塩と水と みじかい詩と
あとはすこし体温があれば
生きていける
たぶん
あなたがいなくても
時間という途方もない罪のなかで、許されるとしたら何があるだろう。たとえば夜、わたしは座って往来を聞いている。電車の行き交う音とサイレン、携帯電話にむかって笑う若いひとの声、風。時折虫が、(蝉だろう .... 女の子たちが夏休みをしている
いろんな陰のなかで
いろんな汗をかいたり
夕焼けが日ごとに赤くなるのに
あせったりして
わたしもかつて女の子だったけど
いつの間にかそれらは失われてしまっ ....
猫がならんで立っている
おまえはもう十六ではないのだよ、と
言ってくれるが
なんの救いにもならなかった
良いのかどうか
問いかける気持の裏がわで
浮かんでいるふたつのひざ小僧
がさがさで傷だらけでちいさくて口をつけたら割れそうだった

ママ
と言ったかどうかは
おぼえてない
言いたか ....
幸福は匙で掬ったアイスクリーム みつめていても溶けてしまう 宝籤はもうすぐ二歳になる。相変わらず尻尾の先をわずかに白く染めているかわいい黒犬。でも、もう自分の手足を持てあましたようなちぐはぐな動きは消えてしまった。暑い日、賢い番犬よろしくブロックのうえに身 .... 花はまだ
文字をしらない

文字をしらない花を抱いて
庭に二人ぶんの影を落とすと

わたしもまた、
文字をなくして
おそろしいくらいのすべてに
抱いてもらえます
青い本、カーテン、壁。
ゆで卵、液晶、ローラーコースター
交互にする指輪、遠い者同士の接吻
からだを折ると、すこし生きやすい。

思いだすのは、ちいさなこと
泣いたら泣いたぶんだけ体が ....
一対の鉄塔が
街をはさんで見つめあっている
(病気のような時間帯)

頭痛もちの少女が
おぼえたての寂しさを抱きしめて
影をうつした空へ飛びおちていく
そうだなあ。壊すなら街が良いね。とくべつ硬いやつ、と、言ったとき、あなたはもうわたしを愛さないと決めていた。美しいは残酷だから、わたしたちは生きていける。もうずいぶん長いこと言葉に身を埋めて、はっ .... 蒔いたことさえ忘れていた
種が芽吹いて花を過ぎ
実を結ぼうと閉じている
幸せになるために
いくつ名前を忘れれば良いのか
女であることを
忘れることよりは
影はたやすく溶けあって
昼間の声を裏切るけれど
なぜだろうか
あなたを抱くほど
くっきりとわたしが離れていく
うその家は
嘘でできている
三叉路が三つもある
うその家

みんなはそこで
笑ってもいいし
笑わなくてもいい
キリスト像を切り刻んでも良いし
仏壇で眠ってもいい

あなたには ....
(数字が壊れている)

夏で、いつもより心臓がゆっくりうごいている。
わたしたちは逃げてきた、盗んだものをぜんぶ
忘れるために。おもいのほか空気はおもたくて、
指が濁ってる。天井を塗る途 ....
みていたのは皮膚
あるいは瞳、うなじの汗
でもみえていたのは
世界

あかるい日
部屋のなかで視界をうしなうようなうす甘い幸福
雲ひとつない空のなかに
探したのは影

あの日あなた ....
ひと息ごとにこぼれるのをあつめて結いあげたのが
いまあなたの胸にひかっている涙です

気がつかなかった
愛がどれほどのものか
おわってみてようやく眺めることができた

一連を終えて
 ....
娘はまだわたしのようには言葉をもたない。けれど、言葉なしの接触はつねに限りなく真摯であって、そのことはわたしを何度も打ちのめす。そのときわたしは、わたしでしかなく、同時にわたしである必要はないのだ .... 絶対に汚れない脂がありますか?昨日わたしは夢を洗いました。重なる木箱と転校生の匂い。わたしはつねにわたしではありません。(過去ではそうだった)血のにおいに負けました、そのボールは満たされているんだ .... 与えられた絵具の
いちばん暗い所を指さして
言われたことが
愛でした

