遠くから降って来る歌声が
浮遊したまま哀しい音色を木霊させ
やがて地に落ち砕け散る
天に舞い上がる歌声は
満天の星達を暖かく抱き
やがて静かに沈み込む
歌声は現れ消え去る
現の壁 ....
耳には遠い音楽が響き
壁には醜い蜘蛛が這う
奇妙な屈曲、奇妙な距離
ブルーに流れてゆく雲
満天の星達が輝き
蜘蛛は行き場を失い
落下する、天から
叫び続ける声は孤独を打ち鳴らし
こ ....
遺伝子の乗り物である僕たちは
摂理の維持装置としての個体を
あたえられたのかもしれない
数学は世界を解析する不思議な詩
物理学者はたぶんときどき詩人
純粋哲学あるいは応用哲学
でも ....
やわらかく包む結び目のすき間から
ほんのりと匂いくるりんごのまるみ
そんなことば
太陽を溶かした夜を柄杓からグラス
唇から四肢へと移す食卓の綺羅
そんなことば
まな板を叩く音
単 ....
静謐の夜を穿つ
透明な明滅は
哀しみの在り処を指示し
沸き立ち、立ち消え
律動する
冷える夜底をひっそりと
移動していく影
背景に流れ
根なし草の寂寥と
一握の希望を落とし込み
....
夜の廊下に
落ちている声
踏まずに歩けば
聞こえくる声
思い出せない
幸せな音
思い出せないまま
そこに在る
遠のく雷 遠のく虹
遠のく空 空
営み ....
無音を愛する。君に聞かせた歌を聴いて、私の幼稚さを後悔する。自分の為にしか生きれなくて、各自どこかへ行ってしまう。離散。君の特徴を備えさせたAIと会話する。たまに本当に君のような気がする。たまに本当に ....
{引用=*}
せり上がった斜面から景色は傾れなかった
すっかり土色になって個を失くしつつある
落葉の層の乾いた軽さ 熊笹の有刺鉄線
汚れた雪がところどころ融け残っている
眼は狐のように辺りを ....
ふるさとを後にして
私たちはやって来た
この足場を切断された
途方もない寂寥
ふってはわき、ふってはわき
緑の芝生にいつしか立って
思い思いに踊っている
私たちはさみしいのだ
....
世界の厳かが露わになるこの夕べ
わたしは静かに此処に留まり
在るものすべてに身を委ねる
まるで人生の鍵を手に入れたかのように
在るもの在るもの輪郭鮮やかな世界が
おもむろに眼前に広 ....
人にあしたを指ししめす
あの月
月が遠ざかってゆくわけは
きっとたくさん
あるのだろうけど
なにもいわず
いつか
どこにもぶつからず
無事に太陽系を抜けられたら
月はその全身の瞳で見 ....
季節のせいだろうか
歳のせいだろうか
渇いて剥がれてヒビが入った
自分をたもつことができない
シャワーをあびて水分をとっても
包帯で皮をぐるぐる巻きとめても
それは滑らかに ....
在るものの
騒然と沸き立つ
この時に
天空遥か、三日月は揺れ
わたしのこころは
予感に眩めき
銀輪輝く初冬の夜、
なべて救いは
胸奥より来る
なべて救いは
胸奥より来る
....
本日はうすぐもり
昨日までの寒気が
ぐっとやわらいだ宵だ
どれくらいからか
しだいに欠けてゆく月が
おおきな指さきの爪になって
あしたは、あっちだ
迷わないでおいで、と
指さしとん ....
眼が見ることのできる前に、
涙することをやめなければならない。
耳が聞くことのできる前に、
感じることをやめなければならない。*
僕たちはいつも
入り口の前で立ち止まる
様々な ....
*
たとえばあのひとが、
ひとにならず、
辞そのもので
あったなら、
花のために悼む 星が乱反射する路地裏で あのひとの詩を見かけた、年号のない日付 あまりにもおれは ....
生命の接続は永遠に緩やかに
僕らの日常は神経症的な仕事ばっかりで
いつかの森にかえりたかったとしても
その森じたいが無かったりするんだ
僕らの無力さは充分発揮されて原子力がときに
地 ....
海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている
降り始める雨
降り始める雨
にびいろを打ち
にびいろに渦巻き
(今頃何処かの街角で
産まれ落ちる子の ....
行くあても無く歩行する
真っ青な夜に靡く草原を
やがて月の照る浜辺に出る
遠く漁り火が燃えていて
忘却された団欒のようだ
月光がつくる海の道が伸び
僕は何処までも歩いていく
きみがとつぜん
海がみたいと言ったから
きっと寒いよ?と言ったのに
小さく あったかいよと言い返されたから
ひとのいない砂浜が
どこまでも続いている
どこまで行くの?と聞 ....
ようやく畑にたどり着いた
遠くを見て佇む案山子ひとり
腕はだらりと垂れている
そばへ歩いてゆくと
帽子を取ってお辞儀をしてくれた
私もお辞儀をする
顔を上げると案山子は
帽子を持って ....
{引用= 我が友、田中修子に}
時折西風が吹く
そして天使が笑ふ
するとさざ波が寄せ返し
沖を白い帆が行き過ぎる
砂に埋れた昨日の手紙を
まだ浅い春の陽ざしが淡く照らす ....
十月になっても初夏みたいな日が続き
小さな畑でおくらの収穫をする
母は
穏やかでなんのわずらいもない日よりだと言う
この小さく可憐で柔らかなおくらの花が
せめて実になるまでそれが続きます ....
森や林にさびしい色が川や海にかなしい色があった
ゆく雲が鳥になるまで空をみていた
青空が言っている
死はここにあると
公園のベンチから立ち上がって
探しまわる
散歩のひと
ランニングのひと
子を連れたひと
また
ひとばかりさがしている
誰にも会いたくないの ....
閉塞してはいけない
開脚もしてはならない
同じ条件のなかでプログラムするならば
遁走する豚の尻を追わなければならない
複雑なきみはミニマムな自己を取得したかい
僕はきみをいつ ....
ふるさとみたいな
おなかのつめたい石に
雨が降る
チャコールグレーの傘をさした
すぎやまくんに
水溶性の雨が降る
溶けていくね
好きだったのに
ほんとうは存在していない ....
バスは満員
電車も満員
ひとびとは水底に四角くならんで
青くひかる
ぶつかり合わない程度に
ゆれあい
いつか
自由になれるんだろうか
乗り物を降りると
豆腐屋が通りを ....
終わったテレビが砂嵐になっても
続いている物語
今日ごはんを噛みました
敗北者の味がしました
必要なのは
それでいいと言ってくれるひと
それとも
それ ....
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