月(2)
新染因循


昏い海の波間で
人魚にもなれなかった
青白き亡霊たちは
海よりも深い森のなか
銀竜草の霧のなか
木漏れ日のような朝露から
こぼれ落ちたのだ

月の投げた銀の網が
のたり、と揺れている
さらおうとしているのは
燃えさかる涙の欠片だ、
砂時計に反射した黄金だ
月よ、欠けたることのない月よ
だからお前は沈むのだ


自由詩 月(2) Copyright 新染因循 2019-07-02 23:52:27
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