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ぼくたちはインクの川をまたいで指を切る
彼女たちは木にぶら下がっている
裸で
ぼくたちは空を見上げている
お互いの青い
髪の毛を手にぶら下げている
暗闇がぼくたちの間をよぎっている
....
雨上がりの朝 音楽会は終わり あたりは拍手のように光っていた
──終演
濡れた落ち葉は閉じられた楽譜 土に還る日を待つのだろう
──静謐
鳥は何の疑問もなく冬へと向かう ....
歴史に突き刺さった彼の脚を
歴史に絞め殺された彼の眼を
上空を飛び交う空の歴史へと組み替えよ
縮み果てている そして
端をどこかに置き忘れてしまった
空という平坦な炎に死んだ憎しみを与えよ
....
かかなくては、死んでしまいます。
うたわなくては、死んでしまうのです。
髪も、膚もまっ白い、ゆう霊のやうな少女は、さう云ひました。
あかい硯を右手に、まっ黒い{ルビ蝶々=てふてふ}の ....
寂しくて
部屋のにおいさえも嗅げない
煙草が
冬の匂いと混ざり合って
僕は
どんなに遠くを
迷うだろう
少年だったころ
僕は少年宇宙飛行士でした
その後
記憶を消されたのだけど ....
地図を広げて電話を片手に話している
相手は叔父だ
ある地名の場所がわからないという
三文字の漢字で表す地名
「興味の興、という字がつくの?何?聞き取れないの?」
歳老いた叔父の声はしゃがれ、 ....
band-aid is food
カタツムリを捕まえて、それを頭の中で飼った。
すごく天国に行きたかったので、夜通し起きていた。
そうして視力を鍛えた。
カタツムリを飼ったのは、彼らが強い ....
砂漠が止まり
荒地に変わり
境はうねり
灯に裏がえる
蒼とむらさき
はざまの冬に
窓は影を塗る
ただ繰りかえす
両側を壁に囲まれた
長い坂を下 ....
偽善かな、って 迷う瞬間って 言うのは
何処かしら 自分自身に
後ろめたさが 有るのでしょうね。
常に 色んな可能性を 考えて 動くコトは
大切だと 思いますが、
出来れば、
相 ....
夜汽車の音を聴きにいく
眠れぬ夜のなぐさめに
長く尾をひく汽笛
行く人のさよならのように
旅のゆくえを指し示す
線路のむこうは闇に溶けている
行かない者のさみしさを
私はぼん ....
虹を浴びていると存在がくるくるまわる。自傷。叡智。笑い。堪えきれなくなる。きみどりいろの空。大きな大きな卵に温められた空色のことり。
コップ一杯の涙を電気会社に支払う。何度も何度も、√の形に区切られ ....
ト
タトン
タタ
雨が大気にあふれ出す
地は吸い込んで
水流が闇にあふれ出す
ヒトはみな小動物
家のなか
葉陰の小鳥たちの夜を案じ
明朝の我が身を気に病む
石くれになる傘の中
....
さしだされた 日差しに
両手を広げ
思い出を 手放す
記憶にない私の産着
世紀を飛び越えて 目の前にある紋付袴
晒された金襴の帯 鯨尺の和裁版
沈没しても浮上する船箪笥 ....
観覧車があるところを飛び渡っていると
大気圏を越すような速さになっていった
ある惑星の文明の話を聞いて
自分の描く空は記号だらけになった
届かなくて引っ掻いた
金色の生え際に月が似合うよ ....
みな年を取って行く
かわいい女を妊娠させ
若い女をエスコートしても
みな年を取って行く
無邪気な芸術家を気取っていても
また年を取って行く
二十五でやっと大人の仲間入りをし
三十で自分が ....
{引用=
いつか どこかで
すれ違った
小さな縁
糸を手繰り寄せられ、
髪を結い
黴のにおいの
黒い衣を身にまとう
行き場を失った 御霊が
森を 来世を
彷徨って ....
固く胸がふくらみ始め
女の子はあごの下で
つぼみが育っているのを知る
不思議なわたし。
自分の体につぶやいてみる
身体の深奥から
まるで一本の茎が通っているみたいな内部から
外へ外へと ....
曲がり角を曲がらない、繰り返された言葉の、まだきみは、身体をゆらし、はじめない、否定されたなにものかの、深夜に、テレビが途絶えた後のあの、否定されたなにものかが、きみはまだ早い、カーヴを歩く、電信柱 ....
母が
乳房を膨らませる過程で
ほろほろと
無くしたもの
父が
涙を忘れ去る過程で
ほろほろと
無くしたもの
それは僕です。
光と量子とのけし粒が揺らめく
生暖かい感 ....
雨降りのこと
君はきっと、雨降りだと気分良く過ごせる人だ。昼近くなって目を覚ました君は、雨どいから垂れ落ちる雨の音に安堵する。一日をやり過ごすことには常に理由が求められている、君は眠る前に何度 ....
{引用=
生きていくのに必要な
自分の命を数えたら、わからない
人に「1」だと教わっても
まだ、わからない
とても汚くつかってしまう
生きていくのに必要な
人 ....
タクトを振ります
この夜に
高い建物の屋上で
タクトを
粒子達を操り、星々を引き寄せ、声無き声を揃えて、君を一人にしないように
タクトを振ります
タクトを振 ....
硝子の眼が欲しい
濁った眼は棄てたい
凍り付いて、怖じ気づいた膝小僧
全部、全部、棄てたい
全部、全部、硝子製になればいい
隠れ家で填めよう
新しい部位・部品
独りきりのメタモルフォーゼ ....
波打つみどり、
敵味方の風、
追われていく
ひとつの鍵盤に向かって
端から指が流れてくる。
とたんに、
空に生まれた
子供にかえる
見つけたカタバミは、
探していたものと ....
stage.0素‘イマジン-言葉の起源-’
言葉を捨てよう
言葉の意味から覆そう
言葉は終った
言葉は文字
言葉は積木
言葉は鳥
言葉は空
言葉は表形
言葉は水
言葉は塵
....
ビブラートする白
は、流れ落ちて目覚め
あとは黒い眠り
指先は
猫毛のように鍵盤を滑り
響きは深閑に温度をもたらす
私の背にかむさるその暖かい音色は
恍惚に揮え光冠を放ち
空中 ....
感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる
冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して ....
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