少年の反駁
指の関節に力みが掛かる
苛々するとお腹が痛くなる
文句を垂れるより
先に舌が渇いてしまう
きっと僕の心は
ぶすぶすと焦げたニオイがする

 直立の犬
定義に拘る人がいる ....
ボコボコにしてくださいよ
ぼく地球の痛みわかりたいんです
どうかおねがいです
もう明日歩けないくらいのちょうどいい感じにボコボコにしてください
あとぼくもう罪でいっぱいなんです
あなたが殴っ ....
彼女がたとえ男だったとしても

ゾウだったとしても

ぼくは彼女の存在を愛しています

今朝そう告白して

そういうことだったんだと

はじめて楽になれたような気がしました

 ....
また泣くのか
また泣くのかと
母が問う

今日こそは泣くまいと
幼い私は唇を噛む
妹が隣で笑っている

痩せた身体には
いくつもの痣
それというのは母が
私のことを嫌いだった ....
何も無い誰もいない音も光りも

白い道がただ続いているだけ

何時からこの世界にいるのだろう

遠い昔のような気もするし


君の声が聴こえなくなって幾度か宇宙は生まれ変わったから
 ....
深呼吸する緑の葉っぱたちは囁く

ほとばしる生命、咀嚼しろ

艶やかに見惚れる果実たちは囁く

弾ける生命、咀嚼しろ

八百屋の親父は最後の仕上げに

ふうっと息を吹きかけ

 ....
ひらひらと
群青の夜空に舞う
暗闇の蝶――蛾。
揺蕩うように 揺らめくように
滲んだ月に 白い影が踊る

「今宵の闇は深く
 あなたの声も聴こえない」

女は
蒼い月影のランプで手 ....
部屋の床が見えない
積まれた本の上に領収書の束が乗っている
捨てられそうなものは目を瞑って放りなげよう
無くなった物を想いだすことはないから

記念品や
参加賞も捨てる
ぼくは有名になら ....
残業に疲れて、
地下鉄のつり革につかまって、
エスカレーターの列に並び、
街灯の下を、
とぼとぼと歩いて帰って行くと、
窓から、
あの子が、赤ちゃんを抱いて、
「パパ!」と手を振る。
 ....
「疲れる薬だと言うと変に思うかもしれませんが、これは正真正銘の医薬品です」
 あのとき、高木はそう言った。
「疲労薬」と印刷された赤唐紙が、半透明の茶色い瓶に貼り付けられている。私は彼の説明を聞き ....
なんという晴れやかさ

観葉植物の鉢は昨日まで湿っていたのに

靴跡がすでに乾いているのは
なんだか気持ちわるい

しきりに動きながら立ち止まる女性
俯いた姿勢に脚もとの ....
夢とか希望って軽々しく口にしてはいけないよね

これでも恋わずらいなんだろうか
鬱陶しさに心は暗く沈んでしまっているけど

なんだか身体は心模様とはうらはらに
不思議と元気みなぎっている
 ....
そうやこれは戦争なんや

戦争やから死んだって誰も責めへん

殺したって誰も責めへん


寂しい言うたらあかんのやろ

会いたい言うたらあかんのやろ

鬼軍曹に殴られそうやもんな ....
青灰色の夕暮れに

鳥の群れ

黒い影が

青灰色の夕暮れに


ぼくはあなたとはぐれていた

ガキの頃からのそれは宿命だ


青灰色の夕暮れに

鳥の群れ

黒い ....
  あなたの
  マグカップの
  つるりとした空洞の
  最深部で
  パロールも
  道徳も
  大恋愛も
  なにもかも終わっていた
  冬になると
  唇が乾くだろう ....
それは、
自らするものではなく、
自ずと気がつくものであり、
自然と落ちるものである。
そう聞いたことがあった。

ときめきという言葉は、
例えば生きたものを触ったときとか。
新しい玩 ....
嫁とまだ同棲していない頃、漏れはすごく苛々していた。就業時間中にソープやイメクラ、競馬場等に訪れ、仕事終わりにパチンコをして家に帰ると一人、薄暗い壁の隣の部屋の音楽の音量がでかく憎んでいた。1 .... 私は流木と一緒にこの浜辺へ打ち上げられ
長い時間を過ごしている

朝靄の中
私は何かがはじまる予感に抑えきれずに
流れてくる貝殻や硝子、缶からの破片を集めて
できるだけ体中に埋めつくしてい ....
世界中で 苦しんでいる人のために
詩を書こう そうしよう
橙色のポケットに手を突っ込んで
またたく間に一連の詩を引きだす

こいつはいい詩だ、と師匠は言った
いやなんの、と僕は謙遜した
 ....
泣きわめいた後の頭痛

何年ぶりだろうか



がんがんする



泣いたのか。




そっか。悲しいんだ

つらいんだ。苦しいんだ。



 ....
息子たちは

ついに私が身につけられなかったものを

すでに有している

すこし心配しつつ

それを頼もしくも

それを羨ましくも

息子たちを

ゴルフ帰りの渋滞のなかで ....
僕は異物だから
君の悲しみの中で
溶けてあげられない

僕は異物だから
君の喜びの中で
泡立ってあげられない

僕は異物だけど
とても脆いから
もたれた君の肩を支え切れない
 ....
なんでそんな言い方すんねん
そんな人がいる
何食べたらそうなんねん腹ん中みたろかな
そんな人がいる
かわいそうやな
そんな人がいる

あんたが虫やったら間違いなく殺してるで
そやけどヒ ....
彼女はひとつ年上の少女

まだ早い雪に消えていった

追いかけるのを躊躇う僕はひとつ年下の老夫

もう遅い蝉時雨の中に佇んだままだ
 
【電】
電流が流れるように始まって終わった恋に何も流れず

【町】
君が住む町をひとりで訪れて君に会わずに帰っていった

【奇跡】
奇跡とは二度も三度も起こらない だけど諦めきれない想い ....
僕の右手はいつも深爪で
それはバイトの関係上しようがない事で
いつもクッキーの缶の口に貼られた
シールを剥がすのに苦労したり
痒いところに手を伸ばしても
いまいち、こう、快感がなく
ついつ ....
1980年代の午後は
こんなに明るくなかった気がする

僕は、歯磨きが嫌いな子供で
今は、命がかかるまでは歯医者に行かないと決めた大人
ルールや倫理が
どんなにえらくっても
大人の中 ....
  しんしんと
  雪のように眠っている
  君の
  シャツの
  胸のあたりに光がにじみ



  そこだけが
  かわいた月面になる
  白、
  黄、
  水色 ....
ある日私は死にまして
ふと気付いたら
地面で寝てまして

そうかここは天国かと
回りを見渡すと
そこにはただの日常があって
平日お昼の町並みがあって

寝ていた私を誰も見ていない ....
 


夜来風雨の声がする

木々のざわめき 潮騒か

紺地の夜空に星が棲息

暗灰色の雲の中

大きなくじらが現れて

金に輝く大小の

星をひと飲み たいらげる

 ....
木原東子さんのおすすめリスト(877)
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