくなったとしても、僕は彼女が好きだ。僕は僕が好きだ。
 車の半ドアで点灯し続ける室内灯よりも好きだ。
 僕はフランクおじさんで、彼女は、ビミョーなアンダルシア。
 サルトルの『嘔吐』って近くの本屋で売ってなかったけど、僕は気にしない。
 僕らの『凹凸』。これがあれば十分だ。
 それは何で、何だ。
 僕らはダイニングキッチンで満ち足りる。
 夜空に忘れられた月よりもさびしくていい眺め。
 僕らの『凹凸』には完成はないけれど、
 完成に近づきつつあるんだと思う。
 上空二万メートルからでもはっきりわかる欠落も
 いずれ埋まると僕らは本気で思ってる。
 でも、実際にはそんな美しい話じゃない。
 ずっとうんこをし続ける定めにある僕ら。
 そして餃子の包み方に進歩はないのだ。

  






自由詩 僕らの『凹凸』。 Copyright カンチェルスキス 2005-01-12 19:38:40
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