色を失くした冬の明け方、公園のベンチで俺は放置されて風化した骨のように横たわっていた…数羽の鳩が半径一メートルの辺りを、時折こちらを窺いながら思い出したように地面を啄んでいた、こちらがなにか食べる .... 世界はいつだって
出来上がった何かをなぞっているだけだから
やつらの真似をするのはやめておけ
前に居た誰かと同じになってしまうから
お題目を鵜呑みにせず
ひとつひとつ自分で考えて
自分 ....
打ち捨てられた死骸の硬直した筋肉は鮮やかな色身だけが失われていて、それはまるで土に擬態しようと望んでいるみたいだった、心配は要らない、それは必ず叶えられる、おまえがもっと失われ続けたあとに…耳 .... 不用意に感光した印画紙のように意識は白けていた、くすぐる程度の電流がどこかでずっと思考を脅かしているみたいで、俺は実質丸められて捨てられたジャンクヤードのカーペットと大差なかった、すぐにどこかにも .... 心情の中で黒い蛇がのたうっている、標的を知らないまま見開いた、血走った視線の先にあるものはあまりにも頼りない虚無だ、絶えず鳴り続けるノイズだけが自分の存在を知らせ続けている…特に冷える夜、特に冷え .... 街の灯が消えるころに
俺たちは跳躍を繰り返した
皮を剥ぐような風が
駆け抜ける午前三時
記憶のなかのサウンドのハイハットが
氷の割れる音に聞こえるような気温だった
あたためて
それは ....
才能の定義とはなんであるか、なんていう細かいことは置いといて。でも簡単に言えば、「僕には才能があるんですよ」なんて宣伝しなくても誰かしらに受け止めてもらえる何かをそう呼ぶ、ということになるだろう。 .... 市の大手建築会社の、一大プロジェクトとして作られた街外れの巨大な新興住宅地は、建てられたもののろくに買い手がつかないまま数年が経過していた、そんな隙だらけの巨大な新築廃墟など、瞬く間にフラストレー .... あてがわれてあてが外れてもごった返す人の波のなかで
奇をてらわず気を付けて精進なによりも大事社会のルール
自発性すら指示されるままにほのかに微かにちらつかせるだけで
お手本に沿って律義に ....
狭い、ほとんど交通量のない道路に幽霊のように現れたプリウスのヘッドライトが、その存在の希薄さをあらわにしてやろうと企んだかのように私を照らしていく、どんなところに行ったって隠れる場所なんかないんだ .... 午後を通り過ぎた影、踏みしだかれた詩文、血溜りのなかの指先、白紙のままの便箋、風が息継ぎをするときに聞こえる嗚咽は誰のものだったのか、忘れたことにした記憶が膿んだ傷のようにじくじくと抉り続ける理由 .... そうしてお前は海藻のような俺の臓物を引き摺り出す、喪失の感触はあまりにもヘドロを思わせる、トッカータが聞こえる、それはあまりにもマッチしている、俺は呆然と虚空を眺めている、目に映る風景はとっくに意味を .... 枯れたバラ園のそばで
鮮やかな過去に埋もれて
もう聴こえないヴァイオリン・ソナタの
朧げな旋律を追いかける
厳しく美しい冬
風は心の奥まで
凍らせようと目論んでいる
死んだ土をす ....
サウジアラビアの油田火災のニュースが流れる電化店のフロアーを
ローリング・ストーンズのシャツを着た若い女がナイフを持って歩いている
彼女の敵意は自分にだけ向いているようで
右腕は指先から肘の ....
殴り続けた傷口は紫色に膿んで
吐き捨てた唾には汚れた血が混じっていた
敵など居なかった
敵など居なかった、どこにも
おれはただひとりで挑んでいただけだった


