すべてのおすすめ
めがねをかけて てぶくろつけて
髪はさらさらで ちょこっとだけ染まってて
肌は白くて うなじはきれいで
マフラーがよく似合って 頬は赤く染まって
「 おかえり 」だなんて
そんな ....
親父の趣味は小さな鉢植え
鉢の順番を並べ替えては
玄人じみたため息をついて
またはさみを入れる
たどり着けない完成に向かって
まず渋茶をすするのも
たどり着けない完成に向か ....
正月に日本酒を飲みながら詩を書いていたら
火曜日に詩を教えているキムからskymailがきた
「幹さんやばいっす、オレ犯罪犯しちゃいそうです」
『ちゃんと詳しく説明してミソ』
「ちんこ ....
人の多い交差点
一人佇む僕の影に
誰かがふと足を踏み入れる
それはまるで
心の中に入り込むように
さりげなくも図々しいもので
だからこそ思う事は
それが例えば誰かじゃなくて
僕の望む君 ....
封じ込めたい
想いだけでは
精製できない
透明な水結晶
純粋でない核 宇宙との狭間
命を拒む冷気 気圏 ....
空が飛んでいる
空が飛んでいるので全ての羽が浮上する
見つめることはいつだって透きとおる
見下ろせば ものの在りかはかなしい
重力の堆積が歴史で出来ているなら
ぼくらの言葉は足跡のように ....
彼らはその肉の産地が
わかっているようだったが
わかっていたんだなと
気付くまでに
俺は缶ビール一本を飲み干していた
俺の脳は密林育ち
どんな鳥もつまり
羽のあるデ・ジャブーにしか見 ....
その昔
刑場へ向かう道程で咎人はこの橋の上に立ち
己の最期の姿を川面に映したと云う
インチキな占い師に
「貴女の前世は罪人でした」
と 言われて以来占いはやめた
この善良な ....
内助の功には触手が動くけれど
オルレアンの乙女に思い入れは無い
王女でもない一介の農村の娘が
神の啓示を受けたことで
歴史を変える働きをしたのは
まぎれも無い事実 ....
北風の声が少しずつ
冷たさを増す12月
いつもと同じ帰り道
佇むように咲いていた
小さな体いっぱいに
陽射しを浴びてのんびりと
場所を間違え根を伸ばし
季節を忘れて咲い ....
悔いなんてなにもない
なんてどうでもいい嘘をついた
その部屋は冬の海のように
優しく揺れ続けている
雪に咲いたあの花の名前を
結局思い出せないままだった
君は時計とともに僕の部屋へ来て ....
これから明けていくというのに
どんな闇より深い
口笛が
聞こえる
とぎれがちになるのは
灯台が
瞬くから
そして波が
騒がしい
そう、音が
熱をともなって
肌を
突きぬ ....
玄関のドアを開くと
右手の壁に一枚の絵が{ルビ掛=か}かっていた
六十年前
I さんが新婚の頃に過ごした
緑の山に囲まれた海辺の村
二十年前
定年まであと一年を残して
急病で世を ....
十把一からげな速報を
薄型液晶で
まじまじと聞く
増築された
新聞に
にこやかな容疑者が
載っている
母は
やわらかな続報を
待ち望んで
スピーカーに耳を
あてる。
....
濡れるのは
おかまいなしで
傘はささない
足跡は
雨と一緒に
大地へと還る
雨が唇をふさぐから
言葉にしたいことも
足元へ、足先から
行き先は
忘れてしまえるかしら
....
いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
何をもって真実と
何をもって虚偽と
その話は本当で、
あの話は嘘で、
一つの出来事は
風船に書いた絵のように
膨らめば、その姿を変えるから
大切なのは嘘を見破る事じゃなく
....
よろよろと海岸線を歩いていると
月が見えた
タバコの煙が風に乗って流れた
ああ俺は
照らす光におびえながら立っている
それから海に向かって眼をやった
錆びた商店街が背中にあった
波は ....
短い冬が終わりを告げる頃
街並みの全てが水平となり
凍り損ねた思い出たちが
空気の底に溜まります
両手を器としてそれらをすくい
私の体温を少々与えてから飲み干すと
薄氷色の街並みが
私の ....
きみと、
あなたと、
いればいい。
外と世界も、
内に秘めた心も、
いらない。
目を閉じろ。
脱ぎ捨てて、
裸になれ。
....
ひどく壊れた
{ルビ短笛=ピッコロ}の夜
胸の隙間にしみこんで
かたく凍った涙が
この身を裂く音
修行者のように
振り仰いだまま
静寂に刻む
生きたまま
この身を裂く音
....
22歳の誕生日から3日経ち
私は生理になった
さあ、とお腹の中の月時計が私に言う
いつか生まれてくる赤ちゃんのために
お布団を新しいのにかえましょうね
初潮を迎えてから
ち ....
あの人の
名前を呼びたくなったなら
音にはせずに
水に書くよ
岩に刻まず
砂に描かず
水に書くよ
すぐに流れて
この世から
思いは水底に
叫びは水面に
波紋は ....
ふたりは出会う
雛連れの野鴨憩う山郷の水面は茜に染まり
ほら手をつなご
これから暫くふたりして
同じ水脈を流れ行くのだから
ふたりのささ舟は
透き通る冬の気象 ....
冷えた夜が
低地を這っている
これもまたもうひとつの
忘れられた夜であろうか
――あの人は
貴重な生を召し上がりました
何ひとつ 言い残すことはなく
混沌の角度で経験は薄まってゆく
....
ずるやすみの木で
かみさまを見かけた
なにをしているんですかとたずねたら
ずるやすみをしているのさとこたえた
ぼくも人のことは言えないから
ああそうですかと
おおきな幹にせなかをよりか ....
悔しいときにこぶしを握るのは
相手を殴ろうとか
この手をどうにかしてやろうとか
そういうのじゃなく
目に見えない旗を両手でしっかり
ふたつ
握ろうとしているから。
ま ....
一
昼休みの男子休憩室の扉を開くと
新婚三ヶ月のM君の後ろ姿は正座して
愛妻弁当を黙々と食べていた
「 おいしいかい?
結婚してみて、どうよ・・・? 」
と買ってきたコンビ ....
{引用=赤い木の実の瞳から
流れる涙は止まりませんでした}
身体の悪い妹に
この冬はどうにも寒すぎて
コンコン、コンコンと
咳を繰り返すたびに
雪が降り積もります
それでも妹 ....
舞い上がったタンポポの綿毛が
振り返って見下ろした風景
歩道で蝉の抜け殻を
知らず踏みつぶしたときの音
そんなふうに目覚める朝
新しい自分が
古い骸に驚いたり
影よりも陰 ....
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