夏休み
なんかいめかの
花火をする
お盆さえ
いっしょにいてやれなかった
贖罪を
火にくべる
はなやかな花火のあとに
さっきした
線香花火
....
一日の終わりを影の長さが教えてくれる
ため息捨てて家路を急げば
坂の上に君がいる
ねぇ君
ずっと一緒に居てくれないか
多くの物は望めないけど
君の寝息を数えていたい ....
鮮やか
鮮やか
眼も眩む青空に
吊るされた虹
くっきりと
痛いほど
焼き付けて
きつく瞑ると
眼の奥で
青が
けものみたいに
震えている
やさしみの
さかなが
しずかに
みなもをおよぐ
やわらかな
さざなみは
しあわせなきおくを
みたそうとする
やきつくされたあさ
さいれんがなりひびく
しきはまた ....
夏がゆっくり 歩み
晩夏のうしお
ひたひたと
我が胸を濡らし
透明な羽根 輝き
つくつくぼうしは
夏の最終章を寂しげに歌い上げる
木々の圧倒的な緑の先に
秋の気配は
そよぐ風 ....
いつも掬おうとして
指の間からこぼれ落ちていく
はらり はらりと
そんなふうに
掬いそこなったものが
ゆるゆると
私たちをほどいて
別のものにしていってしまう
すべての灯が消えて
私は闇と静寂につつまれた
携帯電話のディスプレイだけが
取り残されたかのようにひかっている
それも数秒したら消えた
今度こそ私はひとりになった
....
空を展開図にして
組み立て直したら
あなたがいなくなった
もう一度
組み立て直したら
わたしがいなくなった
知らないだれかが
組み立て直したら
あなたはあらわれた
ふたり ....
寂しいと泣いた夜
あなたはゆっくり 笑った
大丈夫
空に帰ったんだ
また 会える
海じゃなくて空
聞き返したら
頷いたね
海は生まれて来るところだもの
....
優しいフリをしたあなたに
慰められたフリをした
このままそばにいてくれるフリをしたあなたに
大丈夫なフリをした
気を使うフリをしたあなたに
感謝するフリをした
部屋から出て ....
水を注いだグラスの中を
過去の思い出が通り過ぎてゆく
時には努力の思い出
汗を流している友の顔が
楕円に大きくなってゆく
大したことではなかったことが
大きな喜びだった
時には恋 ....
今夜眠れないのは
熱帯夜のせい
ううん違う
だってエアコンだってついてるし
たぶん
明日のデートのせい
パジャマになっても
明日着る服を
まだ選びかねてたりして
明日 ....
一杯の紅茶には 一杯だけの夢があった
一杯の紅茶ができるまで
たくさんの人の幸せが在った
一杯の紅茶には 一杯だけの悲しさがあった
一杯の紅茶が飲み干されるまで
悲しさが ....
雨が季節を変えていく
寒いほどの涼しさを携えて
降り続ける雨は
万物に等しく降り注ぎ
木や花は
久しぶりの雨を
むさぼるように
乾いた大地は
雨を吸って潤い
人々 ....
ソーダ水の泡
の ように
すばしっこく
立ち逃げる
夏を
この手に
捕まえようと
追いかけ
追いかけていたら
気が付くと
そこは
刺激のなくなった
ソーダ水
の ような
九 ....
ソーダ水の泡
かき氷の雫
スイカ割りの一撃
球児の白球
蝉の羽ばたき
入道雲の高さ
夕立の土砂降り
夕暮れの風
花火の瞬き
祭りの笛太鼓
線香の煙
風鈴の音
....
窓を開けると
渇いた夏の風が髪を浚い
安らぎの匂いがした
教室の窓側の席
君はいつも遠くの世界を見ていた
何も変わらない風景
一年を通して見れば違って見える
君はそう呟 ....
その時私が出した結論が
間違っているのか
それとも正しいのか
これほど悩む事になろうとは
今となっては
二人の歩む道が別々である事や
二人の望む時間の濃度に
....
涙が流れて色になる
どんなことであれ
何か一つのことができるまで
寒くて凍えそうになっても
暑くて動けなくなりかけても
泣くことを我慢して
ようやく成し遂げる
その時になって
自然 ....
生き方求めて旅に出て
遥か遠くへ身を運ぶ
景色風情に感ずるも
心の穴はふさがらず
彷徨い続け旅をする
場所から場所へ移る間に
夏の畑にただ一人
大汗落とす姿見て
ふと立ち止まるその ....
愛にカタチがないのはね
きっと カタチがあったら 壊れてしまうからなんだよ
灰色の空の下に、白い雲が現れた。
どんよりとした灰色の中に、
さわやかな白の色。
そのまま空を白に塗り替えて、
気持ちのいい青空つれてこい。
そう思ってみたけれど、多勢に無勢。
し ....
日暮れて 日暮れて
ひとりきり
だあれもいない畦道で
日暮れて 日暮れて
ひぐらしの
かなしい歌を聞いていた
かなかなかなかな
どこ行った
僕のおうちはどこかしら
道をな ....
夏の渓谷
そろりそろりと川の水へ
足を踏み入れる
心地よい冷たさが体の中へ
冷房の涼しさとは違う
透き通る水底には
兄弟なのか姉妹なのか
小魚が二匹泳いでる
夏の渓谷
どこから流 ....
スタンドの明かり一つ
扇風機の音が聞こえる部屋
木目の壁に映る
後ろ姿の影は
黙って首を振り続ける
明日
どんなに騒ぐ人がいようと
やる気の無い人がいようと
ぼくは ....
夏は自分に耐えられなくなって
自分の体がどろどろと溶け始めていた
青い空が溶けてゆく
白い雲が溶けてゆく
清らな川の音が溶けてゆく
都会の道路はぐにゃぐにゃに曲がって
信号機が次々と倒れて ....
今の自分が
まだ今の歳の半分だった頃
今の年齢の人が
とても偉大に見えた
あれから
自分の歳が二倍になって
今の歳になったけれど
こんなものかとふと思う
なぜだろう
今の自分 ....
日々の砂漠に
埋没された
わたしは一本の指
墓標のように立ちながら
指の腹にひろがる指紋は
いつからか
一つの瞳となり
遠くから荷物を背負い
こちらに向かって歩いて ....
わたしはわたしの
根深い業から
解き放たれよう
闇に咲き誇る{ルビ薔薇=ばら}よりも
道の{ルビ日向=ひなた}に飾らず咲いた
一輪のコスモスの前にしゃがもう
何も語らず ....
言葉が白くなる
その言葉はもともと
愛や夢だったのかもしれない
確かに今まであったものが
消えてゆく
忘却とともに
蓄積が始まってゆく
過去が現在へと結ばれる
言葉が白くなる
そ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26