零度の透明
新染因循


太陽があまりに悲しい
あの永遠の寂寥のうちに
蒸発の悲鳴さえ許されないとは

風が、吹いている
あらゆるものの上にある空から
火と岩と水の星へと

そして冷たく聳えている街は
きっと何十億年の零度に凍えた
亡霊たちの墓標なのだ

風は熱を鎮めるために吹くという
どおりで向かい風が強いわけだ
こんなにも強く生きているのだから

わたしはかたちを脱ぎ捨て
無限遠に円環する瞳に
風を呑みほしながら透明になった

これでいいじゃないか
風が、吹いているのだから
もうこれだけでいいじゃないか


自由詩 零度の透明 Copyright 新染因循 2019-07-20 22:44:54
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