あんなにためらいなく混ざりあったから
すっかり忘れていたけれど
紫は
海と血で出来ている

ずい分時間が ....
あの坂は
登りきるとすぐに
すこしだけくだりになる

なんど嘘をついたろう
あの天辺で
幸福など
真実と同じように
絵空事だとおもっていた
髪がのびた頃
くちびるから味はすっかりきえて
してきたことも
なかったみたいになった

鉢植えがたおれた
カーテンがゆれた
足も渇いて
でも
こんな色をしていたか
暑い日は
とりわけやさしくなって
あなたがしてくれたように
わたしをみつけます

汗ばむ生えぎわに
しがみつく指さきに
世界はまだまだやさしくなって
わたしはきちんと
失っていく
年老いた椅子
かわいそうに
傾いで
奇妙な靴を履かされて

わたしたちがした
キスのようなもの
抱擁のようなもの
こみあげ続けた
愛情のようなもの

でも
最後まで溢れは ....
望み通り、雨は降りはじめ
びしょびしょの街で

ふたりは渇いて座っていた
気持は
どこかの窓辺にはりつけたまま

ふとった猫が
鳥に
見下ろされている
だが それは
扉から入ってくるとは限らない
ノックもしない

都会にもダイバーがたくさんいる
海べのようなプラットホームに
打ち寄せる通勤電車に

開けられた窓とか
流行のスナッ ....
みんなうたわなくなった
夜も 朝も 雨の日も
すっかりあかるくなった
鼠はいなくなった
もぐらはとっくに死にたえた
人びとは 健康であった

ギターもピアノも自動で鳴らされる
楽譜 ....
なんということもなく
また夏が来た
穴のあいた籠をしょって
わたしたちは
懲りずになんども出会ってしまう
水が跳ね落ちたさきで
またもう一度跳ねるように
だんだん
ちいさくなりなが ....
終わりみたいな
色をつくって
順番に
なめた

どんなふうに
言葉にできたかしら
それら
すべてを

失ったり
奪ったり
してきたことを
言葉にしてしまうのは
都合がよ ....
あなたまみれの体を
しみわたる夜に横たえる
行き場のないつぼみが
ひと粒ずつ
ひりひりと開いてしまいます
はるな(1849)
タイトル カテゴリ Point 日付
あとはすこし体温があれば自由詩614/8/21 21:28
穴は穴ごと穴のまま散文(批評 ...314/8/21 21:15
自由詩514/8/19 23:06
猫3自由詩414/8/10 10:27
ママ2自由詩414/8/10 10:23
アイスクリーム[group]短歌614/8/8 19:35
まなざしのこと[group]散文(批評 ...514/8/7 15:23
庭2自由詩614/8/3 23:05
やすらかな不安自由詩514/7/29 9:51
鉄塔自由詩814/7/27 15:42
さるすべり散文(批評 ...414/7/25 14:05
自由詩614/7/20 21:58
もえる影自由詩414/7/18 1:49
うそのいえ自由詩614/7/17 19:18
数字自由詩814/7/16 2:37
反転自由詩414/7/16 2:08
窓べ自由詩714/7/8 22:50
娘のこと[group]散文(批評 ...414/7/8 22:36
プラグ自由詩614/7/8 22:17
自由詩714/7/4 0:22
えそらごと自由詩114/7/4 0:13
髪がのびた頃自由詩614/7/2 16:40
暑い日自由詩614/7/2 16:34
自由詩414/6/28 15:04
びしょびしょの街自由詩214/6/28 10:30
ノック自由詩614/6/24 0:07
みんなうたわなくなった自由詩914/6/22 1:09
自由詩314/6/21 22:32
都合自由詩214/6/21 22:09
炎症自由詩314/6/14 6:37

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