遠のくということ
新染因循

遠い落日から潮騒はやってくる
零れおちた輝きは
海硝子にはなれない貝殻たち
のこるものは夜光貝の
幻というかそけき冷たさ
空の螺旋のうちに響いている
遠のくということは淋しい
それは砂をさらってゆく漣だ
鏤められた砂は、沈んで
さようなら、と
掲げた手の隙間から
落日の遠さを測っている
あの遠方からやってくるのだ
こんなにも眩いというのに


自由詩 遠のくということ Copyright 新染因循 2019-08-02 16:08:12
notebook Home 戻る  過去 未来