雨時計とは雨のふる街をさす
誰もが知らないふりをしたことだが
秒針は環状線のアシンメトリーに似ていた

夜、神話としての男と女が踊り出すと
点と線をむすぶようなあいまいさで
ビニール傘 ....
不自由な直線で描かれた雨に
うたれている
肉体

つまりきみは
一歩も動かないまま
ふるえてある

姿という姿はめくられ
白紙というには色褪せたページが
きみの瞳のなか ....
かえらぬ人々の
かつてかえっていった道を
あるく

うらぶれた街のシャッターには
等高線のかげがかかる
どこよりも遠い落日にてらされて

石室めいて閉ざされた家々の
木立のな ....
水の声を聴くがいい
水面のゆらめきに影をとられ
なお掴みがたきひとよ
あなたもまた歴史の谷を
流れる水の影なのだ
水は石理を濡らし
戦禍をまたぎ
あなたの口を潤した
だがこの水 ....
焼きついてしまった夜よ、
アオカケスが鳴きだしてしまうまえに
壊れかけのストロボからにげ
海の跡をたどる二人のすがたを
巨人のごときかいなで隠してはくれまいか。
琥珀色のひとみたちが ....
どこからも遠い、ここへ
千々の風に吹かれてたつあなた
雲のようにおおくの面影をうつす
あなたへと伸ばされる
わたしの影、暴きたてられた白き砂、
ああ今ここに在らざるひとよ

空はぽっ ....
トルソの夕焼けに
切断された四肢の休息を
みるものはない

石理から拭きとられた水も
砂漠をこえ ひとをこえ
高低をのみほしてきた

砂時計はアシンメトリーである
あらゆる風と雲 ....
海よりもとおい海の
浜辺には声の真空があり
水と石だけがきざまれて在る

列島の等高線をきりおとして
おんなたちは口々に
あれが星の曲率なのだとささやく

だがひとえに言ってしまえ ....
ゆらゆらと ゆれているのは
あの水平線の曲率だ
タイドプールのうたかただ
存在のあいまあいまのいきつぎと
あるべきように ふるえている
水面で浮かんだ小魚のひれや
銀鱗に細められた ....
墓石のあわいを這いまわった風に
肉体という温度をおもいだす
血という言葉はなまじろい蛇のように
とぐろを巻いて しめつけようとしている
線香の煙を青空の雲とうかべれば
どこへと行く そこ ....
腑を抜かれた魚の目が街を睨めている
斜視の感情は月光の行先を知らないので
真ッ黒く塗りつぶされた日々を燃やせない
虫を嘔吐する街灯はこうべを垂れて
舌下に縫いつけられた言葉に耐える

 ....
ある朝、わたしは透明になった。
世界は膝を抱えて仰いだ青空であり
そこへとあらゆるものは落下していた。
それは重力という現象ではなく
存在という重心へと還っていく風景だった。

この風と岩 ....
雨上がりの午後、この街の空は
どこまでも行けるように青かった
アスファルトの窪みでは水たまりが
信号のいらない雲の往来を映している

あそこに飛び込んでしまおうか
革靴なんか脱ぎ捨てて ....
天体望遠鏡すら知らない宇宙の彼方からブランコは
こんなちっぽけな青い星まで伸びている
一漕ぎで銀河を跨いでゆくのは
もう旅立っていった人だろう

ただ空を仰いで憧れるしかない
移ろうと ....
踏みあった影はうねりを繰りかえし
大蛇のようにわたしを睨めている
これが雑踏という生物だ

身を縮めて隠れるほかない
だが一歩たりとも動かぬように

語ることを好まなかった父は
静かな ....
遠い落日から潮騒はやってくる
零れおちた輝きは
海硝子にはなれない貝殻たち
のこるものは夜光貝の
幻というかそけき冷たさ
空の螺旋のうちに響いている
遠のくということは淋しい
それは砂を ....
太陽があまりに悲しい
あの永遠の寂寥のうちに
蒸発の悲鳴さえ許されないとは

風が、吹いている
あらゆるものの上にある空から
火と岩と水の星へと

そして冷たく聳えている街は
き ....
昏い海の波間で
人魚にもなれなかった
青白き亡霊たちは
海よりも深い森のなか
銀竜草の霧のなか
木漏れ日のような朝露から
こぼれ落ちたのだ

