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宿命に、付き従おう
奴らと違う言葉の洪水
さも苦しげな木葉の{ルビ一群=ひとむれ}
秋、
情熱が去って
憂鬱がおとずれた。
灰色に淀んだ少年の目に、
おまえと、おまえ ....
眠っている、舟の
漕ぎだすその先の朝が、
眠っている
イメージが形になっていく、その
次の瞬間に
雲は切れ、空の裏側にはおそらく
比類なき明日が
ただ 立っている
としても、底 ....
山田くんから、年賀状が届く
終業式の日
みんなから 住所と、名前と、郵便番号を聞いて
国語のノートの 使っていないところに
せっせとメモをしていたんだけれど
多分 山田くんから、年賀 ....
朝早く
{ルビ風呂場=ふろば}にしゃがみ頭を洗っていると
電気に照らされたタイルに小さい光の{ルビ人形=ひとがた}が現れ
こちらへ手を差し出した
思わず光の手を握ると
タイルの裏側へする ....
初春のみずうみに映る景色を
刻々と塗り替えて
青かったり
赤かったりする
目一杯に膨らませた
君の頬を指先で弾けば
凍えた朝の軒先に
透き通った氷柱を見つけ
曖昧な気配の裾を払 ....
冬枯れの老木に
花を咲かせてやりたかった
とびきりの六花をこしらえて
枝という枝に舞い降りたのに
老木は身をふるわせて
あぁ、寒い
ゾクゾクするよ と呟いた
初恋に破 ....
昨日の高い 高い空から
ハッカの香りを感じた のです。
それは 甘くなく
気道から凍るような
冷たさだけ残して
昼には そっと
消えてしまったけれど
これから何度と無くやって ....
一月の風が
凍りつく 窓を叩く
眠りに至らぬ 冷たい夜半
明日出て行く この部屋を
片付けても 片付けても
きりがない
少女の玩具は 置いてゆこう
がらくたに 埋もれた
わたしの魂よ ....
私はとても小さいので
海を見れば
海でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
空を見れば
空でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
風を匂えば
風で ....
いつからか夢見ることを遠ざけたのは
それが大人になることだと教えられたからではなく
身近な現実を見つめれば
それが大人になることだったからでした
忘れ去られた銀河ステーション
....
蔓薔薇が石塔に深く絡まっていて
霧に浮かびあがり声をもらしている
清らかな
石塔には
老人の深遠な目でこう刻まれていた
?在る{ルビ可=べ}し?
霊園の霧は
空中に充足した空虚な ....
もう何年も前
遠い北国に{ルビ嫁=とつ}いだ姉が
新しい暮らしに疲れ{ルビ果=は}て
実家に帰っていた頃
日の射す窓辺に置かれた
白い植木鉢から緑の芽を出し
やがて赤い花を咲かせたシク ....
最高地点からの長い直線を下り
左にカーブを揺らすと
そこに短いプラットホームがある
僕らは降り立ったんだ
星の遠めがねと使い古した星座盤
重たくでっかいカメラと赤道儀
遠くばかり見るた ....
冷たい言葉を背からおろした
砂浜だった、長い一日の直線だった
大切なものと、てのひらにあるものは
遠い日でも暖かい
名前を思い出すよりもはやく
風のように流れていった
ふりかえるよ ....
旅人よ
君は何処へゆくのか
その靴がすり切れるほどに
過ぎ去った悲しみの日々は背後に遠のき
名もない無人の映画館のスクリーンに
モノクロームの情景は映し出される
「ひとりの ....
空は何も忘れはしない
それは始めから何も覚えていないからだと
古い本に書いてあった
それは確かに詩人の言葉だと
子供ながらに納得したことは
はっきりと覚えている
冬空にカイ ....
あなたといく年月過ごしてきたでしょう 歯車が合わなくなってきたけれど
お互いが お互いを想っている事だけは 変わらない。
あなたは 駄目だと思っている自分を私に 伝えるために嘘を付いた。
....
何も無いところで、
赤い、ランプ 点滅
吸い込まれたのは、
埃被った 夢でした
この部屋で生まれては
捨てられた、夢の一欠けでした
窓辺で囀る雀の夢も、堕ちました
死に遅れた蝉の ....
あても無く{ルビ彷徨=さまよ}う
芝生に伸びる私の黒影
丘の上に独り立つ
{ルビ只=ただ}
北風は{ルビ枯草=かれくさ}を揺らし
雲ひとつない空は澄みわたり
日の光の道を映す海は
....
冷たい北風に煽られ
凍える霙に打たれても
白樫の木は黙して耐え抜く
容赦ない吹雪の最中
総てを失う事の恐ろしさに
怯えてはならない
大地深く張り巡らした根の先より
明日への滋養を ....
氷の風が吹く夜は
星の瞬き蒼蒼と
淡く浮かんだ
あなたの表情を
交す言葉の
間に間に見つけ
愁い喜び泣き笑い
腕を伸ばして
頬に指さす
柔肌温み
伏せた睫毛に星あかり
鼓動の ....
黒雲にひそみ
激しく眩しく光るもの
音速を超えて空気を切り裂き
激しく低く轟くもの
決して海の中には
ひそまないもの
巨大なものを打ち消し合って
生み出すもの ....
いつのまに
我が胸に吹き込んできた
風の{ルビ女=ひと}よ
君が踏みつけられた花を見て
傘をさしたまま立ち尽くし
ひび割れた心のすき間をほの青く光らせ
雨音に{ルビ滲=にじ}む心を痛め ....
狭い檻の中に棲む
つがいの獣
明日を語らずに
今日を愚痴る
狭い檻の中で諍う
つがいの獣
嘲る口元には
朝餉の飯粒ふたつみつ
軋み合う魂より
産まれ出でし
いがみ合 ....
夕暮れ
曇っている
電車
走る
わいざつな銀河の中を
見えない草をかきわけて
走る
その中で
すれちがう
スレチガッテイク
わたし
わたしたち
生まれる手前から
死んだ後 ....
頬杖をついて
空ばかり見ていた
流れながら
形を変えてゆく雲とか
鳥が黒い点になって
吸い込まれてゆく姿とか
指先でペンを回す仕草を
無意識になんどもしていて
と ....
夕焼けに染まる
うしろ姿が焦れて
奇妙な鳥の羽が
手紙を星へ届けた
万年筆の青いインクでつらつらと
書かれた迷いのない筆跡で
時は重なっていて遠く定着している
斜陽は
雲にすじ ....
梯子が燃えるとき 時間は終わる
線を、引く
初めて泣いた日、
引き摺ったままの羊水で
始まる
一段 歩を進める度に
薄れていく
消しゴムで消せない、
それが条件
引き攣った跡 ....
振り解こうとしたその腕の力に
恐れ戦き
声にならぬ悲鳴を上げ
逃げ出そうにも逃げ出せず
生き抜く事は人の本懐であるとしても
手当たり次第しがみ付く執着心は
どうしてこうも醜いのか
....
時々
ドキドキ
疎外された気分に
なって
少し雲をみる
覆われるように
垂れこめている
少しの間包んでくれ
マフラーを巻きなおす
自分だけのページが出来た
生きている
言い切 ....
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