アルコールランプのよう ....
ブックオフでうっかり見つけてしまったそのアルバムを購入したわけは
まさかあいつらがベスト盤を出すなんて、と困ったように笑ってた
懐かしい男のことを久しぶりに思い出したから
「こんなのパンクじ ....
漏電を思わせる低気圧の真夜中には生焼けの肉の臭いがする、一息に喉の奥に流し込んだハーパーのせいで身体はまるで蒸気オーブンのトレイの中でぶすぶすと少しずつ焦げ続けているみたいだ、ベルベッド・アンダー .... いつからかどこかからずっと聞こえている小さな悲鳴は僕のものなのかもしれないしあるいはまるで関係のない誰かのものかもしれない、ポータブル・ラジオがたまたまどこかの国の電波を拾ってしまうみたいに僕 .... 街路で踊るバレリーナの黒髪は長過ぎて、12tトレーラーの後輪に巻き込まれてしまう、悲鳴を上げる間もなく、踊りに陶酔したままの虚ろな表情で、のけぞるように飲み込まれたプリマドンナ、クルミの殻が割れる .... 色褪せたクリーム色の壁、不自然なほどにしんとした空気―わたしはたまにこの景色を病室のようだと感じることがある、でもここは病室ではなくて―まあ、そのことはあとで話すことにする…道に面した壁はすべ .... 細胞の中で狂気は水棲生物の卵のように増殖を続けて、そのせいでこめかみの内側は微妙な痛みを覚え続けている、尖った爪の先が終始引っかかっているみたいな痛み―軽い痛みだけれど忌々しい、そんな―俺はい .... アルフレッド・ヒッチコックの夕暮れのような空のなかで今日が竦み上がりながら死んでゆく、その悲鳴は、その悲鳴は…昨夜俺を悪夢から叩き出したその声とまるで同じで―なにを見ていたのか、なにを知っていたの .... 踏ん切りのつかない弱い雨は中空で折り返して黒雲へと戻って行った、とうに濡れる覚悟が出来ていた俺は拍子抜けを食らってゲーム・センターで結構な金を無駄にしてしまう、どこをどんな風に波立ててみたとこ .... 三二年前に閉鎖された農場の入口、丸太と有刺鉄線の簡素な門の前で、余所者の娘がぼんやりと空を見上げていた、マーゴ・ヘミングウェイみたいな髪型で、痩せぎすののっぽだった、ちょっと引くぐらいどぎつい .... 視界はぼんやりと霞んだままいつまで経ってもクリアにならなかった、水を浴びせても、指で拭ってみても―軽く叩いてみても。世界はなにか大事なことを誤魔化しながら慌てて暮れていこうと目論んでいるようだ .... リズムの残骸は、砂浜に沈んで、視覚障害者の見る幻覚みたいな朧げな輪郭だけが、晩夏の太陽のなかで揺らいでいた、それはジェファーソン・エアプレインの音楽を思い出させた、敢えて違うところで繋がれたパズル .... 僕らは、揺れているだろう
冷めた血を滴らせながら
僕らは揺れているだろう

なにも見えない世界や
なにも聞こえない世界
そんな世界のことを
恐れ、そしてどこかで憧れもしながら

 ....
乾いて荒れた
まぶたが開いて
かすれた小さな
産声が午前を揺らす
きみは何度目かの
救済と絶望のなかで
目に見える世界は
たしかなものではないと知る


クロー ....
時に覆い隠されたギヤマンが灰の底の火種のような声で歌をうたっているころ、脱皮した蛇の皮のような感情でジェニーは横たわっていた、道端で調子のいい男から買ったドラッグはひどいシロモノでトリップというよ ....  冴えない中年サラリーマンが、仕事帰りの屋台で誰に聞かせるともなく呟いている愚痴みたいな雨が、途切れることなく朝から降り続いた夏の夜だった。じめついた空気に我慢がならなくなって、眠るのを諦めて ....
ホロウ・シカエルボク(1119)
タイトル カテゴリ Point 日付
崩落の朝、公園で。自由詩0*19/3/1 23:12
歩きやすい道にはなにも落ちていないよ自由詩9*19/2/17 22:45
騒乱、喰らい尽くして自由詩1*19/2/14 0:04
聖堂自由詩2*19/2/7 22:36
FADE OUT(そのなかにはっきりと聴こえるいくつかの音)自由詩3*19/2/3 22:09
この夜はあの夜自由詩3*19/1/31 0:05
才能とは前例のない武器である散文(批評 ...4*19/1/24 21:46
さやかに星はきらめき自由詩1*19/1/15 14:35
清潔な皮に切れ目を入れて引き剥がしたらそいつは立派な肥溜だっ ...自由詩1*19/1/10 22:34
飛ぶ夢など見なくてもいい自由詩1*19/1/6 21:43
ただ赤く塗り潰して自由詩5*19/1/1 22:56
肉体のサイレン自由詩2*18/12/23 22:15
あなたの居なくなった世界に自由詩5*18/12/20 23:49
スラップスティック・メルヘン自由詩4*18/12/16 22:21
また会える?と彼女は聞いた自由詩5*18/12/14 0:45
マニック・ストリート・プリーチャーズ自由詩6*18/12/9 23:32
浅い落とし穴からは少しだけ世界が覗ける自由詩5*18/12/6 0:00
御免よ、僕には気づいてあげることが出来なかった自由詩2*18/11/26 22:54
ラスト・ワルツ(路上のソワレ)自由詩2*18/11/18 22:14
ロストの先端自由詩2*18/11/12 0:03
狂った文字盤の針にもグルーブは隠れている自由詩5*18/11/4 22:51
混沌をまんべんなく敷き詰めた小さなベッドに(そして窓の外にや ...自由詩4*18/10/28 22:48
穴だらけの心は破れたフィルムの夢を見る自由詩0*18/10/25 0:50
運命のまばたきのしかた自由詩2*18/10/21 23:42
いつかすべては使われない部屋に放り込まれるけれど自由詩1*18/10/13 22:11
渚にて自由詩3*18/10/7 14:54
僕らは揺れているだろう自由詩4*18/9/27 21:42
モメンタリ・モーニング自由詩4*18/9/24 23:58
ジェニーは夕暮れのあとで自由詩2*18/9/20 0:53
絆創膏と紙コップ散文(批評 ...1*18/9/12 12:06

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