二月のかげで
数が つめたい息を吐いている
冷凍されたトラックに
デコレーションケーキが詰められる
生きていなくてはいけないとぼんやり思う
その反対がわで
死んでいるべきだ が
....
またくよくよと絵の具を捏ねては黒くしているあなた
飛べないばかりか落ちていくこともできなくなったあなた
海だとか空だとか持ちだして悲しんでいる
いいよ いくらでも
このあいだふたりで行った ....
夜をむかえるのと
朝をむかえるのは
どうちがうだろう
うえになるのと
したになるのでは
愛するのと
愛されるのでは
生きてくというのと
死んでくというのは
どうちがうだろ ....
手際よくまるめられた種
忘れてしまう いくつもの名前
ヒニカケラレタ薬罐みたく
だんだん焦げて死ぬ
焼却炉 幼いころ 怖かったものの多くは
いまでもわたしを守ってくれる
暖房の効 ....
かんがえてみる
あなたの肉にうまった
あなたの背骨のこと
となりにいながら
月面のように遠い
わたしたちの午後
手を握る
頷き わらいあう
影をみつけて
光を逃がす
吸わな ....
2月が終れば3月がくるということを、無論ずっと知ってはいたけれども、たいていこのくらいの時期になるときゅうに理解してしまう。毎年、性懲りもなくだ。2月と3月のあいだには、いくつもの恋が横たわってい ....
あるのはわかっている
けれどみることができない
ちょうどすりガラスを挟んでいるように
いつかもこんなふうだった、と
ふりむいてみたところにもすりガラスがあって
なめらかなさびしさのな ....
ミサイルは
花のうえをとんで
どっかいった
あぶないから
線の内がわをあるこう
くるまが、ほらこわいよ
というと
花がはじめて
こわい
といった
ミサイルも
....
わたしは三角の底辺へ横たわって
(つまりそれはわたしに嘘をつくということですが)
遅くなってしまった理由について
(あるいはその意味について)
考えようとしている
(なぜなら)
扉 ....
坂の多いところに引っこしてきて二月になる。暖かすぎる冬にもようやく雪が降った。じきにみぞれに変わって重たくぬかるむ轍をばちゃばちゃ言わせるのが楽しいらしく、膝の下あたりまで濡らして娘があるいていく ....
朝にはりついた夜はかわいて
とかげみたいにちいさく息をしていた
バターひとかけら食べさせてやる
もうおそいのだ、 外は朝で
朝がきたからにはまた夜まで待たなければならないし
夜がきてしま ....
氷を抱いて熱へとびこむ
飛び込み台にかえるが落ちている
踏んでしまうのとゆう声が聞こえる
踏んでしまう、でもたぶん
さいごまで赤くならない実のなかにいっぱいにあるなんにもないたち
さか道を行って戻ってころがって恨みながらもバスには乗らない
ゆうぐれに柚子がいつぱい成っている
さむい朝
ベッドのうえで
あなたは眠っているのではなかった
あしたにも雪が降りそうな朝
似たようなことが
いくつもあった
雨の日や 風の日に
なまぬるく繋いだ体のなかで
あなた ....
朽ちたソファに鳥が座って
判子をまっている
ねむたい もう
立っていられない
鳥たちを 待たせたまま
ぐらぐらする頭をはずして
眠ってしまう わたしは 眠ってしまう
判子は
抽斗の ....
ねむってたら
枯れた実になって転がってた
拾われて
じぶんもとうとう
あつい釜のなかへ と
身がまえていたら
偉いのがきて
それは数には入らないよ
と言う
ぬるく ちいさいての ....
わたしは
あなたが削りとられていくというのに
二酸化炭素のういた水をのんでわらっている
この海はどこにも
繋がらない海です
生活に名前を縫いつけましょう
自殺者百万人
....
はぐるまがわずかずつ深くかみ合いながら回っている
つぎの夜か そのつぎの夜か あるいはこのつぎの春には
がしりと組み合ってうごけなくなるだろう
そうしてすべてのはぐるまが動かなくなってようや ....
くまたちは
みえない檻をもうひとつかさねて
頑丈な家をつくった
だれも帰らない家をつくった
わたしはさびしかった
それでこんなに長い歌をかいたのだ
蒸発してゆげになったあなたを食べてた
むかし桜の木のしたで一人で蝶の交尾をみてた
まんかいのユキヤナギ
雨の日は息をとめてすわってみる
すこしでもたくさん思い出せるように
自分のなに ....
私が昔
吐いて捨てた言葉に
躓いて転ぶ今の私を
腐った道が笑っている
はじめから途方に暮れていて
今では
どう感じれば良いのかもわからないのだ
しじゅう痛みのなかにいて思うのもむつかしい夜には、すきま風でもありがたい
手を離せばかんたんに瓶は割れてしまうが
手を離すのはかんたんではないのだ
いつかした夜のようにからだを集めて、
で ....
もういいじゃん
バッグが空
よごれてきたけど
樽も空
ついさっき出荷されたのたちが
残していった空気をぜんぶ肺に詰めて
それで忘れないってことにできたらどんなに素敵だろう
なんど ....
夢のなかでわたしたちは詩を書いている
できるだけすくない言葉ですむように
皿がいち枚しかないから
間違ったことは言いたくなかった
でもただしいことも正しく思えなかった
あなたは始める ....
車輪のないバスがとまっている
低い木のしたに
たぶんそこにあなたはいる
破れかけのシートに心地よさそうにまるまって
外は
こんなになってしまったというのに
さびしい、という言葉も知 ....
いつもなんか握ってる
石とか棒とか拳とか
それって子どものくせみたいで
一度風俗に勤めてみたが
最終的に
寿司屋に就職した
ここがいつもの世界なら
投げ入れた石は水底にしずんでいくし
まるい波紋も できるだろう
郵便ポストは1本あしで立ちつくしているし
ひとびとは
笑ったり泣いたりしている
さていまは
....
たぶんもうすぐあかりがきえる
世界中のあちこちで いや 世界中で
ひつじはもう眠っている
きりんもとうに休んでいる
あかりがきえる
あかりは消される
祈ると祈らざるに関わらず
あ ....
ふくらんだりしぼんだり、ななめったり乾いたり、まわったりこわれかけたり、いったりいかれたり、また冬がきたりして。庭の満天星赤くなったね、蜜柑の実成りながら腐ったり。黒い宝籤は毛並から冬支度、私の髪 ....
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