すべてのおすすめ
てのひらに乗った 雪が
溶け出して、僕の
一部になってゆく
降り始めに気がついたのが
どちらだったか
もう忘れてしまった
雪は
これで最後かもしれない、と
最初に言ったのは君の ....
父がくれたブタさん貯金箱に
思い出を詰めていく
新しい家に
わたしの部屋はない
巣立つ準備を婉曲に促されて
寂しさの余白が
無愛想なブロック塀で隠されていく
その白色は
この手で汚 ....
街路樹に抱きついて愛情をほしがる
そうしておまえは湯豆腐が食べたいって言う
俺は冷奴が食べたい
おまえの肌のように白く冷たい
交差点がわめき散らしている
スピーカーつ ....
昨日までの鬱屈を
雨が洗い流したのか
カーテンを開けると
底抜けの空のあおさが
広がっていた
一週間の汚れを
一緒くたに
洗濯機にぶち込んで
ガラガラ回しながら
....
果して
愛は
枯れないだろうか
愛はいのちを生かす
愛はすべてに宿っている
愛は忘れ去られることはない
しかし果して
愛は
死なないだろうか?
木の葉が光をみつめている
....
走ることは
ほんのすこし
歩くより早いだけで
大地に触れる回数は
結局少なくなってしまう
走るということは
触れないということか
月はやっぱり見えなくなる
世界から消えようとす ....
針のあなに
糸をとおす
磨硝子からにじむ
光のあわい
しずけさ
のおくのほうから声がする
……わはわをたまわる)
柔軟にしなう
わたしの呼吸をなぞるのは
失われた かなしみ
....
僕はこれから逃げ出そうと思う
自分自身に宣告をし終えたら、
吐き出し損ねたその心臓を出し
これから二人蒸気船に乗ろう。
誰かの為の架け橋を潜り抜けて
涙がバイバイの形に成長したら
どう ....
1 髪を切らなかった日
失恋しても髪は切らないよ
と言ったあたしに
失恋したら髪を切るよ
とあなたは言った
手をつなぐことを覚え始めた
あの頃
そして
あなたが髪を切った時 ....
毎日、夕方になると世界が溶け出す。誰もがみなとっく
に気づいていることなのに、誰もそのことを口に出さな
い。(それは、おそろしいことだからだ。)たとえば、
あらゆる文体が溶け出して、誰が何を言っ ....
持っているの?
あなたに尋ねられて
思わず
持っているよ。そんなものと
答えてしまった
だけどね
ほんとはね
バッグのなかを
さんざ探しても見つからなかった
どこかで買えるのかな
....
たくさんの雨が
パンドラの筺の、その奥底から降ったような夜
咳が止まらなくて
眠れなくて
今朝方ツクシが顔を出し始めました
と、一筆箋に書き始める
生物表記には片仮名じゃないと落ち ....
地下鉄の風に吹かれて
灰色の階段を上がる
地上に出る前に
用を足そうと
便所にゆく
入口に
「 只今清掃中 〜そっと入ってください〜 」
という看板が立っており
....
いつか君の病気が治ったら
どこにでも行こう
そのときまでに俺は
いろんなところを見ておくから
いつか君の病気が治ったら
カンパイしよう
缶ビールでいいよ
もう薬はいらない ....
夜に開いた
隙間を
埋めるように
雨の旋律が
耳に届いて
孤独にいる者の
遊び相手と成りはしないだろうか
滴の奏でる音が
たった一人の為の
優しさとなって
降り注いで
あなたは雨 ....
闇の中で抱きしめる
体温だけを信じられるように
つまり、それはそう
あなたを想うだけで
私はどんな場所でも
世界の果てにすることができる
孤独は誰かを欲しいと感じる気圧
星だっていつ ....
胎児のような寝相も
遠い記憶のせいだとか
僕はひざを抱えて眠る
それが一番楽な姿勢なんだよ
間接がすっきりおさまって
頭からつま先までが一つになる
そう 一個の人間にな ....
陽射しが緩む毎日に
空が
ひとつ
忘れ物をしました
宇宙まで透き通る空は
あおい色を
キラキラ煌めかせて
風に総天然色の花を
ふりまいていても
コートの襟を
かき寄 ....
あれは確かマリリンが三歳の時
近所の大人や親せきたちは言った
「マリリンちゃんはほんとうにかわいいね」
マリリンは単純に嬉しかった
でも大人はみんな小さい子どもにはかわいいと言うのだと思ってい ....
八角形の小箱は
ブルーウォーターで満ちていて
覗き込めば
ぶちの鞠が回転している
それは
滑らかな哺乳類の群れだ
あるいは
みるく色の
貝類の
ひとかたまりに
溶けて
....
つないだ手を
そっ、と離して
春までの距離を
歩数で測っていた君は
三十一歩でくるり、と振り返って
僕に何かを伝えてきた
如月駅を走り出した始発列車が
僕を追い越して
君を ....
雨の記憶を憶えていない
私が はじめて雨に遭遇した時の 記憶
それはかすれて 雨の日の
窓ガラスの向こう側の風景のように
ぼんやりととおくなってしまっている
だが 思い出せば
いつでも ....
一年に一度の女の日!
何気ない一日を過ごす人も
何日も前から ドキドキしてる人も
色々だろうけど 神様が そっと背中を後押ししてくれるはず。
日ごろ言えない事 出来ないことも ....
ああごめんなさい
あたくしといたしましたことが
ひどくうろこむしてしまい
大変お見苦しゅうございましょう
うなじのあたりから
せなかまでがもう
ひどくうろこむしてしまい
はがしても、 ....
背中がまがっているよ
葉巻が落ちたよ
おじいちゃん
手を 貸すよ
おじいちゃん
買い物のビニール袋が
たくさんだよ
おばあちゃん
手を 貸すよ
おばあちゃん
....
画布一面に
描かれた椿の
色彩の深みは
凍えた空を思わせて
ひとすじの風にさえ
枝葉のさざめきが
聞こえてきそうであった
重なりあう緑葉の中に
たった一輪きりでも
咲き誇る花は
見 ....
道の先をいつしか
岬と呼ぶのでしょうと
白い幾万もの手が
砕けては戻っていく
届かない場所に
北端という称号を与えて
みんな満足して
羅針盤の声を人は夢に見るのです
根無 ....
南アメリカの移民たちが
今日も公園のベンチにだらだら集まり
俺は隣のベンチで
空を見ている
ぽっちゃり太った女たちと
小柄だが生活を支えてゆく肩を持つ男たち
幼いのに遠い目 ....
伊勢の南島町
漁師の友達の両親
おばさんは嫁いでから
一度も休みがない
その息子 親友 純 日本人 世界中を回って
ハワイにたどり着いた波乗り くらげに襲われて
....
悲しくなって遠吠えすると
風に乗って
色んな場所から返事を貰った
風が生まれるならそれは掌からだ
水面に翳すと波紋が囁き
耳を澄ませばラピスラズリが唄う
冷たい指先で声を拾って
廃 ....
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