殴り続けた傷口は紫色に膿んで
吐き捨てた唾には汚れた血が混じっていた
敵など居なかった
敵など居なかった、どこにも
おれはただひとりで挑んでいただけだった


アルコールランプのよう ....
ブックオフでうっかり見つけてしまったそのアルバムを購入したわけは
まさかあいつらがベスト盤を出すなんて、と困ったように笑ってた
懐かしい男のことを久しぶりに思い出したから
「こんなのパンクじ ....
漏電を思わせる低気圧の真夜中には生焼けの肉の臭いがする、一息に喉の奥に流し込んだハーパーのせいで身体はまるで蒸気オーブンのトレイの中でぶすぶすと少しずつ焦げ続けているみたいだ、ベルベッド・アンダー .... いつからかどこかからずっと聞こえている小さな悲鳴は僕のものなのかもしれないしあるいはまるで関係のない誰かのものかもしれない、ポータブル・ラジオがたまたまどこかの国の電波を拾ってしまうみたいに僕 .... 街路で踊るバレリーナの黒髪は長過ぎて、12tトレーラーの後輪に巻き込まれてしまう、悲鳴を上げる間もなく、踊りに陶酔したままの虚ろな表情で、のけぞるように飲み込まれたプリマドンナ、クルミの殻が割れる .... 色褪せたクリーム色の壁、不自然なほどにしんとした空気―わたしはたまにこの景色を病室のようだと感じることがある、でもここは病室ではなくて―まあ、そのことはあとで話すことにする…道に面した壁はすべ .... 細胞の中で狂気は水棲生物の卵のように増殖を続けて、そのせいでこめかみの内側は微妙な痛みを覚え続けている、尖った爪の先が終始引っかかっているみたいな痛み―軽い痛みだけれど忌々しい、そんな―俺はい .... アルフレッド・ヒッチコックの夕暮れのような空のなかで今日が竦み上がりながら死んでゆく、その悲鳴は、その悲鳴は…昨夜俺を悪夢から叩き出したその声とまるで同じで―なにを見ていたのか、なにを知っていたの .... 踏ん切りのつかない弱い雨は中空で折り返して黒雲へと戻って行った、とうに濡れる覚悟が出来ていた俺は拍子抜けを食らってゲーム・センターで結構な金を無駄にしてしまう、どこをどんな風に波立ててみたとこ .... 三二年前に閉鎖された農場の入口、丸太と有刺鉄線の簡素な門の前で、余所者の娘がぼんやりと空を見上げていた、マーゴ・ヘミングウェイみたいな髪型で、痩せぎすののっぽだった、ちょっと引くぐらいどぎつい .... 視界はぼんやりと霞んだままいつまで経ってもクリアにならなかった、水を浴びせても、指で拭ってみても―軽く叩いてみても。世界はなにか大事なことを誤魔化しながら慌てて暮れていこうと目論んでいるようだ .... リズムの残骸は、砂浜に沈んで、視覚障害者の見る幻覚みたいな朧げな輪郭だけが、晩夏の太陽のなかで揺らいでいた、それはジェファーソン・エアプレインの音楽を思い出させた、敢えて違うところで繋がれたパズル .... 僕らは、揺れているだろう
冷めた血を滴らせながら
僕らは揺れているだろう

