すべてのおすすめ
牛乳を買ってきたつもりだったのに
袋に入っていたのは
それはそれは立派な
乳牛だった
妻は、こんなものどうするつもり、と怒りまくり
娘は、牛さんが来た、と大喜びをした
毎朝、新 ....
やわらかな文字が降りてくる
葉の裏側の粗い緑に
次々と染まり 降りてくる
朝の方位へはばたく鳥の
青い青い羽の炉心へ
影はたなびくように落ちてゆく
午後の淵 ....
この惑星のこのあたりはそろそろ晩秋で
赤く色づきはじめたハゼの葉が
窓の外に揺れ
この惑星のこのあたりはそろそろ夕刻で
暗くなってきた室内に
パソコンの画面がまたたき
またたき
....
攻撃 性 の 毀損 触知 される 指先 の 韻律 多孔性 の 羊 は 曖昧 な 感受 性 留まり 口づけ していく 細密 な 皮膚 たどる 読解可能性 の 脂質 明証 された 受注 白亜 の 細胞 枠 ....
ネギを買いそびれて
僕たちはネギの話ばかりしていた
こんなに真剣にネギの話をしたのは
何年ぶりだろう、なんて
今でもネギを見ると
あの日のことを思い出す
だから僕は
ネギを食べなくな ....
ス、べる
ファスト、ぶ
レク、ファスト
モゥロウ
ティーン、ン
ウ、える、コ
ンドル、ド
ルフ、エンド
ルフィン、グデビ
....
おやすみなさいとゆめをみない
おはようとめがさめない
こんにちはとてをふれない
さよならとふりむけない
しらないうちにわたしは
がらがらごえのばばになり
ひとりきりでさくらのしたに
ねむ ....
夕焼けに
あなたをひたしておいたのは間違いだった
体の重みが邪魔でならないというように
身をよじって窓辺のベッドに横たわる
へそのくぼみから腰骨
肩甲骨
うで
まるく光る乳房
あごの下 ....
いまはただ
雨が降り
石にしみるまま
あけないおくで翳のかたちを追っている
ひがしの空だけが
ゆるやかに
くちびるをひらき
すきまから虹彩をのぞむ
わたしは
まるい眠りを
かきわけ ....
「ふ」を付けただけで
不幸せになるのなら
最初から幸せなんていらない
「む」を付けただけで
秩序を失ってしまうような世界は
多分まぼろし
「み」を付けただけで
来るのだろうか ....
赤い辞書
に
君の持っている赤い辞書に
夕焼けは
挟まれている
もう長いこと挟まれていたので
辞書の文字が夕焼けに溶けて
世界がぼやけて
君の世界がぼやけてゆく
のを見ている ....
低い雑音が
長い指で部屋を握る
振り落とされそうになりながら
いつかは終わる
いつかは終わると
言葉を噛みしめながら
揺れを震えを聴いている
誰の声にも触れ ....
かえで
水の かえで
誰のものにもならない鳥が
目をふせ
何かを見つめている
少しずつ
少しずつ ひらく羽
雨の朝のかたすみの火
濡れた葉の色
羽の色
....
かな小父の通夜はにぎわい
三弦と木魚 お宮の龍笛をひきあいに
かな小父の唄と三弦曲かれこれが寄って
大ざら酒瓶もたたかれる とむらいの夜
かな小父がわたしにくれる遺物 掌が
その壺の ....
テーブルの上に何かを忘れてきてしまった
いったい何を忘れてきたのだろう
それは大きなもの
ではなかった
かといって小さなもの
でもなかった
賞味期限が切れそうなもの
でもなく
....
「ずっと恋人でいましょう」
と言って 結婚をしました
結婚をして15年
ずっと敬語を使っていますね
「待たせました」
「出来ていますか」
が好きです
ついに私達の娘は
ロングス ....
神様への恨みその他
いろいろあって
昆虫に生まれ変わる夢をみた
キャベツの葉の巻き込みの下で
今とてもしあわせ
緑色の天蓋はともすれば
お祖母さんの匂いがする
そうだ ....
自転車置き場で
空を見上げるのがいい
そこに風でも吹いてくれれば
なおいい
そんなとき
携帯電話の電池でも切れていて
何か大事なことや
大した事じゃないことや
君にとっては ....
五反田へは
品川まわりの方が早いけど
君を思いだすために
久しぶりの家並みを見ながら
今の僕には池上線が
ちょうどいい速度で
君と出かけた日
洗足池で降りだした雨は
五反田で本降りにな ....
透明な波が
どこからかやってきて
ささささあん、ささささあん
とうち寄せてくる
けれど
透明な波はあまりに透明だから
私はいつもそれに気づかない
例えば
静かな朝の食卓
箸を ....
こびとは手紙の最後に
「こびとより」とそえたあと
「こ」と「び」のあいだに
小さく「い」の字を書きくわえた
しばらくながめているうちに
恥ずかしくなったのだろうか
てのひらで手紙を丸め ....
それでも闇は………………浦にたたずむ
…………しろがね/くろがね
(犬の…………
....
ラジオから天気予報
東京地方は
雨のち曇り
所によりキャッチャーミット
所によりボールならば
キャッチャーミットでも持って出かけるが
キャッチャーミットの場合は
何をもっ ....
ボウは嵐の夜に
振り落とされたのだった
黒雲の闇からまっさかさまに
大海原へぼとりと落ちて
荒れ狂う波間に沈んでいった
気がつけば
波の切っ先が岩を削る
歩いただけで
....
自転車の前輪の
音も姿も消えてゆく
ただ後輪の影だけが
どこまでも自分を追い抜いてゆく
見えなくなる 見えなくなる
夜の光の下
深緑の猛者
おいしげる
おい ....
隣りでは君の咳が止まらずに
ウイルスが部屋中に降り積もって
負けじと僕も僕のウイルスを飛ばしながら
お互いのウイルスは僕らと同じように仲良くしてるのかなんて
そんなこと
ど ....
妻と相談して
家にエレベーターを取りつけることにした
けれど、取りつけた後で
この家には二階も地下室も無いことに気が付いた
ボタンを押すと
チーン
と音がして扉が開く
上にまいりませ ....
なんの特徴もない女が
シャンプーのつめ合わせ持ってやってきて
さっきからうちの風呂場で
シャンプーの中身をつめ替えていて
僕は黙って後ろから性交し
女の中に白い精液をつめ込んだ
....
言葉をなくした二人の間には
天使が通る道が出来るのだと
教えてくれたのは確か君だった
さっきからずっと何も話さないでいる
僕と君の間を
ほら
天使が団体で通り過ぎていく
天使が通 ....
青白い校庭のすみで
二人手をつなぐ
土管の中
ひんやりと湿ったコンクリートの円形が
彼らの頭から足先を連続させて
皆既月食のように輝いている
静かな夜
土管の外側は小さなタイルのモザ ....
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