月の投げた銀の網が
のたり、と揺れて ....
どこまで漕いで行こうか
こんなにも暗い夜だ
幽かに揺れている水平を
描いているのはいつの波紋か
この舵だけが覚えていることだ
銀の月が爛々と眩い
溶けているのだな、おまえ
うつくしく ....
雨と雨との距離を測りかねて
戸惑いに揺れる傘は
五月の鋭敏にやられた心です
ビル街はところにより墓地のよう
予報どおりに雨は止みました
枯れかけた花束の空ですけれど
新緑が瑞々しいですね
 ....
おれが居たんは楽園とかいう果樹園やが
アホウな鳥が啄んだあげく
雲ん上で糞ひり出したもんだから
おれは泥ん中に落ちちまってよ
隣で生ってたあいつらあ
灼然な御神木だとか
世界一臭え花だとか ....
ビルの窓に褪せた空の青さ
夜のままの側溝の饐えた臭い
音漏れしている流行曲
眩暈のするようなデジャヴ
なにもかもが痛くて堪らない

肉体は暴力である
殴打された何十億光年の静寂に
雑踏 ....
「合掌」

時が合掌すると
測りがたき遠方の地平は白む。

赫きは天から天へ、
高く響きあふ鐘の音色。

この果てのない寺院に
しかし動くものはなにひとつない。



「透明 ....
僕のからだは四肢を欠如し
口だけがやたらめったら気取っていて
目にはencyclopediaが縫われている。

石の頭だけを大きくして
あらゆるものを知っていると
古ぼけた紙のにおいを吸い ....
メノウのような波
渚にかききえる泡たち
たゆたっているのだ

だきとめたかった
欠けてしまったからだを
小さく、小さく、まるめて

原石の真珠
秘められたままでいい
このまま眠るか ....
環状につらなった日々、
一日をくぐりぬけるだけの夜は
きっとぼくの忘れてしまった
大切なことの影法師たちだ。

明滅する日々に目眩いたぼく。
かつては天を仰いで待っていた。
変わらず ....
{引用=   青空が好きです。
}
青空。

あれは欠けてしまった心だ、
心の欠けらなのだ、
重力のようにわたしを惹き、
幼子の瞳のように影を呑むのだ、

どこにも行けないという幻肢 ....
青空。

あれは欠けてしまった心だ、
心の欠けらなのだ、
重力のようにわたしを惹き、
赤子の瞳のように影を呑むのだ、

どこにも行けないという幻肢痛。
慰めがたい痛みを慰めよう ....
この花は永劫の畔にゆれている。
あまたのうつろいをながめ
蕾という名の一輪となって。

風よりもとうめいなあなたの声が、
水面をやわくなでている。
どことも知れずに吹いてきては。

 ....
まぼろしである
しとどに濡れる街が
明滅する赤信号が
交差点にあふれた人びとが
舗装された道路の窪みが
まぼろしである
底のすりへった靴が
歩道橋の一段目が
つらなった改札の狭 ....
新染因循(40)
タイトル カテゴリ Point 日付
雨時計自由詩12*21/10/21 21:51
クロッキー帳の夜自由詩1221/10/13 8:50
楕円のエッチング自由詩9*21/8/13 20:46
水の声(改)自由詩6*21/8/8 14:44
ストロボの夜自由詩5*21/8/4 23:26
くちづけ自由詩621/3/19 2:23
断章自由詩521/2/26 17:08
海のパース自由詩16*21/2/25 0:27
ふるえるということ自由詩321/2/2 16:31
ぼ石自由詩220/9/21 17:55
下らない自由詩319/10/29 0:19
落下と膨張自由詩419/9/28 20:57
青にやられて自由詩4*19/9/14 23:16
ブランコ自由詩319/9/10 7:51
おびえる自由詩419/9/8 16:45
遠のくということ自由詩719/8/2 16:08
零度の透明自由詩819/7/20 22:44
月(2)自由詩6*19/7/2 23:52
自由詩17*19/6/22 21:03
五月の鋭敏自由詩9*19/6/14 23:48
蓮になりてえ自由詩8*19/5/22 11:07
肉体のシニフィエ自由詩12*19/5/13 1:06
合掌/透明自由詩6*19/5/1 21:04
自動欠落児童自由詩3*19/4/13 15:52
真珠自由詩6*19/4/7 14:18
朝を叫ぶ自由詩219/3/29 23:39
青空(改稿)自由詩419/3/19 2:07
青空自由詩919/3/17 11:59
永劫の蕾自由詩13*19/2/14 0:50
まぼろしである自由詩10*19/1/15 21:37

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