修験者じゃない私は
望遠鏡ごしに
視線を投げ入れる
遠い異国の景色のようだ
とろりとした夜に
とろりとしそこなったセックスをしながら
ふたりは
2は、どうしたら1になるのかを
しゃべりあった
1を、
....
わたしの中に森が生まれたとき
その枝は音もなく広げられた
指先から胸へと続く水脈に
細く流れてゆく愛と
時おり流れを乱す悲しみ
わたしを立ち止まら ....
うだるような暑さ
浮かぶ汗は彼の人を飾るオパール
薄いガーゼのシャツ
肢体を包んでいる
あまい匂い
バニラアイスみたいな
舐めたくなるような
誰にでもこんなことするの
と
わたし ....
安全ピンに とめられた
近くで 鼓動が聞こえる
建てられた家の壁の 奥
にぎやかな笑も 枯れて
この 残された クサビだけが
奪われたものに対する こたえ
やがて 消えた鼓動の ....
最近妻のご機嫌がよろしくない
夜毎夫がパソコンで
やれDAHONのシートポストの軽量化だの
スギムラRCB-1の後輪のインチアップ計画だのと
自転車三昧なのを横目に見ながら
「今年 ....
Z
それはアルファベット最後の文字
26番目の崖っぷち
これから先に見える文字はない
Zと聞いて思い浮かぶもの
車好きなら
迷わず240Z
湾岸を疾駆する刹那の記憶
ツェットと読め ....
夏休み
自由研究のテーマは
距離に ついて
だから
きみが 必要
逆さにしたフライパンの底を叩いて
大気の震え
300km先の君の朝を起こす
という 確かさ
湿らせた ....
本題に入る前に、誤解がないように、少し、前置きしておく。
最近、某所の日記に、朗読について考えていることを書いた。日記だから、特定の個人に向けて書いたものではないのだが、やや、感情的と取れる反論 ....
ふいに
欠けた気持ちで目覚めた
三日月の朝
とんとん、と
階段を降りながら
わたしを満たしていた
はずの
あたたかい何かを
必死で思い出そうとする
思い出そうと
コーヒ ....
体温と体温が混じりあい
肌と肌の境界を失うように
わたしとあなたも、また
いつしか混じりあうのだろうか
それとも、また
いつまでも失い続けるのだろうか
熱的終焉の果て
触れあうこ ....
猫の手も借りたいくらい
忙しかったりしてる時も
日溜りで遊んでいる
となりの猫を掴まえて
手をとってバンザイさせてみたり
ぷにぷにの肉球を瞼に押し当てて
和んでみたり
そんな時間はあ ....
朝、ベッドの脇置きっぱなし飲みかけのコーラは
君が捨ててしまったみたいで
だけど君は相変わらず何も言わないから
あれは静かにただ流れていっただけなんだな
淋しく吸い込まれて
どこへ行けるでも ....
買い物袋から
オレンジが転がったのは単なる偶然で
私の爪の端っこに
香りが甘くなついたのも単なる偶然で
果実が転がり出さぬよう
そろりと立ち上がった頭上に
飛行機雲を見つけ ....
知っている曲が 途切れて
知らない歌が とぎれとぎれに
髪の先 さわり ふれる
冷蔵庫にジュース
飲みたい けど
動きたくない
どうやってたんだっけ
時間て
なんて
数えるん ....
台風が近づいてくるという
天気予報通りに降りだした雨に
慌てて部屋の窓を閉めました
(淋しさというものは
そんなささいなところに隠れていて)
窓の外から聞こえてくる雨音を
半歩遠 ....
あのころ
まちの高台からみえる風景が
わたしの世界のすべてだった
背がすこしのびて
世界はどんどんひろくなり
わたしはどんどんちいさくなった
くるしいことも知った
かなし ....
見たこともないさよならを
毎日つぶやいているうちに
つめたいそれは温度をもって
かわいたそれは潤いを増して
かなしみに包まれたフィルターを
たぷたぷと揺らしながら
ぼくを爆破した
見 ....
ひとつの恋が終わって
もう二度と連絡が来ないように
メールアドレスを変えてみた
もう二度と見苦しい真似をしないようにという
前進の一歩なのか
はたまた
もう二度と向き合いたくな ....
紅さし指で
この唇をなぞっておくれ
宵をにぎわす祭りの夜に
提灯ゆらり
光はたぶんに
正しいものだけ捕まえる
ほら
燃える可憐な蛾がひとつ
短命ながらも風情をもって ....
帰り道に迷って
泣いてる子羊
あの空の羊雲は
違うよ
君の帰るところじゃない
涙を拭いてよく見てごらん
発見はいつも
ほんの足元からはじまるんだ
背伸びをしてると
ほんと ....
私小説というものがほぼ死に絶え、小説はエンタテイメントとして書かれ・読まれ・消費されるものになって久しい。それに対して、詩というものは、未だに“私詩”とでも呼ぶべきものが大半を占めているように思える。 ....
かなしみもしあわせも似たようなもんだ
こころって難しいもんだ
バイトの連絡がはいった
面倒だけどはいといわなきゃならない
ミニスカートも好きじゃない
それでも渡されたら足を通すしかない
....
いつか、白い雲に乗ってどこまでも旅する夢をみた
ふわふわのその乗り物は
ちぎって食べるとおさとうの味がする
あのころ
月の大地にはうさぎが
花のつぼみには妖精が
虹のふもとには楽園が ....
あの日から
わたしのからだは
透明なゼリーに
くるまれていて
それはずっと
あなたの温度を保っている
その感触は
やさしくて あたたかで ぷるるん
いつまでも
その中にいては ....
時を刻むより他に
自分にはすべきことがあるんじゃないか
時計は思った
けれど何をしようにも
手も足も出るわけがない
ただ柱にぶらさがって
そこはそれ時計の悲しい性なのだろう
正確 ....
土砂降りで
街は
真っ白に
光っていて
おれは
雨の終わる場所を
ずっと
探し続けている
「杭 1」
杭を打つ
鍵の形の
杭を打つ
今、一万本打ち終わった
コーン コーン コーン コーン
からっぽのあちらこちらに響いている
杭を打つ音
吹く風
さざ波
....
「…あ、映像がつながったようです。現場の堀さん! 堀さん!」
「はい」
「あ、堀さん。えー、そちらの町は、つまり全部、赤色一色になったわけですね!?」
「はい」
「あ、堀さんの ....
恋をしたあなたは
前よりもどこか優しく
少しくらい意地悪を言っても
笑って許してくれる気がした
恋をしたあなたは
ときおり冷たく
今までみたいに言ってはいけないことが
あるような気が ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36