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心臓の近くでセミの声がしている
冷蔵庫を開けると
大きめのロブスターが、ヤー、ヤー、と
おもちゃの銃を振り回しているのが見える
いつだって無邪気な者には罪が無い
野菜室からよく冷えた ....
とても新しい
墓石に刻まれた文字が
読めない
わたしの名前が
書いてある
はずなのに
目を開いたまま
ぶったおれ
何が見えた?
あかいふうせんがどうんどうんとそらへそらへと侵食してい
き
ました
広い、窓のあった部屋
私の一部分がそこで途切れていて
確かな
薄い胸で必死に空気を集めていたこと
息切れと
ほんの少し気持ち良いと思える
ぴりぴりとした痺れとで
滑り込んできた電車は目眩 ....
ヤギさん郵便
おてがみ迷子
もしもし此処はどこですか
広くは乙女座超銀河団
狭くはフォッサマグナの東
地球的には春分点前
世の中的には年度末
わたしはわたしが生きている
時と場 ....
色エンピツのセットを開けると
母さんは黒い色と並んでいつも一番長い
そして一番きれいだ
こんなきれいな母さんを使うわけにはいかないから
やっぱり母さんは一番長い
バカ男さあ、昔、母さ ....
トーク。暁から暁までしゃべり続ける、トーク。
トーク。君とトーク。
知っていることをトーク。
知らないことをトーク。
トーク。いつまでもトーク。
人の顔を覚えるのが苦手な僕は
君が誰か ....
父さんと二人で散歩に行く
父さんに水を入れると
喜んで太陽の光にキラキラしている
しばらく歩いて河原の土手で一休み
河川敷では子供たちが野球をしている
ねー、父さん、
バカ ....
ペットボトル
父さん
色エンピツセットの中で一番きれいな赤色エンピツ
母さん
観覧車の置物
兄さん
粘土
妹
テーブルに並べて
バカ男はいつもの席
....
食べかけのスイカがもう
夏に生きる虫のように臭っている
庭に埋めなきゃ
そう思ってサンダルを履いたのだが
シャベルが見つからない
春先に何かの花を植えた時には確かにあったはずだ
ス ....
計算機を裏返し
ドライバーでひとつひとつ
ネジをはずす
基盤が剥き出しになる
入りくんだところで
ラーメン屋は既に営業している
のれんをくぐる
いらっしゃい、とだけ言って
寡黙 ....
ハマダラカを
駆逐しようとして
浜口虎之助は死んだ
農園で脳炎で死んだ
彼の一人息子は
カイゼル髭を蓄えても
いつも腹が鳴っていて
形見の蝦蟇口は空になり
パンの耳も囓れな ....
夕暮れに塗られたりんごが
夜更けに眠れないからと
朝をかじっている
どうにも力が足りなくて
上手く噛み千切れない
どうにかあがいてみたくて
こぶしを握り締めて
枕に丸い頭を叩きつけて ....
希少種の純血の
黒々とした望郷は
遠く
空の一点で氷結した。
何よりも広い夜
一心に消え去る水鳥を
無感覚の透明さで 愛した。
今日もまた夜は長いだろう。
僕は狙撃されるだろう。
....
またね
春風から一番遠いところで
皆でそうつぶやいたら
誰かの下唇に
名前の知らない花が咲いた
なあ、せっかくだからさ
もうしばらく
楽しいおしゃべりをしよう
傘魚の砂地に
キャサリンとレイチェルの刺繍
何?
内緒の話・・・・
キャサリンがレイチェルに耳打ちしている図案
二人は仲良し
いつも一緒
時々絶交するけど
一日じゅう手をつ ....
妻と二人で梅干を漬ける
台風が近づいている
空はまだ晴れているけれど
窓から入る風は生暖かく蒸し暑い
梅の実の良い匂いがする
水洗いした梅の実をタオルで一つ一つ拭き
ヘタを楊枝でほ ....
なに戸惑った顔つきで叫んでるのさ
ワームホールはもう閉じちまったよ
ぷんぷん漂うのはメタンぽいな
どこの惑星から来たのか知らねーけど
諦めて寝てたらどうだ
弥勒が来るころには
....
子供達の笑い声が響きます
夜の頃、寒空の影のあたりで
冬の薄皮の下、破れそうなぎりぎりのライン
ジャケットを探す手で
ため息の縁をつかんでみる
思いのほかよく伸びるそれを
つま先まで引 ....
こんなに良い日の最後
洞穴からサンショウウオが顔を出す
夢を見て
最後にとても幸せな
エンディングシーンのはずが
わたしが「これは夢だ」
と気がついたとたん
ダメになる
馬鹿ターボ
全開で帰宅する俺
髭をたくわえ少しワイルドな俺に
おかえり、を言う娘は少しワイルドな俺に少し慣れ
一番星が出始めた空の下で縄跳びの練習中
綺麗でしょ、綺麗でしょ
いや、 ....
「?」
今日は、太陽が、乾いているね
空は、ひかひかと光っているね
鳥が、すーいと横切っていくね
まだ、あなたはねむたそうだね
木は、枝々で空を触っているね
(とてもさわやかな ....
Blue Sky
僕らが愛と呼ぶもののすべてが真実でありますように
僕らの幸せが誰かの不幸のおかげでありませんように
僕らのパズルはこんがらがっていつまでも解けない
このまま解けな ....
二十歳になっても何も変らない
ただ何かを変えたくなった
今の自分を不幸だとは思わない
でも決して幸せとはいえない
キャンパスを飛び交う拡声器の声
その熱さの中で
彼らは自分 ....
雨の粒たちが描く
池の波紋を見ながら
保育園からの帰り道
娘は赤い小さな傘をさして
唇をぎゅっと結んで
最近、娘の話題といえば
明日の遠足のことばかり
弁当のおかずの注文 ....
覚えてる
迷ったときの指先のちょっとした仕草とか
暑い室内でむっと漂ってきた身体の匂いとか
正午、君がサイレンの口真似をすると
僕らは作業を中断して
いつも小さな昼食をとった
今日 ....
先に子どもたちの声が消えた。流氷のひしめく冷たい海に放り出さ
れた私たちの生きようと叫ぶ声がむなしく響く。この海のなかでは
私たちは完全に無力であった。この冷たい氷の海のなかでは。
脱出を試 ....
牛乳の入ったマグカップ
右手にあるその重さとその軽さ
トースト
トマト
スクランブルエッグ
生きるということの重さは
生きるということの軽さ
そこまで考えるといつも
ねずみがえしの ....
がっこうからかえると
おかあさんのからだがばらばらになって
いえじゅうにちらばっていた
あわてて
ぜんぶかきあつめて
しんちょうにくみたてると
とりあえず
おかあさんみたいなかたちに ....
兄はまだ小学生相撲大会の賞状を
大事にしているだろうか、と
扁桃腺の手術後
縫合を忘れられたままの婿養子は
まだ考えているだろうか
ふとバス停に波は寄せて返し
沖に流されていく砂の ....
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