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強い力を持つものは
最初は敬われ
次に怖れられ
そして憎しみの餌食になる
ぼくには、ない
その欠片すら、ない
それが不幸なのか
幸福なのかも分からない
あなたにはあるだろうか
なにかに殉じるものが
あなたにはあるだろうか
あなたは眼の前で
ひとがひとに殺される所を視たことがありますか
ぼくは一度だけあります
そこはサイゴンの中央広場でした
それは公開処刑でした
若い女性で南軍からベトコンのスパイとして
....
選べと問い詰められたとき
できれば“Oui”を選ぶ人間でありたい
もしかしたらだけれど
ほんとうにもしかしたらだけれど
ひとはひとを殺したいという
本能を持っているのかもしれない
でもこれももしかしたらだけれど
ほんとうにもしかしたらだけれど
ひとは ....
赤十字の理念は紛争や戦争の前線に於いても
独立と中立の姿勢を貫き助けを求める人を
平等に支援することだとされる
それは敵味方に別け隔たることはなく
傷ついた兵士も助けることだとも言う
....
「いってきます」とあなたが私に告げてから
もうどのくらいの水が橋の下を流れたのでしょう
おんなの直感でしょうか
もうあなたは私の元へは帰らないと
私はそう想ってあなたを見送りました
....
やさしくもなく平和でもない
あなたの周囲や眼にするもの
耳にするものがそうであるだけに過ぎない
僅かな痛みすら止めて貰えないひとびとが
何十億人もいることをあなたがただ知らないだけだ
比 ....
透明人間の唯一の欠点は
自分の姿が見えないため
歩行者が自分を避けてくれないこと
そのため透明人間は繁華街や
人混みなどでひとにぶつかる
でもぶつかったひとは何にと想う
そう だれ ....
いま項垂れているきみ
少しだけ顔をあげてみないか
いま立ちすくむきみ
少しだけ踏みだしてみないか
世の中は確かに酷い
世の中はとても苦い
でもね
ぼくもきみと同じだった
だ ....
もう何処まで来てしまったんだろう
振り返ればもう出発点は視えはしない
視界に映るのは遠い後悔か 懐かしい悲しみか
幻だったかのように過ぎ去った愛するひととの日々
振り返れば道は一本だけ
....
ふと泣きたくなるときがあるんだ
べつになにかに屈服した訣ではなく
べつになにかに敗北した訣ではなく
べつに淋しさを憶えた訣すらでなく
ふと泣きたくなることがあるんだ
ほんとうに動 ....
ぼくの時は老いてしまった
ぼくの時は錆ついてしまった
ぼくの時は過去になってしまった
ぼくの時は昔話になってしまった
ぼくの時はもうそれを知ってしまった
ぼくの時は近 ....
歩け!走れ!動け!
ひとは別にペンを持たなくても
そのひとだけの生は小説である
ひとは別に筆を持たなくても
そのひとだけの生は絵画である
それは確かに歳月の流れのなかで
忘れられてゆくものかも知れないけ ....
ある用事があって久しぶりに
母校の大学の図書館を訪れた帰り坂
どこかから何かを燻らしている様な
芳しいとも苦っぽいとも想える
懐かしいような想い出したくない様な
薫りが否応もなくぼく ....
10代
ぼくはとても淋しかった
20代
ぼくは燃え上がっていた
30代
ぼくは舞い上がっていた
40代
ぼくは打ち拉がれていた
50代
ぼくはなにもかも失った
60代
ぼくに ....
きみは暫々それは知ってると言う
きみは暫々これは知ってると言う
きみが博識だということを
ぼくは否定する気はない
でもきみが饒舌に語る話を聞いていると
何か絵画のない額縁だけを聞いて ....
ある日からぼくは命が呟くのを
耳ではなく心で直接聴ける様になった
命は言う ぼくが挫けるときに
誰だっても転けも挫けもするが
まだまだ俺もお前も大丈夫だからなと
命は言う ぼくが愚か ....
ある日ふっと気づいた
言わなくなった言葉がある
忘れてしまった言葉がある
『おはよう』
『いってきます』
『ただいま』
『いただきます』
『ごちそうさま』
『おやすみなさい』
....
Mr.Don Henlyは《THE END OF INNOCENCE》の楽曲で
『ぼくらはお伽話に毒され続けて来た』と歌ったけれど
でもいまぼくらは自分のこども達に
語ったやれるお伽話はある ....
詩って編もうとして
編めるもんじゃ焼きじゃないですよね
或る時 或る場所で
何かを見たり
ぼんやりとしている時に
或る言葉が躓く様に突然浮かんでくる
その時に
ずっと眠っていた自 ....
ある番組で繁華街の
酔っぱらいにインタビューを
すると云うコーナーがあった
あるほろ酔いのサラリーマンが
インタビューを受け
こう答えていた
『オレ、元気やろ、元気やろ』
イン ....
とうとうきみは声を出してくれなくなったね
ぼくが死ぬまで一緒に声を聴かせてくれるかと
想っていたけれどやはり来る日は来るんだね
きみはきみの生んだ会社の
50周年を記念して誕生したものだっ ....
花よ
祈れ
花よ
癒せ
花よ
鎮めよ
花よ
救え
魂に
手向けられた
花よ
悲しみを
汝等が背負え
手向けられた
花よ
生き残ったものの
....
夜の銀座や北新地で
暫々贈られるバーキンと
呼ばれるエルメスのバッグ
デパートの質流れ販売で
眼の色を変えて
群がる浅ましい形相の女たち
でもその誕生の経緯を
知っている男も女も ....
きみは官能を嫌う
ぼくは官能を好む
きみは自叙伝を読む
ぼくは自叙伝を厭う
きみは武術を好む
ぼくは球技を好む
きみは楽観主義
ぼくは悲観主義
きみは太陽の下
ぼくは ....
なぜあなたは顔を少しだけ見せて
ほかの所へ行ってしまうのですか
諭吉先生は僕を嫌ってるのですか
聖徳太子はそうじゃなかったのに
僕に寄り添いつづけてくれたのに
聖徳太子は僕を愛してくれた ....
ひとには
信じようと
信じまいと
神に祈るしか
ないときがある
愛するものを失うことと
愛するものを亡くすことには
天と地の開きが在る
それは失ったとしても
その生はこの地上に在るが
それを亡くしてしまうことは
その生が無であることを
思い知らさ ....
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