新緑の木々と風が
奪い合うように睦み合うそばで
夕暮れの光とあなたが
隔て合うように惹き合っている
もしも生まれ変わることができたら
同じ時に同じ ....
草刈り後の、草の匂いがする
人の血の匂いは
ここまですがすがしくはない
もっと
体中がカッとなるような
そんな匂い
刈られなかった
花壇の花たちは
この匂いを嗅いで
体中がカ ....
細い糸
端と端
互いにもってひっぱって
どんどんどんどん
どんどんひっぱって
切れるわけないよ
伸びてゆくよ
世界がかぶさって広がってゆくよ
円と円
縁と縁
まるければきっ ....
晴れた日は外に出て
あなたの言葉に
二本の足を貸してあげよう
ヘッドフォンは
はずしちゃいなよ
晴れた日は
言葉の散歩に行こう
なだら ....
きいてね。
きいたこと、あってもね。
うるさいだろうけど、ね。
ねぇ、きいてね。
きいてね。
その耳たぶでね。
もっと奥のほう、
まごころ ....
にんげんひとり
にんげんひとり
よかったね
おそろいだね
おとこがひとり
おんながひとり
かなしいね
ふぞろいだね
....
おりてくる歌がある
そっと
糸が垂れるようにして
卵を割ってるときなどに
ひねりだす歌がある
ぎゅっと
譜面に手をつっこんで
赤子を堕 ....
その人には顔がなかった
ゆっくりと動く喉仏
見なくても分かる 嗤っている
高い位置から嗤っている
私の苦手な目をして
私の苦手な言葉を紡いでいる
その人には顔がなかった
....
きみと歩く
この細い並木道
きみが
春風だから
ぼくは飛んでゆくよ
くだらない
愛の歌だけ詰めた
おなかをかかえて笑うよ
....
飲みかけのコーヒー
食べかけのプリン
吸いかけた煙草
死にかけの犬
読みかけの本
書きかけの日記
脱ぎかけのズボン
掛けちがえたボタン
揃えられないブーツ
禿げたマニキュア
散 ....
川面で光の魚がはねている
春と霞を点描で描くのはぼくではない
土手の並木の樹勢のなかを
グングンふくらみ育ってゆくもの
ふくらみみもだえて勢いを増してゆくもの
樹 ....
ことしもはるがきて
はながさいている
はなはたのまれて
さいたのではなく
はなになりたくて
さいたわけでもない
はなは
はなにしかできない
さくことで
せ ....
ここに
にんげんは
そんなにたくさん
いらないよ、
ふたりでいい
つなぐ
てのひらも
そんなにたくさん
いらないよ、
ふたつで ....
蝶々の
羽ばたきが
運んで来た
渦が
頬をなでる
そこから始まる
とりとめのない
春
誰もが気付かない
かりそめの
春
こうして
....
雨よ 今は降らないで
あの子が 泣いているから
そんなふうに 冷たく 無残に しとしとと
愛しいあの子に 降らないで
今だけは 太陽よ
あの子に笑いかけてやって
きっと き ....
子供達のいない公園は
時折り古代遺跡になる
すべり台は物見の塔
ブランコは祭り道具
砂場は野菜の洗い所
一つ一つが遥か彼方に
置いてきた記憶の欠片
回転遊具の中に入って
見上げ ....
あんなに怖かったのに
考えてもかんがえても
答えはなかったのに
きみと話した時間に
茜いろの帰り道に
電車の窓からのぞく空に
やさしさの意味 ....
今朝は寒かった
故郷の朝を思い出した
近づいては遠ざかる 除雪車の排気音 タイヤチェーンの音
サカモトさんと うちのとっちゃがやっている 雪かきの音
屋根からの小さな雪崩が サ ....
桜の季節が近づくと
守れなかった約束に胸が痛む
一緒に見るはずだったのに
花咲く前に散った命
一人で見る桜には
儚さと憂いしか感じられず
ただ涙溢れるだけだった
あれから一年が過 ....
棒のような
脚の少女が
ベージュのトレンカーの
足首だけ外して
モコモコのダウンで
着ぶくれて
私鉄電車のすみに
もたれている
春とは名ばかりで
今夜の風は冷たく
....
つまがねむり
むすこははなうたをうたい
やがてそのはなうたも
いつしかやみ
ねむりがおとずれている
はやくねむりなさいとしかりながら
ねむってしまったつまのこえも
は ....
夜明けの人よ
この胸の彼方の青い丘に立ち
おそらくは私を待っているのであろう
夜明けの人よ
あなたのもとへと
私は行きたい
けれどそれにはまだ
私が過ぎ去らねばならぬもの
私を過ぎ ....
乾いた大地に
夏の厳しい日差し
しおれてしまった花に
水をひとしずく下さい
*
空っぽになった部屋で
なくした希望を探す
仕方がないと言いながら
耳障りなため息を吐く
* ....
静かなまま今日が終わり
朝になってゆくことに慣れて
季節だけが変わってゆく
続いてる命の呼吸
私もどこかへゆくのね
変われないことに泣き
変わることを目指しすぎて迷う
ありの ....
月が近すぎて
空が広すぎて
泣きそうになる
あなたに会いたくて
手を伸ばすのに
さみしいね
暗すぎて
見つけられないじゃない
深夜の地球はよく見えるから
光の一筋で弧を描いて
じっと待ってる
ここへ降りておいでよ
見知らぬ神様
真昼の地球はキラキラし過ぎて
僕の居場所が紛れちゃうけど
ひとりぼっ ....
かなしいと つぶやいたはずの くちびるが
さびしいと きこえてしまいそうな よる
しずけさは するどい はもののかたちをして
よわいわたしの かんじょうを なぞる
けれど ふるえるゆび ....
川の水がなくなっていた
また上流のダムがせきとめられているのだろう
その上流には私のいた村がある
村人にはダムに注ぎ込まれる川の水が
どこでとめられていても関心はない
ダムの真下には友人 ....
大丈夫かなあ
そうつぶやく君に
根拠なく言う 大丈夫だよ
心でつなぐ手の二人は
裸で歩いていた冬の光りの中を
反対側のホームの手前で
そっと切り離す私の
カラダから抜け出させたカ ....
おぼえていられないのは
なぜだろうねえ
花をつみながら
そう言ったひと
なぜだろうねえ
そう言いながらも
ずっと一緒にいる
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