燃える 眠りのなかで
すうすうと 静かに
ひかっている あなたの
寝息をかぞえて
数えて 数えて
その数の
ひとつ ひとつが
ことりと胸に収まるたび
酸素が 血をゆく
心 ....
せまい壁と壁のあいだを行き来するボール、失速しながら遠のいていく。
そのようにして日々が行く、茂った葉も黄色く力尽きる。
もう二度と会わないと決めた人には簡単に遭遇してしまうのに、続けようとも ....
花の匂い まちの匂い 文の匂い
というものに
あこがれて 今でも
色色なものに なってみますが
わたしには今でも
秋の夕暮の忘れもの、
雨ざらしの古い花瓶、
それとも何も書かれて ....
語られた言葉のあとで浮きあがる 静寂 目線 寂しい体
ふれられてふれてなお泳ぐ肌 これより遠くに行けはしないね
ため息の重さで溢れる夜を抱き
わたしよ明日こそ私であれ
なにか言うときに
だれも傷つけないっていうのは
(ご存知でしょうが)結構難しいもんです
から、これからあなたは傷つきます。あなたもです
あなたも、あなたも、あなたも。いいですね?
( ....
ひどい気分で目を覚ますと、今日はもう終わっていて
どうしてかわからないまま靴を履き替える
さめた湯を浴びて 窓を開ける
今日はもう終わっていて
かといって明日も始まらず
室外機の唸り ....
長い長い光のすじを
たどる気持であるいていた
だれかが声をあげる
これはただの線だ
白く書かれた 一本の ただの
もう少しいけばわかる
別のだれかが言う
のろのろと足はうごいてい ....
いずれも夢のような日々を生活した
よい夢も、わるい夢も、正夢も
芳しい花も、熱い風も、つめたい雨も
さまざまな深さの傷も
重たくなり軽くなりする身体も
やって来ては去っていく
....
雨の日、唐突に、思い出すように、
ありもしないことを、
考えている、
そのとき、過去と未来は同義
水たまりを、世界だと思って
生きた
愛のなかを、海のように思って
干上がっていく ....
時間はもう
どこをさがしても全然なかった
暗やみと光を混ぜた夜、
テープで仕切られた自由
韻を踏むためだけにつくられた詩
の、
どこにも、なにもなかった
なにもなかった
そ ....
わたしたちの花がまだ眠っている早い早い午前、空が朝を始めようとしているところへ、ふいに思い出がやってくる。あの時わたしたち泳げないいるかだったよね、とか、くじいた足をおそろいのバンダナで包んだよね ....
冷やした部屋で
濡れた画面を見ている
夏の前日
みるつもりでいた夢
古い冷蔵庫、凍りかけたビール
物事の手前で
君が微笑んでいます
夏の前日
それは
訪れるはずのない ....
このまっすぐな夜の向こうに
蝶の朝がある
こまかな傷の大小に値札をつける
この波を営みと受け入れられず
はねのないものは歩き、
足のないものは泳ぎ、
背びれのないものは飛び、
....
仕事の日数を減らし、眠る時間を増やして、過ごしている。
朝に夕にお湯を沸かして飲んで、家でも仕事場でも花瓶を洗う。
花瓶はいつも清潔に保たねばならない。交わした約束を守らねばならないの ....
境目が淘汰されて
すべてはグラデーションになる
曖昧さは受け入れられ
器は広く広く浅くなる
明るくなりすぎた夜のように
影はぼんやりと甘く
この輪郭を脱ぐ術を
探している
....
風や街、ビル、文字、感情はあり、
選ばれたものと、選ばれていないものが
ひと筋の線で隔てられる今日、
たしかに時間も空間も存在し、
ざらざらと触れることさえ出来る
空の自動販売機、乾 ....
かたまりを割ってほぐしてねばついて大事みたいに半分こした
愛とか愛じゃないとかで争った夜ひとつのかたまりで寝た
緑をちぎって
すずしくわらってる
それなのに
きみの手は
熱いお菓子みたいな
においがする
なんにちも なんにちも
焦げついて
ただれるよ
降る やむ 咲く ちる
やって来て 去っていく
一日じゅう飽きもせず
寄せ返す波を数え
まばたきより多く
人を愛する
昇っては沈む
絶え間なく産まれては失われる
あらゆるものの ....
咲きこぼれそうな花びらをもちあげて
そっと水を遣る
眠たい 明け方に
僕ができることは あんまり多くない
迷い込んだ虫を外へ出してやる
今日に似合う歌を選ぶ
まだ眠る君の
は ....
世界のことなんて
次でいいよ
つよくなる夢と濡れてく体
寝そべって目をあけて思い出を忘れていく
いい感じに傾いた
記憶を引き剥がしてさ
錆びた鋏みたいな
つまんないものばかり目に ....
ともかく私たちは辿りつき列にならんだ
色水みたいなコーヒー 配られるチケット(権利と義務が 印刷されている)
視線は 端末に通知される
皮膚は薄くなる 誰にも触れなくなる そのことも忘れられ ....
言葉も体と同じなので、つかわないとこわばる。動かしかたがわからなくなる。
さいしょはねじを巻くように、ぎしぎしと動かす。だんだん関節が動くようになって、のびやかになる。ストレッチ。何でも試してみ ....
あちこちで花が咲いてしまった。もう少し待って欲しかった。
ま新しいランドセルを背負ったむすめは、昼にも夜にも、こわいと言うようになった。わたしは(どうしてそんな愚かなことをと思うけど)なにが?と ....
やさしい君が
手をひいて
あるかせてくれる
外を
そして
大丈夫
大丈夫だという
見て ほら
あの橋をわたろう
細いけれども
大丈夫
という
笑っている
でもわた ....
密林
と
書きかけて
窓を開ける
飢えた街路樹だらけの街に居て
ばかげた恋をした
簡単に血を流した
空が青いとは聞いていたが
青がどんなふうかはしらなかった
物事が自分の外側で起こっている。いつもだ。
春が来て行ってしまう、しかしそれも私の外側にある。
インターネットもセックスも季節もナッツ・ケーキもだ。
半月前に流産していることがわかった。これ ....
水平が
輪になって
迫ってくる
目を閉じて
開け方を忘れた
手のひらをかたく
握ったまま
抱かれにいく
目があかないので
誰にかは
わからない
高いところから
低いところへ、
広いほうへ
明かるいほうへ
夥しい言葉の群れが
かたまり
解れ、また 縺れ
しまいに
いちまいの 布のようになった
それを拾いあげ
....
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