好きにえらんだ器を塗って
まちは
いつも白絵具不足
わたしはわたしを傷つけるかわりに着飾っています
なにをそんなに
もともと予定のある命ではないし
分裂し続けるパズルのピース
はめて ....
そこだけ汚れたようなうす白い虹
びらびらと光る観覧車
遠くからかすかに水の匂い
得たものと失ったもの
欲しかったかどうかも もうわからないもの
ああふれたところから順に濁っていきます
....
ひかりの群れが 影を従えている
誰か にならずに生きていくのはしんどいでしょう
影のなかの 一点ひかりは しみのようで
よほど穏やかな気持でなければ
綺麗とは言えないのよ
書きおえてはじめて
それが詩だと気づくように
死んでしまってからやっと
恋だったとわかる
いつもおそくて
墓を掘るのも一人きり
でもいいや、
塩の塔はきれいで
鳴らせるのははみだし ....
いつのまに窓があいたのだろう
生きものみたいに絡まった衣服を
わたしのものと、
あなたのものに
分けるときにはじめて
からだが千切れるように感じました
夜が明けて 君はまだ死んでいた
うそだ、と言いたかったが
先に君が言った
冗談じゃないわ と
夜が明けていた
部屋に沈澱する匂い
壁にしみこんだ囁き
クリーニング屋に
シ ....
いつかもここへ座って空気を吸っていた
ななめに流れる道路、さかりをすぎたさるすべり
ひらかれた場所に座ってみわたせば
蒸発するいくつもの過去
ざらついた紙に他人の夢をうつすばかりで
自分の願望をみるひまがない
どんどん器用になるきみを
抱くことができなくなりそうだ
雨の降るように泣くんだから
嘘を言ってくれよ
その痣みた ....
どれだけ乱雑に穴をあけてもあなたが上手に枠をつくるので素敵な窓になってしまうのであった。わたしの体
あおむけにした手のひらは雨をうけても陽をうけてもなにかを掴むことをせず、笑ったり泣いたりするの ....
なめらかな時間のなかを
女がひとり
黙っている
場ちがいな寒さをたえながら
来るはずのない返事を望んでいる
皮のない果物のように
傷みやすい夢であった
塩と水と みじかい詩と
あとはすこし体温があれば
生きていける
たぶん
あなたがいなくても
時間という途方もない罪のなかで、許されるとしたら何があるだろう。たとえば夜、わたしは座って往来を聞いている。電車の行き交う音とサイレン、携帯電話にむかって笑う若いひとの声、風。時折虫が、(蝉だろう ....
女の子たちが夏休みをしている
いろんな陰のなかで
いろんな汗をかいたり
夕焼けが日ごとに赤くなるのに
あせったりして
わたしもかつて女の子だったけど
いつの間にかそれらは失われてしまっ ....
猫がならんで立っている
おまえはもう十六ではないのだよ、と
言ってくれるが
なんの救いにもならなかった
良いのかどうか
問いかける気持の裏がわで
浮かんでいるふたつのひざ小僧
がさがさで傷だらけでちいさくて口をつけたら割れそうだった
ママ
と言ったかどうかは
おぼえてない
言いたか ....
幸福は匙で掬ったアイスクリーム みつめていても溶けてしまう
宝籤はもうすぐ二歳になる。相変わらず尻尾の先をわずかに白く染めているかわいい黒犬。でも、もう自分の手足を持てあましたようなちぐはぐな動きは消えてしまった。暑い日、賢い番犬よろしくブロックのうえに身 ....
花はまだ
文字をしらない
文字をしらない花を抱いて
庭に二人ぶんの影を落とすと
わたしもまた、
文字をなくして
おそろしいくらいのすべてに
抱いてもらえます
青い本、カーテン、壁。
ゆで卵、液晶、ローラーコースター
交互にする指輪、遠い者同士の接吻
からだを折ると、すこし生きやすい。
思いだすのは、ちいさなこと
泣いたら泣いたぶんだけ体が ....
一対の鉄塔が
街をはさんで見つめあっている
(病気のような時間帯)
頭痛もちの少女が
おぼえたての寂しさを抱きしめて
影をうつした空へ飛びおちていく
そうだなあ。壊すなら街が良いね。とくべつ硬いやつ、と、言ったとき、あなたはもうわたしを愛さないと決めていた。美しいは残酷だから、わたしたちは生きていける。もうずいぶん長いこと言葉に身を埋めて、はっ ....
蒔いたことさえ忘れていた
種が芽吹いて花を過ぎ
実を結ぼうと閉じている
幸せになるために
いくつ名前を忘れれば良いのか
女であることを
忘れることよりは
影はたやすく溶けあって
昼間の声を裏切るけれど
なぜだろうか
あなたを抱くほど
くっきりとわたしが離れていく
うその家は
嘘でできている
三叉路が三つもある
うその家
みんなはそこで
笑ってもいいし
笑わなくてもいい
キリスト像を切り刻んでも良いし
仏壇で眠ってもいい
あなたには ....
(数字が壊れている)
夏で、いつもより心臓がゆっくりうごいている。
わたしたちは逃げてきた、盗んだものをぜんぶ
忘れるために。おもいのほか空気はおもたくて、
指が濁ってる。天井を塗る途 ....
みていたのは皮膚
あるいは瞳、うなじの汗
でもみえていたのは
世界
あかるい日
部屋のなかで視界をうしなうようなうす甘い幸福
雲ひとつない空のなかに
探したのは影
あの日あなた ....
ひと息ごとにこぼれるのをあつめて結いあげたのが
いまあなたの胸にひかっている涙です
気がつかなかった
愛がどれほどのものか
おわってみてようやく眺めることができた
一連を終えて
....
娘はまだわたしのようには言葉をもたない。けれど、言葉なしの接触はつねに限りなく真摯であって、そのことはわたしを何度も打ちのめす。そのときわたしは、わたしでしかなく、同時にわたしである必要はないのだ ....
絶対に汚れない脂がありますか?昨日わたしは夢を洗いました。重なる木箱と転校生の匂い。わたしはつねにわたしではありません。(過去ではそうだった)血のにおいに負けました、そのボールは満たされているんだ ....
与えられた絵具の
いちばん暗い所を指さして
言われたことが
愛でした
あんなにためらいなく混ざりあったから
すっかり忘れていたけれど
紫は
海と血で出来ている
ずい分時間が ....
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