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私はあなたから生まれたというのに
もうそんなことを忘れてしまって
自分だけの死を抱きしめていた
まるで沈むために港を離れた
あのポンコツな捕鯨船
たった一つの獲物を射るための{ルビ銛=もり} ....
「おばあちゃん元気にしていた?」
わたしの大好きなおばあちゃん
共稼ぎの両親はいつも家にいなくて
学校から走って家に帰ると
おばあちゃんが出迎えてくれて
手作りのおやつがとても美味しかった
....
さてさて、陽射しをたっぷりと浴びて
顎が外れちゃいそうな程の大あくびを一つして
やっと、あの満腹なオオカミ君が起き出してきました。
おや、萌え出ずる若葉の頃は灰色だった毛並みも
日光浴、は ....
夏を迎えた空に
片方から太陽の手が伸びていく
時々、雲をつかまえながら
よりコントラストが強くなった正午
ヘッドフォンの小さな隙間から
あなたの歌声がはみだしたような気がした
6年も前 ....
「幸福」を鞄に入れて、旅に出よう。
昔日、背の高い杉木立の間を
見果てぬ明日へとまっすぐ伸びる
石畳の道
君と歩いたあの日のように
( 舞い踊る、白い蝶々を傍らに。
....
日暮里駅から
山手線に乗り換えて
十二番のトコに来る
各駅停車の
でんしゃに乗れば
四、五駅で
過去の
自分に
会いに行ける。
ぴーひゃらった
とんととんとん
....
緩やかに影を退く。
垂直に流れ落ちる彼は、
嫉妬深く、
それを許さない。
磔にする。
彼は強く抱き締め、
絶え間なく貫き、
すべてを磔にする。
....
海沿いの盆地にみちた
湿気と体温と上昇気流の
かたち、あの夏の雲
想いだけが熱いから
激しくゆらめくように
それでも
倒れるわけにはいかないから
ひとしきりの雨を
足跡にするのでしょう ....
アシカの着ぐるみは、
足から着なさい。
と、
園長先生がいいます。
だけど、
そういう園長先生の、
背中のチャックは半開きで、
中からクマの毛がはみ出 ....
お帰りですか、と
聞くとその{ルビ女=ひと}は
ええ、と
小さく頷いて
穏やかな微笑をうかべた
鬱蒼と茂る緑葉の下で
木洩れ日が描くまだら模様が
白い肌をよけいに引き立たせ
蝉しぐ ....
鯨の顔して蝉が鳴く
今日はよいお日和と
声を限りに叫んでる
みんみんみんみん
つくつくほーしの
師団長
セミクジラを欲しがって
みんみんみんと
真似をする
つくつくほうしの
師 ....
蒼く枯れるまで傍にいて下さい
たなびく煙に ほそめるひとみは
可憐な強さを{ルビ匿=かくま}って
夜風に つめは うるおいながら
{ルビ狡猾=こうかつ}な よわさに長けてゆきます
そ ....
ぼくは、
よいこなので、
うんこです。
とってもよいこなので、
とってもうんこです。
うんでくれたかあさんも、
そういってぼくを、
たびにながしました ....
お、そ、ら
もよん
もよん
{引用=
鳥は空を彫る彫刻刀
うつ ....
ワープ航法が確立され
テラから宇宙探検にこぞって飛び出し
地球歴16世紀に始まった大航海時代で
世界が縮まったように収縮を始めた宇宙
銀河建国2198年の今
宇宙旅行のトレンドも52 ....
飛ばない鳥がいたとして
飛べない鳥はいないでしょう
それとも
逆の語りの方がお肌に合いますか
ひとつ許せば
色は濃く
ひとつ拒めば
尚更に濃く
それが
青というものです
さきほ ....
わたしがサミーラと知り合ったのは
見知らぬ国への好奇心と
ちょっとした向学心
辞書を引き引き書いた拙い手紙を
赤と青の縁飾りも可愛い封筒に入れて
生まれてはじめての海外文通
切手一枚でつな ....
わたしは
夏を追いかけて
川辺に花火を見に来たはずなのに
自分を満たしに来た事に気づいた
{引用=
父は昔
子供と出かけるより
自分のお店で働く事に熱心だった。
うちの ....
封を切った宇宙からは、
懐かしい薫りがしました。
お久しぶりです。
と、
挨拶をして、
あなたを二匙。
ゆっくり沸かし、
ふんわり注ぎます。
....
腹に響くエイサーの
どごん どごん
飛び跳ねる常夏リズム
どどごん、かつ、かつ
手踊りが咲き
歯は白く輝き
乾いた{ルビ三線=さんしん}の{ルビ音=ね}が走り出す
空を切り裂く指 ....
押入れの中で目覚めると
いつものように優しくなってる
手も足もおもいっきり伸ばして
指先の細かい部品までもが
思いやりに溢れている
感謝の言葉は誰に対しても
正確に発することができ ....
女はいつも災いをもたらす
憂いを含んだ微笑みで
鏡に向かい髪を梳く
後ろ姿に見惚れてはいけない
鏡の中の女と
視線を合わせてはいけない
男はいつも災いをもたらす ....
四十二度
真夏の
山嶺をこえる日差し
積乱雲!積乱雲!
いつか焼かれるわたしは
真夏の
ひそかに揺れる
こかげの雑草
生きていくには
熱すぎる体温
....
梱包用のテープで作った 四角い篭
縦横に編んでいて 真ん中に持つところが
アーチ型に つけられてある
婦人会の集まりで作ったから ひとつ 持っていけ
母が実家に立ち寄った私に 機嫌よく く ....
私の部屋の金魚鉢には
金魚が一匹いる
金魚鉢を見ていたら
すうと引き込まれて
泳いでいた
涼しい青い水の中
緑の水草ゆうらゆら
赤い尻尾はひいらひら
たくさん泳いだら
す ....
いちばんふしあわせで
かなしい場所を知っているかい
それは穢れも痛みもない
世界だよとあなた
岩清水のようにうつくしく笑った
透明の
ほかには
なにもない世界
てりつく光が
....
最後の煙草は 空に昇るまでおあずけだった
何千本と 香の煙を浴びてから
あなたをおじいちゃんと呼んだことはなくて
先生と
呼んでいた
社長で先生
おなかが出てる
父さんと釣りをしなが ....
待合室には
女の子を連れた母親と
少し離れたところに
人の良さそうなおばあさんが
座っていた
熱のせいでボゥッとなった私の目も耳も
何も見ようとも聞こうともしていなかった
「お子 ....
あなた、アオウミガメの背中を
匂ったことはあって?
少女は
さして、答えを求めるふうでもなく
空と海の継ぎめを見つめたまま
潮風にふくらんだ髪を
そっと抑える
....
どうしても捨てられないものがある
幼い頃母に買って貰った運動靴
靴入れの奥に今も大切にしまってある
いつかあなたもシンデレラになるのかなと
七歳の誕生日に買ってくれた運動靴
そういえばこの季 ....
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