道端に乗り捨てられたセダンの
埃の積もったボンネットに
おまえを押し倒して
やりたい
ここで
すぐそばを特急列車が走っていく
サンダーバード
轟音を上げて
飛ぶように
い ....
あたしは、
綿のスカートを翻して逃げる。
誰もいない、
....
1
真夜中ですら
ザラザラとした
大通りの
卑猥な笑いが裏返り
囁き合い
頷きを忘れるほどの
原始に出会う
骨が抜かれ始め
誰かが忘れていた悲鳴を
高々と上げる
町中 ....
腕を切ったら
赤い温かい血が流れて
ああ、こんなに温かいのに
体にあるときは気づかない
私は思って
そんな風に思って
湯船に世界地図のように広がる赤い水面に
行って ....
ねえ、
地下鉄の中の私の中の
柔らかい容器を満たすアルコールの中でゆらゆらする
ぬるい両生類みたいな内臓が既に私を憎むことを始めている
グヮ、グヮ、グヮ、そうだ ....
手紙を受け取った
封を切り
畳まれたわら半紙を開く
遠く隔たれた真夜中
何人もの死体を積み上げる
その羅列を殺すのだ
路上で横たわるネズミは
細菌という凶器と共に死んでいた
....
朝霧の蒸発してゆく速さに
子供たちは
緑色の鼻先をあつめて
ただしい季節を嗅ぎわける
くったり眠っている
お父さんのバルブを
こっそりひらいて
空色を注入する
うん、うんとうな ....
鬼がやってきて
かくれんぼをしようと言った
僕たちはちょうど
何をしようかと考えていたところなので
いいよ、いいよと
鬼に賛同した
鬼が百まで数えている間に
僕は境内の ....
思うところがあり木の節をじいーっと眺めていたら
目が節穴になってしまった
オロオロと手と足を同時に動かして慌てていると
青リンゴの香りのする見知らぬ誰かさんが
あっちのほうにその辺の事情に詳し ....
田舎暮らしに馴れきってしまい
地下街が怖くて僕は
東梅田のビルの隙間
歩道をとぼとぼ駅に向かう
汗がにじむのは
気温のせいじゃなく
コンクリートに染みついた
あの夏の影の照り返し
不快 ....
マーミー
悲しい詩を詠ってはいけない
高原に咲く白い花が
ときおりふくかすかな風にゆられて
りんと鳴るその音のように
僕たちが幸せについてささやきあうとき
高原からのびあがって
どこ ....
07/07/20
回転軸がぶれたので
ギャを外してひと休み
ささやく声は
きみのこと
ぼくのこと
いいえ地球の独り言
地震を起こして叱られた
疲れたと ....
一、蝉しぐれ
白い病の影がおりて
夏の命、際立つ
すり硝子の花瓶に
溢れていたはずの笑顔
シーツに残された
僅かな起伏は
生きていた
あなたの
散らばった
レモン色 ....
「別れませう」とペリカンは言った
「別れてほしいの」
ペリカンは左を向き、片目で私を凝視する
潤んだ黒目が、一瞬灰色に濁る
写真を撮ったのだ
下のくちばしの袋が震へる
袋の中は、たっぷりの ....
頭のずっとてっぺんから
かなたまでつつみこむようにはられた
透明なフィルムの外側を
音もなく星々がすべりおちてゆく
そのすきまに
かすかな灯りがひとつ
はらばいになって停泊している
砂浜 ....
目
永遠に
閉じる日が来ても
耳は
絶対に閉じないでいて
わたしの声を
受け容れていて
肩越しに過ぎてゆく
景色の速さに
その
狂おしいほどの
純粋さでしがみついて
....
匂やかにすみれ花咲く
白い星を押し{ルビ抱=いだ}き
夜の{ルビ水面=みなも} さざめきだち
{ルビ朱=あけ}にめくれてゆくまで
スローガンその1
コンビニエンスであることこそが最大の美徳である
きみはサブリミナルファックなテレビジョンを爆破して
イマジネーションで洗脳するニュータイプ
Bボタン押しっぱなしで加速する ....
ある旅人は言いました
世界の果ては海だったと
もう一人の旅人は言いました
世界の果てにはただただ高い
山があったと
私は彼らに言いました
世界の果てには
一人の少女がいたと
....
苔むして 夏の日足に 映える石
放出された 夏の、
取り扱いをあやまった空から
束ねられた雨が落下する
世界はまだ、はっきりとした輪郭を持っていて
ぼくも きみも それを知らない
ウィリー、ウィリー、
なぎ倒さ ....
愛しい人が欲しいと思ったので
近所の画材屋さんから
たっぷりと粘土を買ってきました
しっかりとこねた粘土で
右足のつま先からペタペタと
粘土で型を作っていきました
下半 ....
こんな夜、
一人浅い夢から目覚めて
窓外を揺れる葉擦れのざわめきに
わずかに明るむ緩やかな月光に
胸に満ちて来る何ものか
心を澄ますと潮騒の響きに似て
耐えきれなくなる 抑えきれなくなる
....
帰る 帰るよ
と言って
やっとで戻ってきたのは
二羽のアゲハチョウ
母は泣き続けて
二日後に命が崩れた
幾百のコバエが家屋から飛び去り
雨戸は裂傷し
静脈血を纏った鳩が2羽
黒ず ....
どうせみんな
機械から生まれて
機械に繋がれて
死んでいく
ラヴ・マシーン
メキシコシティ生まれの農夫には
かえるところがない
八戸生まれの漁師には
かえるところがない ....
仕事を終え
パソコンを終了すると
そこには何も無かった
テラテラと光る黒い画面の中に
僕の顔がただ映ってた
三十歳を過ぎた僕がいた
白黒割り切れない僕がいた
....
私にはもうずっと
お母さんがいなかったので
育ててみることにしました
鉢を買って土の中にお母さんの種を植えて
毎日毎日水をやりました
お母さんは日々順調に育ってくれて
その ....
あなたを睨む
と
眼が痛む
守り隠すように
あなたは柔らかな腹部を下にして
その為に息苦しい眠りの上表には
あなたの背が波打っている
私は扇風機を止める
....
宇宙が
ほんとうにあるとして
その一番果てに
宇宙の端から端まである
途方もなく巨大な滝が
流れ落ちているとして
そんな
宇宙の果ての滝を想像しながら
いま
おれはカ ....
桜花を散らせ
次の季節が吹かせる
湿った風に
なびく美しさを隠したまま
洗い髪みたいに
君は濡れている
よこぎる鳥を数えるように
ひとつひとつ忘れていく
透明な霧の向こう、輪郭
....
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