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地下道の便所の前に
何も書かれていない
真っ白な短冊が
くしゃりと折れて
落ちていた
無人の通路に
夜の靴音を響かせながら
便所を通り過ぎる
Tシャツの背中を ....
流れ流れて
何処へ行く
ふわり、その瞳で
何を見た
出逢いて何を
思うのか
あてなき旅路
続けては
忘れえぬもの
また増える
....
菜の花カフェでは アゲハチョウ
静かにjazzを聞きながら
アイスティーに 舌づつみ
木陰の下では テングチョウ
木の幹 張り付き
かくれんぼ
風を拾った モンシロチョウ
お化粧 ....
月の裏側が見たいと
弟が呟いた
瞳はもう
赤方偏移を繰っているように
白兎を歌って
憧れと諦めをわたしに託して
弟はもう
腐りかけた足で
旅に出ていた
痛々しいほどに頑張りす ....
私だってね
私なりにね
考えているんだよ。
このチクチクした頭をね
もう必要としないなんてね
ひどい話だよ。
なんだかね、
頭から否定されてね
じゃあ私は何なんだよ。
じゃあ私は ....
少年は靴を履いていなかった
ぼんやりとした瞳で
橋の上から
流れゆく川を見ているだけだった
少年に親はいなかった
預けられる場所はあるものの
そこは少年のいる場所ではなかった
少年は ....
神社の石段はクロマティックで
綻びを縫うたびにリズムが泣く
鈍色の穴から囁く間歇気流は
先回りして落としてきた脳の断片
がえんじない足をすり抜けていく
させよ。
そう念じるも
た ....
07/07/05
驚いた!
変わったわね、
と言われて
鏡を見たら
知らない人が
こちらを見ている
顔を盗まれたのかと思ったが
盗まれたのは記憶のよう ....
雨上がりの空に
星は出ていなくても
月は出ていた
私は鼻歌を歌っていたけれど
自転車が接近してきたので
鼻歌はやめた
不意に
私の中から勢いが消えている事に
気がついた
....
君がいた
ぽつんと君がいた
ぽつんとアイスクリームを食べていた
私もいた
ぽつんじゃないけど私がいた
がつんとアイスクリームを食べていた
チャンネルをまわす
君との ....
泣かない女は強いの
でもね
泣けない女は強くなんてないの
とっても弱い生き物なんだよ
とっても哀しい生き物なんだよ
だから
そっとあつかってね
優しくあつかってあげて ....
一筋の夢
指で先を足していく
空には届かない
私の背伸びでは届かない
そのまま
ぷつん と途絶えた
音信
首元がさむざむするから
結っていた髪を切った
ただそれだけのこと
今朝 ....
修理相談センターに電話すると
またあの女のひとが出る
状況を報告して電話を切って
しばらくすると
修理のトラックがやってきて
私を段ボール箱に梱包して
工場へ連れて行く
修理されてい ....
私は林檎。
林檎は落ちた。
恋に落ちた。
ニュートンさん
私も疑問に思います。
何故
林檎は落ちるのでしょう?
落ちた私は
....
「ありがとう」
「いただきます」
「ごちそうさま」
ちゃんと気持ち込めて言う
感謝とか 幸せだとか
「まいど」
「おおきに」
「どこ行かはりますの ....
若草色のかざぐるまに
しがみついていた、あの人が
夕風にさらわれて
私の中を流れてゆきます
水たまりの映す青さの
ほんとうを
確かめるまえに
軽々と飛び越えて
もう
行ってしまっ ....
すきなひとがいる
わたしを、すきでいてくれる
{引用=
恋愛は共同責任よ
うまくいくのも失敗するのも 二人の責任だわ
}
そのとおりだ
自分ひとりだけが、恋焦 ....
また会えるからサヨナラと言った
雪の残る街
いつものように見送った僕を
覚えていますか
赤いコートの裾が揺れ
乾いた風に凛と鳴る
あしたもきっと青空だね
ふたり信じていた
....
となりのひとの
新聞
読むでもなく眺めていたら
恋のひやりはっと
って記事が
目に飛び込んできた
おとこのひとに見つめられ
ひやっとして
揺れるわたしに
はっとするってことかな
....
チューシャは少女のようにはしゃいでいた。午後の陽射しが強いスジャータ村の大きな木の陰で、普段はサドゥなんかがルンギーとして愛用するオレンヂの布を大地に広 ....
「貴女はご自分に酔っていらっしゃるのです」
思いがけない言葉に顔を上げた
彼は静かに私を見つめて煙草に火をつけた
(どういうこと?)
いぶかしげな眼差しの私に彼はこ ....
六月の香りの入った
お手紙
あなたから
お久しぶりです
から
始まって
麦わら帽子をかぶった
七月の夜に
なぜか さみしかった
その日の
星がひとつだけの夜に
かわい ....
底の少し剥がれた
スニーカーで、歩く
レンガに反射する光が
私をほんの少し
焼いている
とりあえず深呼吸
一回、二回
排気ガスは気にしない
それすらも
世界の一部だと
言って ....
そう厚くない 空の層から
シャワーは今日もふる
せせらぐのは 大気の雑踏内を
散歩するようなきもちにして
{引用=がくぶちに青から赤
藍から藤へと染めこんで
雨が恋する}
さ ....
木蓮の花は
{ルビ宇宙=そら}を見上げる
『木蓮の咲く丘で』
花木好きの彼は
木蓮の花が一番好きで
白く甘い芳香が
中途半端にひらいた花びらから立ち上るのを
まる ....
へらへら顔に
爆発頭
だけど心はセンチメンタル
僕に触れたら
誰もが懐かしさに浸って
死んじゃうから
離れててほしい
昔のアルバムを
朝焼けに
溶かしてしまいたい
十六 ....
その花には名前はなく
道の隅に ひっそりと咲いていた
それをみつけた きみは
その花に名前をつけた
その花は、あたらしい「いのち」を与え ....
安らかに眠っていた牛が
Mooッと一声高らかに鳴いた
月には一文字足りないけれど
無知蒙昧で顔をまんまるに膨らませ
危険を回避する為に電化していく家の隣で
しれぇっと天然ガスを汲み上 ....
夏の朝
とうもろこし畑の中に溶けてみた
一直線に並んだ黄緑の
甘い匂いが夏だった
気づけば夏の中に溶けていた
黄色の穂先から見上げる青空は
水を見ているようだった
土から湧き出る水蒸気が ....
鍵爪のような細い三日月の夜
ある人妻は魔王メフィストと約束を交わしました
禁断の恋の成就を願い
その代わりにメフィストの言うがまま
魂を売ることにしたのです
ただ一つだけ月の出ない闇 ....
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