なにも見えない世界や
なにも聞こえない世界
そんな世界のことを
恐れ、そしてどこかで憧れもしながら

 ....
乾いて荒れた
まぶたが開いて
かすれた小さな
産声が午前を揺らす
きみは何度目かの
救済と絶望のなかで
目に見える世界は
たしかなものではないと知る


クロー ....
時に覆い隠されたギヤマンが灰の底の火種のような声で歌をうたっているころ、脱皮した蛇の皮のような感情でジェニーは横たわっていた、道端で調子のいい男から買ったドラッグはひどいシロモノでトリップというよ ....  冴えない中年サラリーマンが、仕事帰りの屋台で誰に聞かせるともなく呟いている愚痴みたいな雨が、途切れることなく朝から降り続いた夏の夜だった。じめついた空気に我慢がならなくなって、眠るのを諦めて .... コンビニエンスストアの駐車場で鍵つきの車をかっぱらって、曇り空の下、国道を北方向へ二五時間休みなしに走り続けて辿り着いた先は、名もない樹海だった。バックシートを漁ってみると同乗者の荷物のなかに .... 熱帯夜、青褪めた路上で血を吐いた
のたうち回る放熱の過去
祭壇はニコチンと、それから
もう少しイルーガルな煙に煤けて
性急過ぎたエイトビート、カタルシスの
生真面目な断絶の残骸
摩天楼 ....
卓上時計の刻みは前時代的で芝居がかっていた、造り物のオウムはけたたましい声で鳴き、そこに生命が無いことを殊更に訴えた、もちろんそんなことはどうしようもないことだった、オウムにも、俺にも…梁のように .... 洞穴を突き抜ける風が立てるような轟音がずっと聞こえていた。日中ずっと度を超えた太陽に炙られ続けて乾ききった身体のせいかもしれない。あるいはもっと他のなにか、もっと根の深い―ウンザリするような原因が .... 脳髄を満たし、頭蓋骨をなぞるように流れ落ちる観念的な血液は、ジェルのような生温い感触を塗りつけながら、といってもはやこの肉体にはどんな未練もないというように潔く落ちて行った、それはいつか精も根 .... あなたがわたしにかなしい場面をなげつけるように
わたしは少数のともだちの手をとって
はるかなうつくしい景色につれてゆこう
靴底はピアノソナタの砂をふみ
風は弦楽四重奏のようにしずかに吹くだ ....
子供のころから若さが嫌いだった、気に入らないことがあるとグズグズと駄々をこねたり、癇癪を起したりするのが嫌いだった
子供のころから若さが嫌いだった、学生服をほんの少しやんちゃにアレンジした、中途 ....
擬音的な焦燥が砂のように散乱したフローリングの暗い色のグラデーションを誰かの
ダイイング・メッセージのように読みながら疲弊し続けた今夜の遺言を日付が変わる前に
脱ぎ捨てた衣類には今日という名の ....
夜の在りかたはきみを気にしなかった、ただ次第に濃度を増して、それから失くしていっただけだった、きみは寝床に横になってはいたが、まんじりともしなかった、そして、頭の中にあるおぼろげなメロディーについ .... 冬のさなかのような目覚めだった、なにか夢を見ていたのかもしれない、その夢が心身を徹底的に凍えさせたのかもしれない、猛暑といえども明けたばかりの朝のなかではその牙はまだ剥き出しになってはおらず、冷汗 .... 左目の目尻を切り裂くような角度で強いビル風がブチ抜いて行った、顔をしかめ、額の汗を拭い、もう一度歩き出した、そんな些細な出来事のせいで、いったいどこへ向かって歩いていたのか忘れてしまった、まだ .... 動脈は情け容赦のない撲殺、静脈は金切声、細胞は無感覚なギャラリー、そんな蠢きの夜だった、与えられた寝床は求められたものと決して同じではなかった、湿気が強すぎたし、隣室には他人のものを覗いてばかりいる薄 .... おぼろげな夢のなかで
おまえは踊りはじめた
おざなりなワルツのプロローグ
おぼつかないステップの羅列

金属のような月明かりが
照らす板張りの床のうえで
同じリズムが何度も、何度 ....
誰かが酩酊の果てに履き損ねたきらびやかな厚いソールのサンダルが事故車みたいに銀行の壁脇に転がっている、その靴の持主はもしかしたらもう息をしていないかもしれない―理由はわからないけれどなぜだかそんな ....
ホロウ・シカエルボク(1165)
タイトル カテゴリ Point 日付
また会える?と彼女は聞いた自由詩5*18/12/14 0:45
マニック・ストリート・プリーチャーズ自由詩6*18/12/9 23:32
浅い落とし穴からは少しだけ世界が覗ける自由詩5*18/12/6 0:00
御免よ、僕には気づいてあげることが出来なかった自由詩2*18/11/26 22:54
ラスト・ワルツ(路上のソワレ)自由詩2*18/11/18 22:14
ロストの先端自由詩2*18/11/12 0:03
狂った文字盤の針にもグルーブは隠れている自由詩5*18/11/4 22:51
混沌をまんべんなく敷き詰めた小さなベッドに(そして窓の外にや ...自由詩4*18/10/28 22:48
穴だらけの心は破れたフィルムの夢を見る自由詩0*18/10/25 0:50
運命のまばたきのしかた自由詩2*18/10/21 23:42
いつかすべては使われない部屋に放り込まれるけれど自由詩1*18/10/13 22:11
渚にて自由詩3*18/10/7 14:54
僕らは揺れているだろう自由詩4*18/9/27 21:42
モメンタリ・モーニング自由詩4*18/9/24 23:58
ジェニーは夕暮れのあとで自由詩2*18/9/20 0:53
絆創膏と紙コップ散文(批評 ...1*18/9/12 12:06
キリストとフクロウ散文(批評 ...1*18/9/9 12:49
波紋の残像自由詩2*18/9/6 0:10
たぶんどちらでもいいことだけど自由詩2*18/9/2 22:47
その振動が記憶している自由詩1*18/8/30 23:09
鮮やかな流血のまぼろし自由詩2*18/8/26 23:02
まだ、だれもみたことはない自由詩3*18/8/21 23:40
子供のころから若さが嫌いだった自由詩1*18/8/17 21:48
からっぽの世界に小石を投げ込む音を椅子に腰を下ろして聞いてい ...自由詩2*18/8/13 0:27
陽炎自由詩1*18/8/9 22:45
いったいどうしてこんなことを思い出したりするのかね自由詩2*18/8/4 22:21
台風と灼熱とゲリラ豪雨自由詩018/7/29 21:58
ラストマン・スタンディング(或いは暴いた繭の中の)自由詩3*18/7/23 23:35
ソリチュードのもつれ自由詩4*18/7/21 23:41
そんなことを話している間に自由詩1*18/7/16 22:13

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