すべてのおすすめ
お店を出してくれたあの人は
やさしいひとでいい男だけど
私の好きな人じゃない
5年もごまかしてきたけれど
もう、避けられないみたい
貴女はそういうと
二人きりになった店の灯りを落と ....
怒ったあなたの瞳に光るもの
稲妻だったらすごい
それはどんなにかすごい
刃のように空を閃かせて
雨に濡れ
雨に驚く人々の顔をくっきりと切り取る
それほどの鋭さで
稲妻 ....
どこへ続くかなんて知らない
と
呟きながら
レールを敷き詰める私
そのレールを通るのは
私ではなく
どこかの
誰か
私の役目は
それを眺めて
続きの途絶えを防ぐこと ....
休憩室の扉を開くと
左右の靴のつま先が
{ルビ逆=さか}さに置かれていた
ほんのささいなことで
誰かとすれ違ってしまいそうで
思わず僕は身をかがめ
左右の靴を手にとって ....
ときには
顔を真っ赤にしながら
たくさんの風船を膨らませてきました
割れたものも
木の枝から離れなかったものも
見知らぬ空や海の彼方へと流れたままの
ものもあります
が
それは ....
はじまりは
突然ではなくて
地面に染み込んでいく
雨の速さに似ている
背後に潜む
稲妻と雷鳴の予感
と、その準備に追われる頃
夏の気配はすでに
私の踵を浮かせ始めていた
色濃 ....
レモングラスの川べりから
青い星座を辿ってきたのですね
稲妻をたたえた雲は
あと少しで追いつくでしょう
細いボトルには少しのお酒が残っていて
薔薇の庭にぐるりと張り巡らされた柵
....
おのれの呼吸が
一つの音であるということ
それは
あまりにも気づき難くて
ともすれば
日々の暮らしの意味さえも忘れてしまう
月の満ち欠けは
暦の通りに
全く正しく空に映るの ....
机の上に三冊の本を並べる。
一冊目を開くとそこは、
林の中の結核療養所。
若いふたりは窓辺に佇み、
夜闇に舞う粉雪をみつめていた。
二冊目の本を開くとそこは、
森の中のらい ....
電車の中で、野菜ジュースを飲み終えて
空になったペットボトルを、足元に置いた。
駅に着いて、立ち上がると
すっかり忘れていたペットボトルを蹴飛ばして、
灰色の床をからから転がった。
....
失恋科に行きました
片想い病棟でした
おんなの先生でした
症状をかきました
くちをあ〜んとあけました
むねをとんとんとたたきました
注射してください、と頼んだら
その必要はありません、と ....
夏子お〜
なに〜い
kiss されたあ
秋男にかあ
うん。
ディープ
よかったやん
よくないわあ
ファースト kiss やたのに〜い
それだけ
想いが 深いって こ ....
遥か悠久の昔、空と海と陸がまだ混沌としていた頃
全ての命は気ままに泳いで飛んで
果てもない混沌を駆け回るのは楽しかった
亀はいつの時代も競争に駆り出される性分なのか
ある時、亀と鯨が
....
あれ、
この花火どうしたの
おかあさん もらったの
今日はけんちゃんの命日だからね
買ってきてもらったんです
こんな暑い日だったの
戦死公報に載ってただけ
亡くなった ....
一.
戦争を俺は知らないんだと はじめて思い知ったのは
キプロス島に ある朝突然逃げ帰った妻が いつか話した
占領の話 地下室の話 息を殺して
あいつが真似た マシンガンの ....
せっくすの意味を知ったのは、
煙草を覚えた日だった。
せっくすの女が吸っていたのを、
もらってはじめて吸った。
だけどはじめてせっくすしたのは、
その日じゃな ....
空が大きいこの町で
小さな命が生きている
一つ一つは小さいけれど
空に負けないくらい純粋で
大きな意味を持っている
空が大きいこの町で
小さな命が笑っている
一つ一つは小さいけれど
....
わたしが生まれ育った郷里では
要らぬものを裏山に投げた
村外れを流れる川に流した
囀る野鳥の気配に誘われて
ひとり裏山を彷徨えば
要らぬものは朽ちて土となり
夕餉の支度でも始めたのか
潜 ....
教えてほしい
あの空の青みの
ほんの隙間の翳りの中に
何を見いだし詠うというのか
たおやかに流れる川の
水底に沈む
ひとかけらの悪意を
掬って頬張った
その後の嗚 ....
黄昏が
哀しみの手をひいて
波打ち際へと運ぶ
きらきらと
波間に揺れるものを
幾度つかまえようと
泡と消えていくそれは
知るはずのない「永遠」
時計の針を止めても
季節は巡り ....
夜になってから急に
庭の倉庫に首を突っ込み
懐かしい教科書を次から次へと処分して
家の中に戻ったら
腕中足中蚊に刺されていた
それを見た母ちゃんは、言った。
「あんたはつよ ....
私 帰るから
駐車場で 車に荷物を入れている 夫に
私は 口走っていた
何か言ったか とふり返った時
もう 走りだしていた
このまま 新居になんか行きたくない
結婚なんてしなけ ....
そうしていつも、一つの愛は
踏み{ルビ潰=つぶ}された駄菓子のように
粉々に砕けゆくのであった
そうしていつも、一人の{ルビ女=ひと}は
林道を吹き過ぎる風のように
{ルビ昨日=かこ ....
改札を抜けるように明日が来るのです
明日が毎日、未来であると信じるひとたちが
道端にこぼれてこびりついたジュースまみれの
自分の影を踏んでいるのです
カタチあるものだけに価値があるかの ....
僕には、
{ルビ鈴香=すずか}、{ルビ京香=きょうか}、{ルビ由香=ゆか}の三姉妹がいました
{ルビ次郎=じろう}君は彼女たちと一緒に暮らしていました
彼女たちにはそれぞれ次郎君の子供がいて
....
きれいな若者たちが
無惨な船首に触れるとき
潮騒は
永遠の座を退こうとする
これまでもこれからも
財宝は
何一つ約束を交わさない
けれどもそれは
語り継がれず
求めるこころの ....
語らう小鳥の 囁きも
野を渡り疲れた 風の旅行着も
みんなみんな小綺麗に 仕舞い込まれています
雨の衣服のポケットに
消えた森、そのものが すっかりと
畳み込まれているのです
だから ....
眠る肢体の硝子の呼吸に
空の落下を錯覚する
心音の宙に浮いてきそうな静けさに
めまいしてうつむく不意なかたちで
水性のからだへと溶けそうで
うわ言をもらすあなたの手に
ドライフラワーを一輪 ....
水が割れるのです
いま
指先の銀の引き潮に
水が
割れるのです
うなじを笑い去るものには
薄氷の影の匂い
たちこめてゆきます
たちこめてゆくの
です
紫色の ....
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
(なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して
僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91