雨の向こうにも
空がある
きっと青くて
鳥が羽ばたいているに違いない
雨の向こうにも
森がある
きっとさわやかに
風が吹いているに違いない
雨の向こうにも
星がある
きっと ....
詩の中の君は
君でなくてもいいんだ
彼であっても
彼女であっても
そう
私であってもいいんだ
詩の中の君は
君の気持ちを考えなくても
彼の気持ちであったり
彼女の気持ちでもあった ....
海からやってきたその風は
夏を通り抜けてゆく
海辺の松林をさっと過ぎ
細い坂道を力強く上ってゆく
木造立ての駅が見える
自動販売機で飲み物を買う人に
あいさつをする
言葉は出せないけれど ....
目の前はすべて
煙に覆われていた
幾層も掻き分けた向こうに
握った拳を突き上げた人影が
腕を下ろすとこちらへ歩いて
すうっ と
わたしの内側に入った
*
....
長い間
「 わたしなんて・・・ 」
と{ルビ俯=うつむ}く影を
地に伸ばしていた
ある晴れた日
緑の{ルビ掌=てのひら}をいっせいに振る
背の高いポプラ並木の道で
ふと ....
ふと車を走らせて
海の見える道路で
車を停車させる
ある晴れた休日の昼下がり
静かに広がる風景よりも
近くにこんなところもあるのかと
そんな発見の方が新しい
風は冷たく強かった
....
初夏の光が交差する
花と蝶とが見つめあい
互いを助け
互いの生を大きくさせる
初夏の光が交差する
空と海とが向かいあい
互いを求め
互いの存在を尊ぶ
初夏の光が交差する
人と ....
静かな静かな夕暮れに
光の翼が舞い降りる
晴れた日の夕暮れにしか
現れないその翼は
大きなビルをいくつも
すっぽりと翼の中に入れてゆく
やがて翼は
だんだん小さくなってゆき
夜の中へと ....
大きな葉の下から
そっと空を見上げると
とても薄い緑色が輝いている
そろそろ夏が生まれる
風が吹くと
きららとした緑色は
暗くなるけれど
遠くで流れている川の水のように
他の場所で光り ....
この道をまっすぐに行くと
昔、昔の思い出が眠っている
一歩一歩と歩き始めた少女一人
未だにメリーゴーランドの夢に乗り、回されている少女
季節はもう春になってしばらくたつはずが
メリーゴー ....
杉の林に静ひとつ
靄の立ち込める朝
靄に紛れて時間が漂う
暗闇から聞こえる森の声
林は何を考えている
杉の林に静ひとつ
緑の湿地に隠された
緑の夢と宝物
眠りから覚めた林の向こう
....
わたしは今
ここにいるようで
どこにもいない
どこかに属しているけれど
それは名前だけで
その中にわたしはいない
わたしはわたしの居場所を
わたしが探さなければ
わたしにはなれない ....
最初に雨を見たのは
ぼくだった
みんなはそのとき知らなかった
窓に一筋の雫が流れて
静かに落ちていったのを
最初に雨を見たのは
ぼくだった
風はなかったのかもしれない
ただ水が ....
その夢は終着駅から始まる
分厚い切符を駅員に渡し
改札を出ると
そこから終わりのない物語の
第一章がある
駅前広場から
右の道を上れば山があり
左の道を下れば海に着く
今は左の道に菜の ....
春の海はやわらかい
海と空との
地平線は線ではなく
ぼんやりとしている
春の空はやさしい
山と空との
地平線は線ではなく
崩れた帯のよう
近くで波の音がする
何度も繰り返すも ....
空が揺れている
だから
風が吹いている
その風はとても暖かい
どこまでも翔けて行けそうだ
空が揺れている
だから
心が浮いている
その心はとても明るい
どこまでも飛んで行けそうだ ....
春を作ろう
土しかない心の中に
春を作ろう
伸び始めた草を
小枝の先に開き始めた葉を
かわいい小さな花を
入れてみよう
ほら
もう蝶が飛んでいる
春を作ろう
土しかない心の ....
木の葉が開き始める頃
言葉も広がり始めます
光が当たるように
大きく伸びてゆきます
そっと行ってごらん
風が葉を揺らし
言葉が鳴っています
木の葉が開き始める頃
心も広がり始めます ....
人は時を渡り行く渡り鳥
出会いと別れを繰り返して
寂しくなんかないと
頬をつたうのは涙か雨粒か
風にかき消された言葉
微かに耳に届いた
空が咲いています
ふわふわ咲いています
何もかも時が止まったように
やわらかく咲いています
山が沈んでいます
その中を鳥が泳いでいます
人が逆さまになって
咲いている空を見ながら
手を ....
「一人前」という人が
どんな人なのか
今でもわからないけれど
多分自分はそうではないだろう
世の中からすれば
自分はきっと
立派には生きていないだろう
お金になるようなことに
とても不 ....
言葉には翼があるのです
人の心の中を翔け抜けてゆく
翼をもっているのです
言葉によって
その飛び方もまちまちで
小鳥のように
翼をせわしく羽ばたかせるもの
大きな鳥のように
空高く翼を ....
1999/10/05
襟元にひんやり秋風
まことに女ごころと秋の空
どこにも花なんか咲いてない
父母の供養に野の花を
野川の河原に来てみたが
あたりはすっかり ....
人はみな誰でも
いつも夢を抱えている
その夢が見えなくなった時
空を見上げれば
忘れた夢が浮かんでいる
何でもなかった白い雲が
何かの形に見えるでしょう
人はみな誰でも
いつも ....
捻れて
ひねくれて、
螺旋を描いた それは
縦に縦に伸びて
真っ直ぐになった
本当は
最初から最後まで
真っ直ぐなものなんて
ないんだよ、と
諭すように
....
約束の時間になっても
あまがえるは姿を現さなかった
もうすぐぽつぽつと青苗が植えられる水田は
今日の雨を十分に吸収して
ちょっとした池の様だ
ゲコゲコ
申し訳なさそ ....
春が吹いてくる
強い風だ
今は春だぞと
言っているようだ
どこまで吹いてゆくのだろう
林が揺れている
鳥はどこにいるのだろう
蝶はどこにも見当たらない
春の声が大きすぎて
みんな黙り ....
あなたは今
風の色が見えますか
春の風の色は
すぐに変わってしまいます
でもいつもどこか光っています
ほら
白い花が光っている
青い空がつやつやしている
また色が変わっています
あな ....
めをひらき
みあげたそらの
青さにふと
あなたにあえないつらさをしる
君の手は空には届かない
当たり前だけど
けれども最初から
そう思っていたら
君は何もしない人になる
無理だとわかっていても
やってみるのもいいものだよ
ああやっぱりダメだったね
そ ....
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