すべてのおすすめ
君は自ら選んだようだが
「あなたは世界に黙殺されたのよ」
耳元で囁くように女の声が聞える
聞こえなかったことには出来ず
煙草に火をつけ
煙を吐き出す
大きく息を吐き
時計を見る
針は見 ....
‘笑いだす雌鹿’
緑色の黒色。鴉から雉(キジ)の残骸。
黄金のヤカン。硬貨の飛び跳ねる秒針。
(びょうしん)よ。お前の病気をうつ
すなよ。(砂)る。(いぬ(電球には
嘘。 )))( ....
おとぎ話が我々を物語る番だ。一本の蝋燭の火の下、髪の毛を上から植え付ける晩だ。我々はつい昨日まで高校生だったようだ。ほんの2日前には母親の乳に夢中で吸いついていたようだ。言葉を憶えたのが本当にたった今 ....
【閂は開かれる】
閉ざされた記憶の門のかんぬきが
思いがけない方法で開かれることを 私は知った
たとえば 少女の髪にあったリボンが
ほどかれた瞬間に急に大人び
何かを失ったかのような遠い ....
多摩の春は立ち
梅の便り
雪の予報
氷のうさぎをせがむこども
声は眠らず
温もる床を抜け出る
もう未明なのに
待ちわびている
あなたが呼吸を恐れ
感じすぎるのだと胸を震わせる
....
数え切れない
手に負えないくらいの
幾千枚の白いはなびらが
ほとんどいっせいに
枝という枝を離れて
舞い踊る
まるで蝶のように
儚げであるのだけれど
或る意志を持って ....
一 世界の終わり
世界が終わるという予言を
紹介するテレビ番組を見て
下の娘が心配している
「ねえー、終わらないでしょー?」
ぐずぐず絡む娘をあしらいながら
妻は蒲団を敷いている
....
崖の上の
鱗に覆われた洞から
背には火
腹には羽
ひとりの子が空へ這い出る
冬の目
冬の耳
走る光
あらゆる指が
海に着く時
水が夜に螺旋を描き
....
穏やかな午後
宮殿の門柱に降り立った鳥は
自らの彫像と目を合わせた瞬間
彼に 青空の隷属権を奪われた事を悟った
鳥は知った
飛び立つ事も 飛び立たぬ事もまた
もはや 許されてはいないの ....
あそこに星が、と
きみのさししめす指があわれで
ぼくはこころで百万粒ほども涙をながす
なにもかもまっしろなこの部屋で
きみはそうしてはるかかなたを眺めているのか
生き ....
わたくしという ひとつの石のなかを
いくつもの 星や雲が
とおりすぎていきますので
それを毎朝 ながめているだけで
胸がいっぱいになってしまうんです
ラピスラズリを砕いて ....
世界が終わるという予言を
紹介するテレビ番組を見て
下の娘が心配している
「ねえー、終わらないでしょー?」
ぐずぐず絡む娘をあしらいながら
妻は蒲団を敷いている
上の娘は気にせぬ素振りで
....
みずのね
さらさらとね
ながされる
ひとのシやセイが
たいがになって
いつかのよるの
うみみたいなばしょへ
みずのね
ちゃぷんとね
りゅっくのなかの
つつのなか
ゆれるた ....
雪に寒さしか
感じなくなったら
完全に
老いてしまったと言える
のではないか
品川駅のホームで
横須賀線を
待っている間
そう思った
まだ少しだけ
そわそわしている
自分 ....
日本のバロウズ
はたまたジャニス
あるいは
日本の清水健太郎って
日本人じゃねえか‼
それはさておき、小向が捕まった
最近ではアナルをはじめとする
過激エログロ路線に足を ....
あの子たちは 花をみたことがあるのだろうか 一瞬で心笑むさまざまなあの色を 甘い香りを 大木に咲く小さなものを 水を含む肉厚の葉を… 蜂や風が粉をはこぶということを… 美しい景色を し ら ず に ....
橙の蛍光灯にてらされて、
膨れ上がった球体は熱く、
床に落ちていた
縫い針で、
ぷちり刺してみる。
球体が弾けて、
鼠色の煙から、
たくさんの色とりどりの球体が、
....
どうして私ではだめなんだろうと思うとき
私は私を愛していることに気づいた
なあんだ
私ちゃんと私がだいじなんだ
よりかかりそうなかげは
夜のなかにしずかにとけていった
技術水準だけで言えば
既に私たちは働かなくても食べていける
次の水準になれば
労働という概念そのものが消える
私たちは生きるために必要な要素を
減らし続けてきた
寒くても死なな ....
よだれをとめられないひとだっている
たたきあう肩がないひとだっている
めぐっていかない星だってある
からだじゅうに小さい脳みそが埋め込まれてるみたいで
走りたい走り ....
箱から出ておゆき、羊たち
呑み込んだ象を吐き出すんだ、うわばみ
立つことが精一杯の星の上で
灯りを消す、点ける
(日の出と日の入りのあわいは僅か)
薔薇を宇宙の風から守る
(風は吹くの ....
嫁さんと
息子が
まったく何不自由なく
暮らしていくためには
ただひたすら
頭を下げるときは下げ
憎まれるときは憎まれ
こんな奴
私生活では
絶対に付き合いたくない
と思われても
....
日本国憲法第九条は死んだ
お前達が殺したのである
憲法九条が何であるかを
お前達はとうとう理解できなかった
理由はひどく簡単である
それは戦争が絶対悪ではないということだ
お前達は戦争 ....
そうしてわたしたちは眠りについた
朝、
無遠慮にかたちを引きずりだす光にまみれながら
疲れきって でも
ほっとして
役目を終えた靴のように萎びて
わたしが
とても小さなこどもだった頃
なにも知らない
知らないということが許されていて
それが
どんなにか幸せだったかということさえも
知らなかった
笑うたび頬に
くぼみを作っていた頃 ....
茨の芽、今日、若すぎる者たちが撒き散らす劇画チックな血
茨の芽、昨日、年嵩の者たちが演じた痛みのわかりやすさ
春、触れよと誘う
茨の芽、千差万別の宿命に満ちながら春に生まれる ....
ふうわりと心が軽くなって
空気がすーっと晴れた
私に見えていた世界に
あなたの見ていた世界を重ねたら
驚くようなことが起こった
正解なんてない
間違ってたっていい
だったら
苦しく ....
川嶋医院の
門柱までの石の階段を
ケンケンしながら昇って行く
昇った先に待っている懐かしい顔
随分と草臥れたセーターを着ている子や
今日おろしたてのジャンパーが
砂や泥で白くなってしまった ....
私のてのひらの雨雲を
誰かに届けるために
来たのかもしれない
役割は
私が与り知らぬところに
あるのかもしれない
笑うかもしれない
怒るかもしれない
まっすぐな犬のように ....
6026
最後の人間が死んで
機械たちはこの地球を去った
残された都市を歩いているのは
ゾンビの群だけだ
あんなに瓦礫を積んで
何を探しているのだろう?
9158
望遠鏡を覗く ....
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