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子猫を拾った公園
子猫といっしょに
風を切って揺られた
おなかと片手にやわらかさ
ねむくなった子猫
あたしも目を閉じる
上がって下がって
上がりきって下がる瞬間に
子猫が爪 ....
大きく膨らんだお腹に手を当てると
ぐるんと窮屈そうに動いてくれた
明日生まれるよ
君は明日生まれるよ
後ろからそっと抱きしめると
安心そうに身を委ねてくれた
明 ....
ここにはない
何も踊らない
ただ搾り出された絵具のように
眠たげな静物だけ
わたしの中か
わたしの外か
楽しげな人の姿が
ゆっくりと薄れ消えて行く
古いスナップ写真が
毎 ....
その日、私ははじめて人の死体
を見た。いまからおよそ十年前、三月二十六
日の金曜日のことだった。もちろんそれまで
にも祖父や祖母のそれぞれの葬儀に立ち会っ
たことがあるが、その時に ....
通夜を終えたタバコの煙が月まで昇っている
妻に物をプレゼントしたことがない
物より思い出ばかりプレゼントしたからだ
それでも妻は物がほしかったようで
時々古ぼけた腕時計を指差すこともあった
あの世でね
と私は言った
私 ....
よく晴れた朝
新しい職場へ向かう
昨日の特訓で疲れているけど
今日も頑張れる
覚えなくてはならないことがありすぎて
頭がぱんぱんになる
あまり眠れなかったけど
ちょうどいい緊張感だ
....
たまねぎの
ちゃいろの
うすかわを剥く
のり、で
はったわけでもないのに
なかみのかたちに
ぴたりとはりついて
かわいてしまった
うすかわは
もう
うすかわ以外の
何者でもない
....
初めておばさんと呼ばれたのは
娘を保育園に預けて働き始めた頃だった
仕事が終わって迎えにいくと
小さな子どもたちが
今度は自分の親の番かと
わくわくしながら遊んでいる
時間外保育の部屋 ....
消えない過去重たくまた一歩
不自然な学校のほうが
自然学校よりも
自然がよく解る
ブラック企業のほうが
ホワイト企業よりも
経済がよく解る
クチコミのほうが
マスコミよりも
世間がよく解る
だけど
....
フラフラと
朧月の生温い宵に
プラプラと
妄想の尻尾をぶら下げて
ブラブラと
調子っぱずれの自律神経をナビにして
此岸の縁をそぞろ歩く
フラスコの中の
フラストレーション
....
「会社が潰れるかもしれない…」
夫が青白い顔でポツリと言う
「そう。じゃあ、じたばたしても仕方ないわね」
私は、パッションフルーツ入りの
プレミアムヨーグルトを食べながら答える
視線はス ....
{引用=
一 あの丘で
あの丘で
春風をむかえよう
あの丘で
花のかざりに
微笑んでいよう
あの丘で
小鳥の歌に
つらなっていよう ....
一行で何人も殺せるペン先が細い
夜の闇は恐ろしい
目の前に何がいるかもわからないのに
自分がここにいることだけがはっきりしている
いっそ
自分も含めここに何がいるのか
誰も何もわからなければ
よかったと
闇の中 ....
壁を見つめて壁に書いた
壁に眼で書いているから
誰も気が付かないだろう
もうこの壁ともお別れだ
明日は別の壁の前に居る
じっと壁を見つめた日々
壁の前に机を置いている ....
飼い犬に似てきた
押しても引いても現実は容易には動かない
しかし個々の事象は絶え間なく瞬時の変化をとげてゆく
成長とは産声をあげた瞬間からの死へのあゆみ
明日はわからない
でも希望はそのやわらかな隙間に生ま ....
呆けた{ルビ斑=まだら}の歌声に
後ろから捕えられ
目隠し外せば 春は
娘姿の老婆
千代紙から蝶
切り抜いては
ふうっと 吹いて
この肥大した冬には
心の資産全 ....
三月
守宮(やもり)は
たべる。
ゆっくり
ゆっくり
味をたしかめるように
たべる。
産まれつづける現実(うつつ)をおかずに
夢を
たべる。
くり返されてきた儀式が
....
かつて僕は、君の名前をほめたことがある。
いろいろなところで、
いろいろな人が、
知らず知らずのうちに呼ぶ、
ありふれた名前。
たぶん神様に祝福された名前。
そ ....
<イーゼル・ベーカリ>
イーゼルを看板代わりにした
街角のベーカリは通勤路
本日のメニューと季節限定
チョークは今日も鮮やかで
意外と個性の出るもので
あの人と彼女と彼と彼
....
とおりすがりのコンビニで買った
コンドームの箱をあけて数を数えてる
ティッシュボックスから
うすい紙引き抜いてするエモいファンタジー
こんなはずじゃなかったんだけれど
ぶらさげた青いくまのぬ ....
美女が乗ってきて次降りる駅
蟄虫啓戸
すごもりのむしとをひらく
ギィっと
闇に穴が開くと
部屋は一瞬で眩しさに満たされた
クラっと
意識が旋回して
しばらく身動きが出来なかった
何の理由も告げ ....
早朝割引の列でお悔やみ申し上げられている
春が降り注ぐ
固くこわばった雪山に
冬の汚れをこびりつかせ
シャーベットに足を取られ
車が跳ね上げる泥水に
コートを汚され
春が降り注ぐ
微笑がこみあげる
春が降り注ぐ
....
スーパーは
冷房がききすぎて寒い
明日の朝食のパンとか卵
冷凍食品もすこしだけ
夫と娘が銭湯に行っているあいだ
100均は9時でおしまい
手持ち無沙汰だったから
隣のハンバーガー屋に ....
捕まえられた殺人犯は
群がるマスコミ関係者に向かい
マスクをずらし
何か 喚いた
「あっ、彼が何か叫んでいます。
なんと言ったのでしょうか?
ちょっとよく聞き取れませんでした・・」
....
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