あなたによく似たひとだった
人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた
これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した
その ....
また差し歯がとれた
一年で三回目
歯を磨いていたら音もなく
歯医者もさすがに見過ごせなくなったのか
作り直しましょう
と言った
しかし
それでだめだったら入れ歯ですよ
と続けた
僕は ....
パスワードを変えた
だからあなたは私に触れることはできません
パスワードはあなたにはきっと解らないでしょう
ヒントは私の部屋の水槽で泳いでいるきれいなかわいい青い魚の名前
私はロボット ....
わたしの中は
内臓とか
血とか
脂肪とかじゃなくて
海 が広がってるんだと思う
わたしの泣き虫のレベルは
ランクをつけるならAAAだ
本を読んでは泣き
曲を聞い ....
秘密が
秘密が欲しいの
太陽の光に照らされて
私あの娘の秘密知ってる
ごめんね山田さん
私止まらない
ごめんね先生
私止まらない
ごめんねヒロくん
私止まらない
私止まらな ....
そそくさと去り行く夏の記憶を確かめようと
深緑色に澱むお堀ばたを訪れてみた
色とりどりのウエアでストレッチに余念の無い肢体は眩しく
人恋しさを見透かされてしまうようで
遠慮がちにちょっと離 ....
届かないと思っていた扉の取っ手は
いつの間にか腰の位置になっていた
背が伸びて視野が広がる
遮っていたものに追いつき追い越し
世界の大きさに少しずつゆびが触れる
もうすっかり ....
白い部屋の
白い窓辺のあなたに
向日葵を届けたい
朔の闇夜の月を
輝かせるほど
明るい向日葵を贈りたい
七色の虹が
黄色であふれるほど
たくさんたくさん贈りたい
あなた ....
白痴にも似た怠惰と無神経さであの娘を傷付けた
頭が回らなかったんだ
君のあの日の日記の不機嫌さはおそらく私に向けたもの
悲しいから
くやしいから男の人に頼る
不機嫌になったら男の人に救っても ....
{引用=地上では
夏を散らす風
恋しくて水面をみあげた
なぜかしら
感じたことのないものを
わたしは知ってる
水面には
ひかりの乱舞
銀が背に降り積もり
手のひらの ....
水槽を抱えて
列車を待ってる
水槽の中には
やはり駅とホームがあって
幼いわたしがひとり
帽子を被って立っている
ある長い夏の休みの間
ずっと被っていた帽子だった
水の中もやは ....
飼い猫と捨て猫の違いぐらい
こんな私だってわきまえているよ
あなたに甘えられなくて
ミカン箱の中で過ごした一夜
大輪の花火きれいだとあなたは言った
そんな花火になりたくて
この街へ ....
蜻蛉が雫に映るとき、
雨の一粒一粒に
空は宿る。
濡れては飛べぬその羽は、
悲哀の純度で透きとおる。
雨の最後の一滴が
蜻蛉の羽に落ちるとき、
無数の空は連なって
ひとつの空を ....
操作されるのは
コントローラーがついているから
敵はどこだ味方はまだかと
そんなこんなしている内に
独りきりになっていた
可愛く写真に写ろうとしても
いつも笑顔には ....
1
「――光は痛いですね。
きみは風にのれば影がなくなるのをしっていますか?
きみの記憶は焦らずに、
ゆっくり歩いていけば自然と埋まってゆくでしょう。
きみよりも地面 ....
なにやら窓の外がやかましくなった
「今こそ」とか
「ともに」とか誰もが叫んでいるような
ここにしゃがみ込んで久しいし
一見自由そうで実は窮屈な姿勢にも慣れっこ
目を瞑っていれば何が起 ....
雨の夜のアスファルトでは
光も熱帯魚みたいに濡れている
迫り来てよぎり過ぎ去り遠退く
赤い、黄色い、無数の鱗が目に入って
濡れるしかなかった視線が水性インクとなって
雨の夜に、明るい ....
僕にはとても ちからなんてなくて
可愛い君ひとり 救うことができない
誰かを救えるなんて そんな思い上がり
ばかみたいだよね にんげんなんてさ
つかったり つかわれたり
ひろったり ....
闇に溶けてく
もしかしたら、「僕」は居ないのかもしれない。
様々な波長をその感覚細胞で捕らえながら
「僕」というものを形作っていく。きみのなかに。
も ....
ねえ、きみのなかに、
どれほどたくさんのきみが泣いているのだろう
たくさん、あふれだすたくさんのきみが、こだまする
**
ポカリスウェットとポカリスエット、どっちなの? ....
此処までがわたしで
彼処からをあなたとすると
あなたは夢をみるだけ夢から離れると云うことになります
行進する群れの中から
あなたひとりだけが選ばれたと云うことなのでしょう
上へと還る ....
おもわず空を仰ぎ見た。
あたしを覗いてたのは、おもいきり金色をした半分のまる。
機械の動く音とともに、やさしいこえ
ふりむけばおおきな闇がぽっかりと僕を待つ ....
わたしが生まれるよりうんと昔に
他界してしまった母方の祖父は
実直で陽気なひとだったと言う
わたしが高校の制服に袖を通して間もなく
他界してしまった母方の祖母は
大変に気の強いひとだ ....
井の中の蛙を掌にのせて
珍しそうに眺めながら
「大丈夫だよ」と彼女は
うわのそらでつぶやいた
程好いぬくもりにとろけて
居眠りしていた蛙は
「大丈夫だよ」という言葉を
うっかり「好き ....
風を受けて
ふいに
ことばが途切れる
頷いた
眼差しの
彼方には
夏の空の
積乱雲が
まばゆい
音楽のような
やり取りが
耳に心地よくて
話し声が
音にしか
聞こえない ....
やわらかな慈雨が
この岩に穴をあけたのです
どこからか種がやってき
うまい具合な風や雨や光だったのでしょう
穴から松が生えようとしています
教訓を見出だしたい訳ではありま ....
神様もずいぶんと威厳をなくしたこの世の中に生きているよね
香水とゴシックロリータと白痴が歩く 駅からきっとどこかへ
まどろんでするセックスに溶けそうだ 脳も体も焼ける気がする
おもい ....
君は暮れ果てた記号の森ふかくで永遠と出逢うだろう
僕は知っている 泳ぐのを止めてしまった魚 そして地獄を
君は目を醒ますことなく星を抱いている 月光を 浴びながら
甘い偽 ....
きみは君という病気なんだ
きみが死ぬまで君は治らない
でも君のままのきみがわたしは好きだから
きみは何も心配することはないんだ
コーヒーに入れる砂糖の量が変わろうが
日々の態度や言葉遣いが変 ....
神の妨害がゆるされるのなら
この身を捧げることなんて
鉄と綿を天秤に架けることくらい
結果はわかっていたことだった
地下鉄の階段から見上げた
地上の灯りはとてもましにみえ ....
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